飴と鞭 前編 -1-

 中天に輝く陽光をマントのフードで遮りながら、カーシュラードは環状街道をゆっくりと馬で進んでいた。交通の大動脈である街道はそれなりに人通りがあるはずだが、今日は珍しく商隊の影すらない。

 はて、と小首を傾げた視線の先、街道沿いから少し離れた大木の下に旅人らしき者が座っていた。何かを食べている。その瞬間、つられたように腹が鳴った。

 そうか。昼か。朝日と同時に出発して、ずっと移動していた。常歩での移動はあまり体力を使わないので、休憩を取ることも忘れていた。馬に怒られそうだ。きっと怒っているだろう。よく自主的に足を止めなかったものだ。

 最後に通過したキロポストの掲示では、あと少しいけば休憩を取るのに適した広場があったはずだ。そこで休もう。

 カーシュラードが馬の首をなでたときだ。悲鳴が響いた。ちょうど目的地の方向で、反射的に馬の腹を蹴る。なだらかな丘を駆け上がった。平野に点在する小さな森から、黒い影が這い出していた。

 魔獣だ。三体。平均的カーマ人より大きな体躯は手足が長い二足歩行で、頭部からウサギのように長い耳がたなびいている。見たことのない魔獣だ。

 一番小さな一体と交戦しているのは、護衛でもなんでもなかった。商人だろう。あとの二体が荷馬車に飛びかかろうとしている。

 広場の直前で馬を急停止させ、カーシュラードはその反動で地面に降り立った。駆け込みながら接近し、愛刀を抜く。すれ違いざまに首を刈った。魔獣の種類がわからなくても、首を落とせば大抵は殺せる。二体は血しぶきもなく倒れた。

 最後の一体は商人らしい男にうなり声をあげて、後ろ足で地面を掻いていた。男は恐怖に腰が引けていながら、それでも剣の切っ先を魔獣に向けていた。カーシュラードの接近にも気付けないほど緊張しているのか、魔獣が肩を怒らせただけでぎゅっと瞼を閉じてしまった。目をつむって剣を振り上げても、怪我をするだけだ。

「そのまま」

 動くなと命令を投げ、異変に気付いて振り向いた魔獣の首を落とした。切り口から黒い煤のようなものが立ち上るが、それもすぐに消えてしまう。残滓を払うように血振りをして、鞘に黒刀を納めた。

 あまりにも呆気なく、一方的な討伐だった。獲物に気を取られていたところを奇襲したようなものだから、労力はまったくかかっていない。呼吸が乱れることすらなかった。

 カーシュラードは黒羆バラム師団の紋章がわかるようにマントを片方だけ肩に払った。混乱した相手に自己紹介をするより効果的だ。

「目を開けていいですよ」

「へ? あ、え……、なに、誰」

「深呼吸をして、ゆっくり剣を下ろしてください」

「あ、ああ……、軍人さんか」

 商人は両目を大きく開いてカーシュラードを見上げた。くずおれるように地面に座って剣を置く。歳はそう離れていなさそうな若い男だ。一般的だが、それなりにしっかり仕立てられた清潔な服を着ている。

「ありがとう。助かったよ」

「いえ。怪我はありませんか」

「あああ! 婆さん!」

 飛び上がった男は慌てて荷馬車の御者台に駆け上り、幌の中を覗きこんだ。カーシュラードが乗ってきた軍馬もその近くで草を食んでいた。呼ばずともきちんと待っているあたり、しっかり訓練の行き届いた馬だ。

「大丈夫か? 腰やってないか? 立てそうか?」

「あたしのことより商品の心配をしな!」

 威勢のいいしゃがれ声が聞こえてきた。どうやら怪我はなさそうだ。あちらのことは任せよう。

 カーシュラードは魔獣の死体に近づいた。体格は人間に近いが、足の形が四足歩行の動物のそれに近い。前肢の爪は長く湾曲している。顔に相当する部分は分類が難しいが、やはり長く伸びた耳のせいでウサギの印象が近い。念のため、一番大きな個体の耳を片方切り落として証拠として持ち帰ることにした。

