第21話 結婚式の日取り
部屋に残されたルーナは騎士の一人に支えられゆっくりと立ち上がった。
大きな足音をさせカイトが慌ててルーナに駆け寄った。
「ああ、ルーナ。無事だった。良かった。怪我はない?何もされてない?痛い所はない?」
ルーナはカイトに強く抱き締められていた。
「だ、大丈夫ですよ。カイト様、少し痛いです」
「あっ、ごめん。ルーナが無事で良かった」
カイトは目に涙を溜めてルーナの無事を喜んでいた。
ルーナはカイトに抱き抱えられ馬車に乗せられた。馬車の中でも抱えられたままだった。
ルーナは恥ずかしくて抵抗しようと思ったが、カイトの体温がルーナの心も温め、いつの間にか眠りに落ちてしまった。
モントン伯爵とハーマン伯爵は早い段階でルーナの所在を把握しており、ヴィオラが接触し現行犯でハーマン伯爵が捕える事を計画し実行した。
手芸店の店主は共犯ではなく、巻き込まれただけだった。
ただ、モントン伯爵令嬢が来店することを知り合いに話していたことが不運だった。
妊婦とメイドに化けヴィオラに協力した悪友も直ぐに素性が分かり、同じように罰せられる。
モントン伯爵とハーマン伯爵が箝口令を敷き、ルーナの誘拐は外に漏れることはなかった。
たとえ漏れたとしても、ハーマン伯爵はカイトとルーナの結婚を反対するつもりはなかった。
誘拐事件以降カイトの過保護ぶりは過熱し、ルーナの外出に出来る限り付き添い、友達の訪問にも様子を伺うような素振りをみせている。
転落事故以前のカイトからは考えられない行動で、本当に同一人物かと疑ってしまう。
ルーナはカイトには隠し事ややましい事はないが、常に行動を監視されているようで不自由を感じているものの、一時的なものかもしれないと、出来るだけ気にしないようにしている。
今日はハーマン伯爵邸に呼ばれカイトとお茶を楽しんでいる。
もちろん送り迎え付きで。
後で婚約者だからと許されているカイトの自室に行くことになっている。
「カイト様、結婚式の日取りなのですが、当初の予定では後三ヶ月になりますが、準備も整っていないので延期をした方がよろしいのではないでしょうか?」
「そうだな。ルーナの花嫁衣装を完璧に仕上げるには時間がかかるね。婚約期間を楽しむためにも延期をした方がよさそうだ。半年後ではどうだろうか?」
「···半年後ですか?···父に相談してみます。後でハーマン伯爵様にもご相談願えますか?」
「了解した。ルーナのウエディングドレス楽しみだなぁ」
カイトはうっとりした顔でルーナを見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます