隣の席のギャルが、香港マフィアみたいなグラサンを掛けてきた

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

共産主義の豚かっ!

 私の隣の席には、ギャルがいる。

 三池ミイケ 眠子ネムコという名の。


 ミケネコちゃんと言われて、慕われている。

 陽キャのトップカースト。

 私とは、相容れない存在だ。


 私は今日も、メガネを直しつつ、読書に――てえっ!?


 ミケネコさんが、メガネをかけていらっしゃる。


 しかも、金縁フレームで丸いサングラスを!

 サングラスの部分も、極端に小さい。


「すっごいね、ミケネコ。そのメガネかわいい」


「映えるねー」


 クラスのみんなからツッコまれて、ミケネコさんも「いいでしょー」と得意げだ。


「あっこで買ったの?」


「そうそうイオンの」

 

 ああ、あのメガネ屋さんかな?

 近所のイオンモールにある、格安のメガネ屋さんだろう。

 私も高校入学の際、メガネをそこで買った。


 変なフレームが、多いんだよな。あの店。


 最近は、変わったフレームのメガネをかける人が多い。

 サラリーマンでも、ワクワクみたいな黒縁メガネをかけていたりする。

 漢文の先生も、最近は丸メガネなんだよね。全然似合っていない。


 だが、これは予想外だった。案外おちゃめなのか? 

 よくいえば、奇抜。悪く言えば、趣味が悪い。

 あんなサングラス、香港マフィアか『紅の豚』でしか見たことないが。


「なんだあれは!? 共産主義の豚か!」


 思わず私も、声に出して突っ込んでしまった。


 ヤバイ。陰キャカーストのトップである私が、陽キャのシンボルであるミケネコに注目してしまうとは。


しおりちゃん、わかる? やっぱ栞ちゃんなら、元ネタわかってくれちゃうよねー」


 なんとミケネコが、私を下の名前で呼んできた。

 距離が近い。


 よく見ると、クラスメイトはみんな着席している。

 HRが始まる前に、整列しているようだ。


「うえ?」


「だから、『紅の豚』見てぇ、このメガネ選んだよねー」

 

「そ、そうなんですね?」


「うん。だってさ、紅の豚いいよって、ススメてたじゃん」

 

「なにで?」


 私、彼女にそんなコトを話した覚えがない。


 映画ブログでひっそりと自分語りをしていたくらいしか……。


 まさか!


「ブログ見てるよー」


 ミケネコが、スマホで私のブログサイトを見せてきた。


「うえ!?」


 私は、席を立つ。


「どうした、山田?」


「いえ、なんでも」


 先生に指摘され、私は咳払いをして着席する。


 目玉が、メガネを突き破りそうになった。


「いつから?」


「開設当初から」


 私が中坊のときからじゃん!


 やばば! この人、ヘビー視聴者だ。


「すっごい参考にしてるよ。だから、目が悪くなっちゃってさ。メガネも買っちゃった」


 スチャ、と、ミケネコがメガネを装着する。

 

「また香港マフィア!」


 私は再び、先生から注意された。

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