第8話 結果報告
「いやー、ようやく帰ってこれたわね……
「まあ、荷物が荷物だからなあ」
クエスト完了から数時間後――俺たちはようやくサンクトクルスの街に戻ってきた。
時刻はすでに夜――魔法で
仕事が終わり、寝る前の
「こんな大荷物背負いながら歩きで帰ってきたのに、何故か全然疲れてないなあ。っていうかあたしこんなに力持ちだったっけ?」
「たぶんだけど、オークベアの肉の効果かもな。俺にこの仕事を紹介してくれた冒険者たちがいたんだけど、そいつらはスライムで魔力が回復してたから」
「スライムも食べたの!? あんな気持ち悪い魔物を!?」
「言うほど気持ち悪いかな?」
見た目ほぼゼリーだと思うのだが。
動くけど。
「プルプルだしヌルヌルだしで気持ち悪いじゃん。よく食べようだなんて
「新しい料理との出会いは
「でもさぁ……スライムだろ?」
「ああ、スライムだ。ちなみに食った三人は最初こそ
「ふーん、そんなに美味いのかねぇ、スライム」
ギルド
「
「よろしくね」
「は、はい……わかりました。でもこの大荷物は一体……? お二人のクエストはゴブリンの
「いや、それなんだけどさあ、ゴブリンやってる途中でオークベアが乱入してきて」
「オークベアが!? Aランク冒険者がパーティを組んで立ち向かう凶悪な魔物相手によく無事に逃げられましたね」
「いや、俺たち別に逃げていませんよ。なあ?」
「うん」
「え……? で、でもあなたたちの冒険者ランクはEですよね? いえ、カイトさんに
「そうなんだけどさあ、なんか倒せちゃったんだよね」
「倒した!? オークベアを!? あなたたちがですか!?」
「いや、あたしらっていうかカイトが。倒し方知ってたらしくて一人で一方的にボコっちゃった」
「はぁ!?」
「いやー、あたしも目の前で見てたけどちょっと信じられない
ミーナの説明に受付さんが目を見開いて
俺がやったことはそれほどまでに常識外れなことだったらしい。
「だからそのせいですんごい大荷物になっちゃったってワケ。オークベアの
「あ、はい! 少々お待ちください! ギルマスに
「お願いねー」
換金出来たら飯食おうぜ――と話していたところ、奥の方からドタドタという慌てた足音が聞こえてきた。
バンッ――と
「お前らがオークベアを倒したっていうのは本当か?」
「本当だよギルマス。中身見てみ」
「オークベアの目玉に
「そんなことするかよ。街にいられなくなるじゃん」
「だよな。一体どうやってお前らだけで倒したんだ?」
「あたしらだけっていうか、カイトが一人で。なんか倒し方知ってたらしくて」
「ほう?」
ミーナの説明でギルドマスターの
「お前さんは確か、昨日加入したばかりの奴だったな。一体どうやって倒したんだ? オークベアをFランクのお前が一人で倒すなんてとても信じられねえな」
「それなんですけど、マジでそんな強い魔物なんですか、あいつ?」
「おう、そうだ。何人もの冒険者があいつのせいで
「俺が思うに、違いこそあるけど俺の
俺は熊を例にオークベアの弱点、及び対処方法を説明した。
肉の
脳に近い
あと、今回は使えなかったけど、四つ足で
「ほう、なるほどなあ。お前さんはそのことを知っていたから倒せたわけか」
「そういうことです」
さすがに未知の化け物相手だったら戦わずに逃げている。
例えそいつが美味そうだったとしても、命あっての
「おい、マール」
「あ、はい」
受付さんが声を上げた。
この人マールって名前なのか。
「こいつとの話聞いていたな?
「は、はいっ! わかりました!」
「あ、ねえ!
「そう
「えー? せっかくパーッと行こうと思っていたのに」
「しょうがねえな……ほらっ。今日のところはこいつで
「え? これ金貨じゃん! いいの!?」
金貨って、たしか日本円で1枚十万円くらいの価値がなかったっけ?
そんなものをポンと出すとか、このおっさん気前がいいな。
「構わん。
「やった! ギルマス大好き! 愛してる!」
「俺には妻も子どももいるからお前の愛は受け取れねえ」
「よし、フられた! そんじゃあさっさと夜の街に
「おっと待ちな。俺はこいつとまだ話がある。行くならお前一人で行け」
「えー? 仕方ないな。んじゃねカイト! また組んで仕事しよーね♪」
ミーナの奴、あっさり俺を捨てて繰り出しやがったな。
付き合いというものを知らんのかあいつは。
「さてと、引き
「いえ、まあ、しょうがないと思いますし。俺がやったことって
「そうか、そう言ってくれると助かるぜ。どっこいしょっと」
ギルマスは改めて俺の正面に座り直すと、俺の顔を見てこう言った。
「カイトって言ったよな? お前さん異世界人だろ?」
「!?」
「ははっ、その顔を見るとどうやら当たったみてえだな」
イタズラが成功したような顔でギルマスは笑った。
「どうしてそのことを?」
「お前さんの話に出てきた熊って生き物だよ。俺の知り合いに異世界人がいてな、そいつもオークベアのことを熊って言っていたからピンと来たんだ」
「そ、その人は今どちらに!?」
「もうこの世界にはいねえよ。十年以上前に自分のいた世界に帰っていった……
ギルマスの話だと、最後の冒険の際に
「どうやって帰ったんですか?」
「あいつの場合は
「そう、ですか……」
だとしたら俺にはその方法は使えない。
本人じゃない人が身に着けていれば良かったんだが……残念だ。
「そう気を落とすな。あいつが帰れたんだ。お雨さんが帰る方法だってきっとある」
「そう、ですね。じゃあ見つかるまでせいぜいこの世界を楽しむとします。
「おう、その
どうやらギルマスの仲間だった人は、魔物を調理できなかったらしい。
かわいそうに……こんな美味いものを味わわずに帰るなんて。
旅行先でご当地グルメを食わずに帰るようなものじゃないか。
「ここにあります。ミーナの荷物の中身は素材ですけど俺のは違う。俺の中身はオークベアの肉です。しかも骨付き」
「肉ぅ!? そんなもんどうするってんだ? 何の武器にも道具にもならねえぞ?」
「気になりますか?」
「ああ、メチャクチャ気になる」
そうか……ならこの人にも教えてやらねばなるまい。
「今このギルド内に残っている人は何名ですか?」
「俺やマールを含めて五人ほどだな。そんなこと聞いてどうすんだよ?」
「決まってるでしょ。作るんですよ
「キッチンならあのドア向こうの左手に……っておい、まさか!?」
もうこの手のリアクションもいい
お約束もここまで続くと
「オークベアのステーキ。
「お、おい! 俺はまだ食うとは言ってねえぞ!? それに、他の奴だって……」
「文句は作った後で聞きますよ」
魔物はゲテモノ。
こういう場合の
「冒険者ギルドに
――新しい味を探しに冒険しようぜ。
そう言って俺は五人前のステーキを焼いたのだが、結果的に五人前ではなく十五人前になってしまったことは言うまでもない。
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《あとがき》
次回で序章に一区切りつきます。
話はまだまだ続きますよ!
あと次あたりからラブコメ成分UPします。
《旧Twitter》
https://twitter.com/USouhei
読み終わった後、できれば評価をいただけたらと。
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