第60話 戦いの結末

「2度にわたる不意ふい打ちとは汚い真似まねをしてくれる……亜人あじんなどに味方する劣等種れっとうしゅ卑怯者ひきょうものが!」


「ほっほっほ、甘ちゃんじゃのう。生きるか死ぬかの戦いに汚いも何もあるものか」

「っていうかあたしら騎士じゃなくて冒険者だし。そんなこと言われてもこまるっていうか」


「正々堂々やって死んじゃったら意味ないですよね」


「ブフォッwww 汚いwww 卑怯者www カイトさん、樹族じゅぞくの人たちをだまして侵略しんりゃく戦争仕掛しかけた卑怯者が何か言ってますよwww やっべwww 笑いすぎて腹痛いwww きそうwww っていうか吐くヴォロロロロロロゲエエエェェェェェ!」


「ああいうやからは他人のことは言うけど自分のことはたなに上げるタイプだからな。他人はダメだけど自分はやっていいとかいうクソみたいな思考回路しこうかいろだから話通じねーよ。同じ人間だと思って会話しちゃダメだ。サルかチンパンジーと思って会話――って思ったけど、サルとチンパンジーに失礼だな。ゴキブリか道端みちばたのゲロ、もしくは野グソと思って会話したほうが良い」


「はっはっは、カイトよ。それでも話は通じぬではないか(笑)」

「あ、本当だ(笑)。さすがロリマス。長い間ロリやってないな。はっはっは」


「こ、このゴミ以下のドブネズミどもがあああぁぁぁぁっ!」


 俺達に散々あおられたからか、それとも痛いところを指摘してきされたのかわからないが、司令官は激怒げきどした。


 この程度ていどのことで怒り出すとは煽り耐性たいせい低いな。

 こんなのが司令官の立場にいるとか、ローソニア帝国は思ったより人材不足なのかな?


「貴様ら残らず殺してやる……一匹残らずこの場でなぁ!」

「……カイト」

「ああ、来るぞ!」


 そんな奴が乗っているとはいえ、カリバーンとかいうよろいの力は本物だ。

 2度の不意打ちでダメージを与えてはいるが決定打にはいたっていない。


 油断はできない。

 俺たちは武器をかまえ、戦いにそなえた。


楽園アヴァロンシステム出力全開! 聖剣騎士団第4の剣、ラウリィ=フォン=シュトロハイム、まいる!」


 司令官――ラウリィが名乗りを上げると、カリバーンの背後バックスラスターが青白い炎を吹き上げた。

 炎はつばさのように噴射ふんしゃし、一瞬で俺たちとの距離きょりめた。


「食らうがいい! 光の聖槍ブリューナク!」


 巨大な槍が光りかがやき、横ぎに振るわれる。

 俺たちはけることに成功したけど、それまでいた場所がひどい。


 えぐられた地面は溶岩ようがんのようにグツグツとえたぎっている。

 食らったら一発でアウトだな……。


「近づいたら危険だ。距離をたもって戦うぞ」

「了解じゃ! 雷撃球サンダーブリッツ!」

「スーちゃんお願い! 酸性雨アシッドレイン!」


 アミカとクレアの遠距離コンボでカリバーンを貫通かんつうしてダメージが入る。

 れた身体に雷はキツいだろう?


「くっ……やってくれたなネズミ。そこを動くな!」


 ラウリィがえるなり胸部きょうぶ装甲そうこうが開く。

 瞬間――光の弾丸だんがんが2人に向けて放たれた。


「聖弾タスラムでちりと消えろ!」

「そんなことは……」

「僕たちがさせません!」


 俺とピートが攻撃の前に立ち武器を構える。


 俺はアイアンスコーピオンのフライパンを。

 ピートは吸命ドレインライフまとった両の拳を。


「元野球少年めるなああぁぁぁぁっ!」


 俺はアミカの前に立ち、聖弾タスラムに向けて思いっきりフライパンを振り抜いた。


 真芯ましんをしっかりらえられたようで、カキィーンという子気味こぎみ良い音とともにタスラムは空の彼方かなたへとホームラン。


 そしてぜた。


「こんなもの軌道きどうをそらせ……ばああぁぁぁっ!?」


 ピートのほうもかなり吹っ飛ばされはしたが、しっかりと回し受けで軌道をそらすことに成功したようだ。

 攻撃失敗を認識にんしきしたラウリィの頭にさらに血が上った。


 そのすきを見のがさず、ミーナが何かを投げたようだ。

 あれは……ナイフか?