 魔獣には二種類ある。野生動物が濃すぎる魔を取り込んで転化するものと、魔そのものから生まれたものだ。後者はこの世界の生物ではなく魔族に近い。これはどちらの種だろうか。

「角ウサギの魔獣かと思ったけど、こんなにデカくないし人みたいに動かないしなぁ。新種か何かですか?」

 すっかり緊張がとけたらしい男が、馬車から戻って話しかけてきた。

「僕は初めて見ました。この手の魔獣はよく出現するんですか?」

「いやいや、こっちも初めてですよ。ここらはウサギとかの小さい野生動物の魔獣がほとんどで、俺くらいの腕でも追っ払えるんです。だから、こんなやつら見たこともなくて、さすがに死ぬかと思いました」

「普段は凶暴な魔獣はあまり出ないんですね」

「出ないねぇ。魔泉も小さいし、この辺は特に安全な地域です。ああでも、そういえば、隣町の牧場の誰かが魔獣にやられたって聞いたなぁ。だからあなたが警邏に出てるんですか?」

 ふむ、とカーシュラードは唸る。耳どころじゃなくて死体をまるごと持っていったほうがよさそうだ。

「ものは相談なのですが、荷台に空きはありませんか」

「え」

「魔獣の死体を一体分運ぶことに協力していただけると、大変助かるのですが」

「いや、それは、どうかなぁ……。こっちも商売の途中だし。載せてるの食品だから、死体と一緒ってのはなぁ」

 食品と聞いて空腹だったことを思い出した。腹が鳴る。男が目を見張った。腹部を二度見される。さすがに恥ずかしい。

「……すみません」

 居たたまれない気持ちで口にすると、男が大口を開いて笑った。

「軍人さんは肝が据わってるんだなぁ! なあ、あんた、よかったらウチのハムを食ってってくれよ。すぐ準備してやるから」

「ハム」

 とても魅力的な単語に、自然と唾液が湧いた。積み荷はハムなのか。それは魔獣の死体と一緒に運びたいとは思えない。

「商品では? 余剰分があるなら買いますけど」

「サンプル品みたいなもんだよ。普通だったらふっかけて売りつけるけど、命の恩人相手にそんなことしないさ! 昼飯の残りだし。まあ、ちょっと待ってな」

 男はカーシュラードの肩を叩いて、また御者台の方へと戻っていった。死体を持ち帰る件が有耶無耶になってしまったが、交渉は食べ終わってからでもいいだろう。

 とりあえず魔獣の死体を放置しておくわけにもいかないので、処分する分は森の近くへ引きずって行く。魔術を織り上げて灰も残さず燃やしてしまった。

 魔獣は焼却処分をする場合、ほんの一瞬だけ硫黄に似た臭いを放つ。鼻につく異臭はしかし、ハムが焼ける美味そうな匂いに塗り替えられた。大変期待できる匂いだ。

 もしかしてあの魔獣もこの匂いに釣られて出てきたのだろうか。肉食の魔獣は厄介だ。肉なら種類を選ばない。

 刀の柄をなでながら思案していると、男の声で呼びかけられた。若い商人が皿を片手に手を振っている。カーシュラードが急いで荷馬車の近くへ戻ると、御者台に小柄な女性が座っていた。淡い紫色のスカーフを頭に巻いた老婆は、皺を刻んでも鋭く光った黒い瞳でこちらを見つめていた。

