第2話 生命をうみだそう!

 俺たち神は基本、自分の世界の中ではどんな事でもできる。俺はまだ到底全知全能とまでは言えないが、自分の世界の中のことは大体わかる。認識しているというよりは、知ろうとすればすぐわかると言った感じだ。それに大抵のものは創れるし壊せる。


 時間を止めたり戻したり、天候を自由自在に操ったり大陸を動かしたり。神の力を生物やものに分け与えたりもできる。簡単にいえば神自身が思いついたことは全て容易にできる力がある。


 しかし、神があまりにも好き放題しているとその反動を受けて世界が耐えきれなくなり宇宙が崩壊する。もし宇宙が崩壊してしまうと神である理由が無くなったとして、最上位神様に天使へと降格されてしまう。たまにそういうことが起こるそうだ。

 随分前に天使として働いていた世界では、危うく崩壊するところまでいってそこの神は真っ青になって冷や汗をかいていた。


 しかし少し前に何人かの新人の神の世界で崩壊が連続して起こってしまった。

 これは由々しき事態だといって最上位神様が”神Pシステム”というシステムを作った。世界の安定度を数値として可視化してくれるシステムだ。神が世界にある程度以上干渉するとこのポイントが減っていき0以下になると崩壊の可能性が出てくる。そしてポイントがマイナスになるほど崩壊しやすくなる。


 今回俺の世界ができた時、初期値として5000ポイント追加と表示されている。このポイントを上手くやりくりしていかないといけない。


 現状、有機物は作ることができたがそれが生物の元になるように上手いこと組み合わさるまでかなり時間を待つ必要がある。そこで神Pの出番だ。


 100P使って時間をとばしてしまおう。まだ複雑な生態系や人間による文明がなく、大きな変動も起こりにくいので100Pで十分の時間が飛ばせるだろう。では、”時間をスキップ”。


 うまく行った。5億年くらいとばせたようだ。若干大陸が動いたような気がしなくもない。早速海底を見に行くとあと命を吹き込むだけ、ところまで生物の型が数種分できていた!

 単細胞生物でも消費ポイント500。生命は神でもそう簡単じゃないか。3種類くらい生み出しておこう。

 よし!ちゃんと生まれたな。


 …感動している。こんなにも小さいが、ちょこちょこと動いていてとても愛らしい。動物っぽいのが2種と、あまり動かず光合成をしているのが1種類。

 呼吸もして生命活動をしていて、環境が良かったのかどんどん増えていっている。この単細胞生物たちから色んな生き物が生まれてくると考えると不思議なものだ。


 この子たちには頑張ってもらわないといけない。しかし、それぞれから進化して新たな生物がさらに生まれたりするのか?


 「進化には神Pを使う場合と、使わずにできる場合がある。基本的には、進化元の種のある程度の繁栄と進化先の種が十分生命活動を行えるような環境、その他いくつかの条件によって”進化可能状態”になる。


 しかしそう簡単に進化ばかりされていては生態系がぶっ壊れるので、大抵長い時間をかけて”進化可能状態”から、ゆっくり”進化待機状態”へと変化していく。そして最後に神が本当にその種が生まれていいのか確認してから本当に進化させることができる。この場合ごく自然に則っているので神Pの消費は必要ない。


 ではいつ使うのかと言う話だが、神Pを使うのは”進化可能状態”のとき、またはそれに近い状況の時である。


 神Pを消費してまだ”進化待機状態”でない種へと強制的に時間を短縮し、ある程度の細々した条件を無理やり合わせて進化させられる。

 進化可能状態からでもかなり時間がかかる場合があるのでおすすめの使い方のひとつ。」とガイドにはある。


 今できる10種類への進化は全て50ポイントで低め。まだ単細胞で単純な構造の生物だからだろうか。今いる3種と似たような感じだが、試しに10種類全て増やしておこう。


 …成功だ。新たに10種類の生物達がそれぞれが別々の挙動で動きまわっている。ん?進化しても元の種も残っているな。

 環境に適応できず絶滅しない限り、完全に全ての個体が進化するわけではなく、ある程度そのまま残るようだ。

 このまま時間がたてば、単細胞だけじゃなく多細胞生物に進化できるようになりそうだ。最初は複雑な構造の生き物は難しいが、多細胞生物の種類が増えれば、色んな動物を沢山つくれる。


 いろんな想像がふくらむな。ベテランの神は一から見た目をモデリングしたり生態を設定したりしていた。生き物だけでもやれることは莫大に広がっていくのだろう。


 とは言っても、次の進化可能状態までには新種たちの発展と環境の変化、適応にかなりの時間が必要だろう。少しの間放置して他の事の下準備をしておこう。


 基本宇宙が始まってからある程度の時間は神はひとつの惑星を付きっきりで見る。そうしないと発展が遅れてしまうし、知らないところで問題がおきてしまうからだ。それに何より星を育てるのが楽しくて離れられなくなるらしい。


 だが、より良い宇宙を作るにはいくつかの生物のいる惑星があった方がいい。なので、時間がある時に色々いじれる惑星を作ったり探しておく方がいいと俺は思っている。


 あれから他に恒星を探して惑星を作って、海と陸を作って、環境をある程度整えて、などと2回ほどしていたら気づくと5000年も経っていた。そろそろ次の種を作るのにいい頃かな?とウキウキして戻ってきたら。


 ……………。空は雲によって厚く覆われていて薄暗く、少し前さえも霞んでいて見えないほど空気が悪い。陽を反射して青く煌びやかだった海は、一辺倒の灰色となり濁っている。


 そして、増えていた生き物たちの大半が見るも無惨に絶滅していた。

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