 ミーナの投げたナイフはタスラムの砲塔ほうとう部分へと吸い込まれていく。

 しかし、頭に血が上ったラウリィはそれに気づかない。


「この……ゴミども! 大人しく焼却しょうきゃくされろ! タスラム!」


 ――ドゴオオオォォオォォッ!


 カリバーンの胸部が爆発した。

 吹っ飛びはしなかったがラウリィがひざをつく。


「な、何だ!? 何故なぜタスラムが爆発した……?」

「砲塔に異物いぶつが入っていたらそりゃ爆発するわよ。お貴族様は学校でそういうのならわないの?」


「貴様の仕業しわざだったか……メスネズミ!」


 ラウリィは忌々いまいましげにミーナをにらむ。


「タスラムを壊したむくいは受けてもらう! 光の聖槍ブリューナク!」

「またそれ? あたしに当たると思ってるの?」

「ああ、思っている」


 次の瞬間、脚部きゃくぶ関節かんせつが開いて何かが出る。

 小型の円盤えんばん状のそれはミーナの四方をかこむと光り輝いた。


「嘘!? 動けない!?」


 どうやら不思議な力場りきばが働き動けないらしい。

 まずい! あれじゃ槍をかわせない!


時弾じだんステイシス――カリバーンの奥の手だ。貴様の座標ざひょうを固定した。動けまい」


 ラウリィが槍を振りかぶる。


「今から死ぬ気分はどうだ? こわかろう? まあ、泣きさけんだところで止めはしないが」

「うっ……くっ……」


「ミーナ! やめろクソ野郎! ミーナを放せ!」

「聞けんなぁ! まずは一人!」


 巨大な槍が光を放ち、振り下ろされた。


「させぬ! 超重力ギガ・グラビトン!」

「おぉっ!?」


 ミーナのすぐ横で重力場が発生した。

 光の槍はミーナではなく、重力場に吸い込まれて地面を抉った。


「く……このガキィ! 許さん!」


 カリバーンのスラスターが開いた。

 高速移動でアミカとの距離がゼロになる。


 ――ドゴォッ!

 ――ボキボキィッ!


「ガハッ……」

「ガキはガキらしく眠るがいい! もっとも、もう目は覚めぬかもなあ? ハーッハッハッハ………………は?」


 ラウリィが高笑いを突然止めて俺を見た。

 自分じゃわからないけど、一瞬で声を失うほどの恐ろしい表情をしていたんだろうと思う。


「……だぞ……めぇ」

「は?」


「死んだぞてめぇ! 生きて朝日をおがめると思うんじゃねえぞ!」

「ひっ……」


 俺はラウリィに向けて両手を突き出す。


超重力ギガ・グラビトン! そしてもう1つ超重力ギガ・グラビトン!」


 放たれた2つの重力場。

 ラウリィは1つは躱したが、重力に引かれてしまいもう一つがヒット。

 俺のつくり出した重力場にとらわれる。


「う、動けん! カリバーンの力をもってしてもだと!?」


 もがくラウリィに向けて、俺は同じだけ力を込めた超重力をさらにもう一発放った。


 2つの重力場が並び立ち、カリバーンを左右に引っ張り合う。

 何十倍もの超重力で。


「うがああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 ――バキッ! ゴキッ!

   ――ベキャッ!


