【KAC20248】アオの光【800文字】

ほわりと

第1話

「すばるん、外で遊ぼうよ〜」


 家のリビングでPCを操作していると七海が後ろから話しかけてきた。無視だ無視。すぐに飽きるだろうと放置していると七海に肩を揺すられた。


 何度も揺すってくるが無視を貫く。今日は父さんが家に居ないから一日中PCが使える日なのだ。いくら幼馴染の七海に邪魔をされても、今日の俺を止めることはできない。


「あっ、眼鏡してる。画面ばっかり見てるから目が悪くなるんだよ!」


 外に行こうよと、俺の腕を引っ張って七海が外に連れ出そうとする。でも、これは目が悪いからかけているわけではない。眼鏡を外して七海にかけた。


「景色はどう見える?」


「どうって、えーっとえっと。私が賢そうに見えるとか?」


 その言葉が馬鹿っぽく見えるんだよなあ。度が入っていないことを教えると、やっと理解したのか七海は「ほんとだ!」と手をポンと叩いた。


 この眼鏡はブルーライトカットの眼鏡。PC画面を見ていると目が疲れるから昨日買ってみたのだ。さっそく使っているけど、正直なところ効果があるのかはよくわからない。


「目が疲れるなら外で遊ぼうよ〜」


「疲れるからパス。体が疲れるんだよ」


「もうっ。疲れる疲れるって、まるでうちのお父さんみたい」


 たしかに七海みたいな子供がいたら疲れるだろうなあ。七海のお父さんは大変だ。顔に出ていたのか、七海が頬を膨らませて怒った。


「お父さんは仕事で疲れてるのっ! あーあ、すばるんと話していたら疲れちゃったよ」


 七海はそう言い残すと部屋から出ていった。ふう、これでやっと静かにPCが使える。静かになった部屋で画面を見つめながら目頭を押さえた。


 そこで、ようやく眼鏡をしていないことに気づいた。机の上を探しても見つからない。探していると窓の外から声が聞こえてきた。カーテンを開けると、そこにはドヤ顔で眼鏡をクイッと上げている七海の姿があった。


「七海、その眼鏡を返せっ!」


「返して欲しかったらっ、ここまでおいで〜っ!」

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