「助けてくれたのはあんたかい。ありがとうね」

「お怪我はありませんか?」

「あたしも商品も大丈夫さ。ところであんた、あの魔獣をどこへ運びたいんだい?」

「この先の黒羆バラム師団の駐屯地へ」

「それなら、行き先は同じだ。載せてやってもいい。商品の価値はあんたが担保できるなら、だが」

「できますよ。運搬料を上乗せするよう命令も下せる」

 きっぱりと言い放つと、老婆は何度かうなずいて、男へと視線を向けた。婆ちゃんの言った通りだろう、と鼻息も荒く男をつついている。

 男はどこか探るような瞳でカーシュラードを見上げていた。皿の上の分厚いハムへ視線が流れそうになるところを気合いで我慢し、カーシュラードは無言で事情説明を求めた。

「……婆ちゃんが、駐屯地の街道警備兵だったら単独行動はしないはずだって。訳ありか、お偉いさんのどっちかじゃないか、なんて言うもんだから。ほら、あんた、ずっとフードのままだし」

「なるほど。当たらずも遠からずですが、これは失敬。素性を隠していたというわけではありません」

 日除けのためにフードを被っていただけで、顔を隠していたわけではない。だが、勘繰られる理由にはなるだろう。

 カーシュラードはフードを払いのけた。鮮やかな赤毛がこぼれ落ちる。

「カーシュラード・クセルクスと申します。所属は黒羆バラム師団第十五連隊、特殊剣撃部隊。普段は王都におります」

「クセルクス? 聞いたことあるな。……って、ああ、そうだ! 王族じゃないか!」

「おやまあ、なんて色男だい」

「婆ちゃん!? いや、確かにイケメンだけども、そうじゃなくて、王族に昼飯の残りはまずいでしょ!」

「あたしが作ったもんに、ふざけたこと言ってんじゃないよ。王様にだって出せるくらい美味いはずさ!」

「今は一介の軍人ですので、家名についてはお気になさらず。ところで、大変な空腹をかかえておりまして、冷める前にいただいても?」

 カーシュラードの嘆願に、商人のふたりは顔を見合わせて笑った。



 神祖『紅蓮の魔神インフェルニア』が復活して約一年。カーシュラードはカーマ国内の黒羆バラム師団駐屯地を視察する旅に出ていた。

 カーマ王国の国防を司る黒羆師団は、先の事件で師団長を亡くし、いまだに組織としては不安定な状況にあった。カルマヴィア家の王族として肉体を得た魔神を、あろうことか処刑しかけた事件だ。国家を揺るがす大事件と付随するように発生した隣国との小競り合いはなんとか平定されたが、上層部のポストがなかなか決まらずにいる。

 建国の祖など神話のできごとだと嘲っていた者たちは、怖ろしくて師団長になど立候補できない。かといって国王に肩入れしてしまうようでは、先の事件の二の舞だ。派閥同士が牽制し、けれど、誰もが責任を取ることを畏れている。国防軍の師団長が不在では国力低下をひけらかすようなものなので、現在は剣聖がその地位を兼任していた。

「腐った膿を出し切るにはちょうどいい」

 そう言い切ったのは、魔梟ストラ師団の某戦魔導師だ。為政者でもある彼は、ある日突然カーシュラードの元を訪れた。そして彼は、こうも言った。

「五年やる。そのあいだに、黒羆バラムを掌握しろ。地方末端まで顔を売れ。金剛は飾りじゃねぇって、示してこい」

 あの食えない魔導師は、魔導の大家という王族の地位と権力を惜しみなく発揮し、王国の青写真を描いていた。彼の計画に組み込まれるのは業腹だが、理解できる部分もある。

 今のカーマは、神祖『紅蓮の魔神インフェルニア』に由来する様々な事柄がなおざりになっていた。

 その身に流れる血と魔を誇らず、服従せず、ただの人間に成り下がっている。魔導を扱う者や異能者が生まれにくくなっていたのも要因だろう。それは魔神その人が国土の魔力を吸い上げていたからではあるが、反面、人々は魔を畏れなくなってしまった。魂が震えるほどの魔を知らずにいれば、本能も薄れてしまうのかもしれない。

 魔導師の数は極端に減っているが、剣位持ちの数が減ることがなかったのだけは僥倖だろう。だが、圧倒的な力を前に平伏すこともなくなっていた。魔に平伏す前提が崩されかけている現状を、カーシュラードは憂いていた。

 何より、カーシュラード本人が最初に、復活した神祖『紅蓮の魔神インフェルニア』に膝を折ったのだ。ひと目見て、魂が歓喜するほどの魔の顕現を感じて、頭を垂れずにいられなかった。これこそが、カーマの民のあるべき姿だろうと、己の出自を理解した。

 市井の民が魔王に拝することが叶わなくとも、力ある者を通してその偉大さを感じてほしかった。我らカーマの民は、魔の系譜だ。ただの人間ではないのだ。己に流れる血のなんたるかを、誇りを、思い出してほしかった。

 そのための一歩として、己の持つ力を誇示するのは目的への最短かもしれない。

 魔導国家と謳われるカーマ王国の中ですら異能とも賞賛できる能力を持つ者は、古の武具匠によって己に相応しい魔器を与えられる。魔器を与えられた者は最高位を『金剛』として、『紅玉』『金緑』『黄玉』『紅榴』と続く剣位魔位を授けられた。

 カーシュラードは金剛位だ。二世代にひとり出るかどうかという剣の金剛位は、この波乱の時代において三人に与えられていた。中でもカーシュラードは別格だった。戦争になればおそらく、一個人にもかかわらず破壊兵器として通用するほどの強さに到達している。黒羆バラム師団の師団長に推すのならば一番の適任だった。

 だが、二十四歳かそこらの青年に国防を任せるのは、各方面から難色を示されることは想像に難くない。何より、黒羆師団の内部からも反発を招くだろう。魔と力による上下関係を叩き込まれた士官より、一般兵の数が大半なのだから。

 黒羆師団は戦争時には最前線へ向かうが、普段は魔獣討伐などを主任務としていた。通常の一般兵はその地方に生まれた者がほとんどだ。王族御用達とも揶揄される士官学校を出た者に対する反感が根強い場所もある。

 それは、魔を知らずに生きているからだが、特権にかかわる全てに反発したくなる気持ちも、多少なりとも理解できた。地位だけ高く実戦経験もない実力もわからない相手に、そう簡単に服従したくない。そういう部分だけは、魔族的だと言えなくもない。

 だが、ならば簡単だ。圧倒的な魔と力でもって、ねじ伏せてやればいい。それを、カーシュラードは行おうとしている。

 カーマ国内に点在する主要な基地や駐屯地へ赴き、実際に手合わせをして服従させる。座学の講座を開くより、手っ取り早くて簡単だ。

 大陸を走る魔脈を利用した転送門を使えばすぐに到着できるけれど、カーシュラードは地上を馬で移動することにしていた。これまでほとんど旅行をすることもなかったので、自分の足で国内を見て、地域性や市民の感覚を肌で感じておきたかった。

 個人的な理由に副官を付き合わせる気はないので、移動は単独だ。兵器相当の自分には護衛は必要ない。身分を示す騎士章があれば充分だ。身軽な方がいいから馬車も断っていた。

 馬は常歩なので速度は遅いが、それでも陽のあるあいだはずっと移動に費やしていた。旅籠があれば泊まるけれど、野宿であってもまったく構わなかった。

 王族として生まれているカーシュラードだが、こういう部分は父に似たのかもしれないと複雑な気持ちになる。クセルクス家当主である実父は、まだ学生の頃に出奔して世界を旅して回ったらしい。

 大陸中央にあるトレマルク基地での二か月近い任を終え、くだんの魔獣から商人を助けたのは、付属の駐屯地へ向かって三日目のことだった。

 最近食べた中では破格の旨さだったハムを堪能し、ついでに護衛の任も請け負って、到着したのは夕飯時も過ぎたあとだ。副官のサムハインは転送門を利用してすでに到着していたので、彼に後を任せ、カーシュラードはまず風呂に入った。

