第51話 奴隷商人
「飯を食ってからもうだいぶ
「もうあと1時間もしないと思います」
「そうか……なら、もうそろそろ敵と
俺たちはいよいよ
イブセブン連邦は国土の7割が大自然のせいか、ここに来るまで
最初に出会ったオークベアを始め、今回初めて出会えたローパー2種。
アイアンスコーピオンの亜種で、
戦った感想としては、イブセブンの魔物のほうが、マトファミアの魔物よりも強い印象だった。
やはり魔力が濃いぶん、それだけ魔物が強くなるのだろうか?
まあ、魔力が濃い方が旨味が強い
「あ、そういえば一つ決めなきゃいけないことを忘れていたな」
「え? 何かあったっけ?」
「
「あ、そっか」
本名がばれて無事帰った後に、ローソニアから付け狙われるとか
領主を辞めた以上、俺も冒険者の身分に戻ったわけだから、ローソニア帝国を
そんな時に後ろから刺されるとかなったら目も当てられない。
「ローソニアの兵士に見つかる前に、適当な偽名を決めておいた方がいいと思うんだがどうだろう?」
「あたしは
ミーナが
朝飯に続いて昼飯もローパー料理だったことから、精神的ダメージが抜けきっていないと見える。
「仕方ないじゃろう……
「僕、昔から
「オレは……美味いからさすがに
「もう、みんなだらしないなあ。美味しいならそれでいいのに」
ミーナが
「それで、偽名だけどみんなはどう思う?」
「……わしは賛成じゃ」
「僕も同じく……」
「オレは冒険者じゃないけど、やっぱ決めておいた方がいいんでしょうね……」
全員賛成のようだ。
では、
「じゃあ、俺はカイルで」
「一文字しか違わないけど大丈夫なの?」
「大っぴらに情報収集をするからな」
やつらと
「なるほど! じゃあ、あたしはニナで」
「僕はビィトでお願いします」
「オレはアヤメでいきます。小枝の名前の方が反応できそうだし」
「ロリマスは何にする?」
「そうじゃなあ……」
みんながあっさり決めた中、偽ロリのアミカだけ決めかねていた。
「そんな
「うーむ、そうは言うけどのう。わしの場合、マトファミア王国の冒険者ギルドのマスターじゃから、似た名前を使うというのも危険ではないかや?」
「ああ、確かに」
言われてみればその通りだ。
有名人である以上、彼女だけは思いっきり違う名前を使ったほうが良いかもしれない。
「よし、決めたぞ!」
3分くらい悩んだ後、アミカはようやく自分の使う名前を決めた。
「で、何て名前にするんだ?」
「ローゼスバーグ=フォン=デュッセンドルフ4世で頼む」
「もっと簡単なのにしてくれ」
ギルマスの本名くらい覚えらんねえよ!
「むぅ、じゃあフランソワーズ=ド=ノイシュヴァンシュタイン3世で」
「簡単なのにしろって言ったばかりだろロリババア!」
「そうは言うがのう、冒険者ギルドのギルマスともなればそれなりの
「今のあんたは
「ふう、やれやれ。カイトは料理のこと以外はとんと無知じゃのう。奴隷は何も食うに困った
「だからって覚えれない名前にするな! もう面倒くさいから俺が決めてやる。偽者ロリータだからロリーナでいいな。はい決定!」
「ロリーナか……ふむ、まあいいじゃろ」
どうやらお気に召してくれたらしい。
偽名も決まって準備
これ以降、俺たちは自分たちの偽名に慣れるために、本名を使わず会話を続け――30分後。
……
…………
………………
「止まれーぃ!」
「
俺たちはローソニア帝国が
2人の兵士に言われた通り、俺とミーナは馬車から降りる。
「何者だ? 見たところ奴隷商人のようだが?」
「ええ。私は ローソニア帝国の
「カイルの秘書、ニナと申します。
「……ほう」
「……ニナだな。覚えたぞ」
ミーナが深々とお
ミーナのお胸のたわわ様が、重力に
テメェら! 俺の嫁をエロい目で見てんじゃねえぞ――って言えたらなあ!
色仕掛け込みでこの衣装を作ったけど、心の中がめちゃくちゃモヤる!
