マカイジャーファイト3

ムネミツ

マカイジャーファイト3

 「お前達も眼鏡をかけるのだ~~~っ!」


 風が吹きすさぶ昼間の採石場に響く、中年男性っぽい叫び声。


 声の主は、巨大な瓶底眼鏡の頭部の下は全身黒タイツの怪人。


 その名は、クライム悪魔グラス。


 対するヒーローチームは、黒山羊を模した鎧兜纏った悪魔の騎士デーモンナイト。


 彼が率いる五人の戦隊ヒーロー、魔界勇者隊マカイジャー。


 「おのれ忌まわしい混血王子とマカイジャー、眼鏡っ子ビームを受けて見よ!」


 眼鏡の悪魔グラスが、頭部の眼鏡からビームを放つ。


 「ナイト、危ない!」

 「ちょ、レッド!」


 グラスが奴が放ったビームから、デーモンナイトをマカイレッドが庇って浴びる。


 「……え、変身が解けちゃった!」

 「おお、勇子ちゃんが眼鏡美少女に♪ って、俺の恋人に何しやがる!」


 変身が解け、ピンクのパーカーを着た眼鏡美少女になったマカイレッドこと赤星勇子に一瞬見惚れたデーモンナイト。


 だが、デーモンナイトは気を取り直して奮起する。


 惑わされるな、敵は自分の恋人を攻撃したのだ。


 「街の人達だけでなく、勇子ちゃんまで強制的に眼鏡っ子にするとは許せん!」


 デーモンナイトは怒りの黒い炎を全身から燃やす。


 「何を言う、眼鏡っ子こそ最高ではないか!」

 「貴様の性的嗜好を押し付けるな! デーモンパンチ!」


 敵の主義主張など知らぬと、怒りに燃えた悪魔の騎士は突進する。


 「な! 瞬時に近くまで北だと!」


 僅かな一瞬で、デーモンナイトに間合いを詰められたグラス。


 デーモンナイトの怒りの黒き炎が灯る左の拳が唸り、グラスの頭部を粉砕する。


 大爆発を起こして消滅した敵、デーモンナイト達ヒーローの勝利であった。


 「……よし、これで勇子ちゃんも元に戻ってねえよ!」


 敵を倒せば、呪いの類は消えるはずだと思っていたデーモンナイト。


 だが、そうはならなかった。


 「嘘っ! この眼鏡、何度外しても生えてくる!」


 勇子が眼鏡を外してみる、だが彼女の顔には新たな眼鏡が装着されていた。


 「まさか、今倒したのは偽者なのか?」


 デーモンナイトは焦る、確かに倒した感触はあった。


 「ギャッはッは♪ 馬鹿め、我輩は知的な眼鏡美少女以外には殺せないのだ♪」


 虚空から、姿を現すグラス。


 「ふ~ん、なら私の勝ちね♪ 変身♪」


 勇子が立ち上がり変身する。


 その姿は白ブラウスに黒いスカート、髪形はロングを頭の後ろで団子に纏めた姿。


 「勇子ちゃん、綺麗だ♪」


 知的な美少女と言う装いの勇子に見惚れるデーモンナイト。


 普段の勇子を知る仲間達は、呆然としていてた。


 「な、馬鹿な! 田舎のヤンキー娘が化けただと!」


 勇子の変身にはグラスも驚いていた。


 つかつかとパンプスを鳴らしてグラスへと近づく勇子。


 その手には、刀身に炎が燃え盛る両手剣が握られていた。


 「ごめんあそばせ♪」


 舞い踊るかのように剣を振るい、グラスを真っ二つに両断して焼き尽くした勇子。


 戦いが終わり、変身を解いた勇子の顔からは眼鏡が消えていた。


 「これにて一件落着、どうだまいったか♪」


 歯を見せてカラカラと豪快に笑う勇子。


 「良かった、いつもの勇子ちゃんに戻った♪」


 デーモンナイトが安堵し、変身を解除する。


 頭に山羊の角を生やした学生服の少年、進太郎の姿に戻ったデーモンナイト。


 「進太郎~っ♪ ど~だった、私の眼鏡かけた姿♪」


 勇子が進太郎に近づいて抱き着く。


 「うん、あの姿も綺麗だったけど俺は普段の湯子ちゃんが一番だよ♪」

 「え~? なにおそれ~~っ♪」


 進太郎とじゃれ合う勇子。


 「まあ、終わり良ければ全て良しですな♪」


 変身を解かないブルーが呟く。


 「まあ、飾らないのがない寄りでやすな」


 イエローもブルーに同意する。


 「私達、二人のイチャイチャを見てただけで終わったのだ」


 グリーンはうなだれた。


 かくして、マカイジャーはいつも通りのテンションで事件を解決したのであった。

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マカイジャーファイト3 ムネミツ @yukinosita

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