 地位があれば水回りの完備された個室を与えられる。不特定多数に裸を見られたくはないので、それだけは感謝していた。

 数日分の汚れを洗い流して腰にタオルを巻いたままバスルームを出ると、己の副官が夜食の用意をしながら待っていた。一瞬だけ、その手が止まる。

 半裸状態でも動じていないのは助かるが、やはり慣れている彼でも、カーシュラードの両腕の霊印シジルを視界に入れるとわずかに身体を強張らせる。ほとんど無意識の畏怖なのだと聞いたことがあった。さっさと着替えてしまおう。

「正式な着任は明日付けです。三週間前後の日程を確保してありますが、判断はお任せします。朝食は司令官から招待されておりまして、主立った士官が同席するそうなので、受諾してあります。その後、駐屯地内の主要施設を視察し、そのまま演習場へ向かう予定です。全ての一般兵を招集しました」

「数は?」

「三四六人」

「少ないな……」

「ここは国内でも一番小さな駐屯地ですからね。それに、予備役は招集していません。周辺地域の住民数は一万五千前後なので、非戦時下でのこの兵の数は多い方かと思います。ですが、その三百なにがしが全員くるかは微妙なところです。私は半分来ない方に賭けます」

「腕が鳴りますね。招集命令違反者は一か月の給料剥奪にすると通達を出してください」

「了解しました」

 カーシュラードは一年前の初陣の後、部隊長から連隊長へと昇進していた。駐屯地の司令官より地位は上になる。

 ただ、連隊長とはいっても、率いている兵の数は極端に少ない。それもそのはずで、第十五連隊にはカーシュラードの部隊しか存在していないという、何もかもが特殊な位置づけにあった。だが、部下の数が少なくとも地位は地位だ。使えるものはなんだって使うつもりだった。

「王都に変わりはありませんか?」

「平和なものです。そういえば、士官学校高等部の特別学習で護衛士を募っていましたね。王都近郊の魔泉見学です。余剰兵がいないので、赤狼に回すと思いますが」

「そんな行事、ありましたっけ?」

「私の時代にはありませんでしたけど、ここ十年くらいはあったかと。この時期なので、カーシュラード様がおサボりになっていた頃では」

「ああ……、そう、ですね」

 サムハインが笑いも隠さず告げるので、カーシュラードは渋面になった。

 副官のクウィンデル・サムハインとの付き合いは長い。彼は戦闘面ではなく、事務処理の方面を一手に引き受けてくれている得がたい部下だ。特殊部隊設立の頃こそ同じ地位にいたけれど、部隊長を引き継いでからは右腕としてずっと世話をしてくれていた。十五は年上の副官には、詳細な経歴から、いっそ明日の下着の色まで把握されている。頭が上がらない。

 そのサムハインは得意のコーヒーを煎れ、他に指示がないかを問うた。魔獣の件だけ念押しをして、あとは問題ないと伝えて退出させる。カーシュラードは夜食を平らげた。あとはもう、装備の手入れを終わらせ、一服しながらいくつかの書類を確認するだけだ。

 王都からの知らせや個人的な手紙はなかった。事前調査書によると、この駐屯地はあまり統率が取れておらず、剣位持ちにも反抗的らしい。

 事前に、近隣が地元だという紅榴位の槍使いを派遣していたのだが、彼女は着任三日で馬鹿馬鹿しいからと見切りをつけて別の基地へ移動してしまっていた。ただの士官であれば許されないが、剣位持ちであればこういう我が儘も通用してしまう。

 お鉢が回ってきたことになるのだが、カーシュラードはむしろ明日が楽しみだった。魔も知らずにいきがっているのなら、矯正してやるのが筋だ。現実というものを、嫌でも知ってもらわねばならない。

 カーシュラードはほくそ笑んだ。そして、憂いなく数日ぶりのベッドを堪能した。

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