これはまさか……NTR属性の目覚め?
どうでもいいけど俺の名前も覚えてくれないかな?
「何故この先へ?」
「商人が行動する理由など、商売以外にありませんよ」
「独自の
「はは、なるほど」
「その孤児どもを
「スカウト――と言って欲しいですね」
「我が主は奴隷にも十分な教育と
そんなの聞くまでもなく綺麗な方だ。
なんだかんだで、人は見た目の印象が9割と言われている。
汚い方より綺麗な方がウケがいい。
「家を焼かれ、親や家族、
「主の
「ほう、こいつらは何で売れ残ったんだ?」
「まず男。ビィトというこの青年は、こう見えて魔法も使えて
「ちょっ……カイ――ルさん!? 僕そんな酒臭いですか!?」
臭いよ! お前の
ビールちょっとくらい飲んでもいいとは言ったけど、仕事中に
「ふむ、確かに臭いな」
「あー、なるほど。酒の匂いか。なんかさっきからにおうと思ったんだよな」
「そんな……?
次はキョウ行こうか。
「次にこの樹族の子――アヤメですが、売れない理由は値段とこの子の
「あー、たしかになあ。エロいことしたくて買ったのに、男になったら
「入れるところがケツしかないもんな。しかもワンチャンケツに入れられる可能性もあるし」
「……でも、結構かわいい顔しているし、アリと言えばアリか?」
「……確かに。美少年に
おやおや? ちょっと雲行きが
こう言えば
この兵士たち、とんだ性欲モンスターだよ!
そういえば中世の騎士や兵士たち、日本の武士たちは、お互いの
……まずいなこれ。
このままだとキョウ買われちゃわない?
「カイルさん! 何とかして! オレ買われたくないですよぅ!」
キョウが
案内役を失うわけにもいかないし、何とかしなければ。
「男と女、どっちになっても楽しそうな気がしないでもないな」
「性別のない今の状態を楽しむのもまた
「へ、兵士さん! お目が高い! でも、実はそういったお客様も多く、この子はすでに予約済みなんです!」
「そ、そうなんですよ。申し訳ありません。主ともどもお
「えー?」
「何だよ、つまんねーな」
とっさに出た言い訳だったけど、どうやら納得してくれたらしい。
危ない危ない。
「では最後、この幼女ロリーナと言うのですが、彼女が売れ残っている理由は――行き
「おい!?」
「行き遅れ?」
「見た目13-4歳くらいの幼女なのに?」
「はい。先ほどの主への反応でお
「こらミ――ニナ! 別にわしはキャラ付けでこうしゃべっとるわけでは――」
「のじゃロリか……それなりに
「ロリババア風とか、結構人気ありそうな気もするが……」
「ナチュラルな口調ならばそうでしょう。ですがこのロリ、なんか作り物っぽい感じなんですよね」
「お客様もバカではありません。言葉の
「そうか……キャラづくりの果てに生まれた悲しいモンスターなのか……」
「元気出せよのじゃロリ。きっとそのうちいいご主人様に出会えるさ」
「わ、わしキャラづくりしてないもん……」
2人の兵士は俺たちの話に納得してくれたようだ。
検問を無事に終え、俺たちは再び馬車を進める。
「このまま進むと30分くらいで樹族の村に出る。中央から将軍が来ているから、上客に売るチャンスだぞ」
「ただ、購入は難しいだろうな。捕らえた樹族は、全員使い道が決まっているという話だ」
使い道が決まっている?
「あのう……それはいったいどういうことでしょうか?」
「俺たちは
「なんかの実験に使うんじゃないのか? 中央じゃ
もしそうならえらいことだ。
一刻も早く助けなければならない。
「色々ありがとうございます。それでは」
「おう、あんたも商売頑張れよ」
兵士たちに別れを告げ、見えなくなったタイミングで馬を急がせた。
1秒でも早く、現状を知るために。
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《あとがき》
次回敵基地潜入です。
第6回ドラゴンノベルス小説コンテストにエントリー中です!
読み終わった後、できれば評価をいただけたらと。。
作者のやる気に繋がりますので。
応援よろしくお願いします!
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