 カリバーンが左右から真っ二つに割れてグシャグシャに壊れた。

 その際、胸のあたりから試験管っぽいものに入った液体が飛び出す。


 あれがネクタルか。

 俺はネクタルを回収し、技をさsらに強めた。


「た、たたた、助けて……助けて、くれ……痛い……痛いイイイィィィッ!」

「そんなこと言われて、助けてもらえると思っているのか?」


「た、頼む……お願いだ……こ、殺さないで……」

「そう言った敵を、お前は一度でも見逃してやったことはあるのか?」


 こいつの性格上、絶対にないだろう。

 他者を見下し、劣等種などさげすむような輩は。


「お前は死ぬ。2つの重力場に身を引きちぎられてな。そうなる前に全身の骨がグシャグシャになるから痛みで先に死ぬだろうけど」


「そんな……嫌だ……そんな死に方は嫌だぁ……」


「じゃあ重力場を1つに合体させてやる。疑似的ぎじてきなブラックホールになるから全身がパスタみたいに細くなって死ねるぞ」


 前にアミカと試合した時は、そうなる前にちゃんと解除した。

 しかし、今はそうしてやるつもりはない。


挽肉ひきにくになって死ぬか、パスタになって死ぬか、好きな方を選べ」

「ど、どっちも嫌だああぁぁぁぁ……」


「俺は料理人だ。お前がどんな食材になっても、ちゃんと埋葬料理してやるよ」

「そう、あなたは料理人。その手で作るのは笑顔だけでいい」


 ――シュパッ!


 どこからともなくナイフが飛んできた。

 飛来ひらいしたナイフは2つの重力場を貫通し、俺の魔法を解除した。


「ディスペルナイフ――私の持っているナイフの一つ。どんな魔法も切りける魔法の短剣」

「ミズハ……」


 ラウリィを助けたのはミズハだった。

 ミズハは俺の横を通り過ぎると、落ちたナイフを回収する。


「魔法が効かないから常に手持ちじゃなければいけない。管理がちょっと面倒めんどう

「お前……」

「お、おぉ……ミズハ! ミズハよ!」


 自分が助かったと確信したラウリィはミズハに駆け寄り、彼女の身体にすがりつく。


「よくぞ来た! 無事でよかった! 殺されたのではと心配したぞ!」

「……そう」


 心配なんて欠片かけらもしていなかったくせに、よくまあ口が回るものだ。


「あのまま寝ておけば良かったのに。どうして来た?」

「……後始末あとしまつ


 後始末?

 どういうことだ?


「さあミズハよ! 私に代わりこのネズミどもを始末せよ! 暗殺者アサシンギルドのエースとしての力、存分ぞんぶんに振るうがいい!」


「うん、わかった。ただし――」

「?」

「始末するのはあなた」


 ――ズドンッ!


 ミズハ近くの空間に穴が開いた。

 空間の穴から巨大な矢バリスタ射出しゃしゅつされ、ラウリィの身体をつらぬいた。


「な、何故……?」


けに負けたから。もう暗殺者やめるから邪魔になりそうなあなたを消した。それだけ。ここで死んだことにした方が都合つごうがいいの」


「わ、私が……こんな……」


 それが、ラウリィの最後の言葉だった。

 ミズハは巨大な矢を回収すると、あらためて俺たちに向き直る。


「どうして途中で止めたんだよ? どうせ始末するならあのままでも……」

「あなたは料理人。どうせ殺すなら暗殺者の私の方が適任てきにん


「暗殺者めるんだろ?」

「今日限りで。まだ今日は終わっていない」


「それ言うなら俺との賭けだってまだ終わっていないぞ」

「私はもうあなたを殺す気はない。あなたの勝ち確。だから、今負けても同じ」


 そう言うと、ミズハは俺からネクタルをうばい、近くで転がっているアミカにかけた。

 くだけた骨がみるみる再生し、全快する。


「賭けは私の負け。料理、教えてくれる?」

「ああ、もちろん」


 ようこそ、俺の仲間へ。





 --------------------------------------------------------------------------------

 《あとがき》

 すいません。お待たせしました。

 夏場は暑苦しくてなかなか予定通り投稿できないですね。

 スケジュール少し調整しようかしら。


 読み終わった後、できれば評価をいただけたらと。

 作者のやる気に繋がりますので。

 応援よろしくお願いします!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る