第18話 カイトとのお茶会

「ルーナ、素敵なお茶会をありがとう。貴女を含めて全てが私好みで驚いたよ。ルーナ、今日も綺麗だよ」

「カイト様···貴方の好みに合ってよかったです。カイト様の事を思いながら、みんなに協力して貰い、初めてお茶会の準備をしました」

「それは嬉しいな。お世辞抜きで私の好みのものばかりなんだ。ありがとう」

「こちらこそ。褒めていただいてありがとうございます」

 カイトとルーナは真っ赤な顔で、お互いを褒めていた。


 二人の話が予想以上に盛り上がり、時間が経っていたこともあって、このままカイト様を夕食に誘うようにと父から伝言が入った。

 温室でのお茶会はお開きとなり夕食までの間、カイト様を応接室に案内することにした。

 応接室では母と兄も加わり、話題が新しく増えたこともあり、楽しい話が尽きる事はなかった。


 楽しい雰囲気のまま父が加わり、家族で夕食を取ることになった。

「カイト殿、ルーナとの婚約のことなんだが、君はどう思っているのか教えてくれるか?」

「モントン伯爵様、恐れながらルーナ嬢との婚約を新たに結び直していただけないでしょうか?」

「婚約を一度破棄しても構わないということなのか?」

「はい。私はもう一度ルーナ嬢と最初からやり直して、プロポーズをしたいのです」

「ルーナはそれでいいのか?」

「はい。カイト様のお望み通りに」

「ありがとう、ルーナ。貴女が私の妻になってくれるまで、何度でも結婚を申し込むよ」

「まあ、そんなこと···」


 デレデレのカイトと真っ赤な顔のルーナ以外の家族は、口が開いたまま呆然としていた。

 婚約のやり直しなどしなくてもいいのではないかと、父、母、兄は冷めた目で二人の様子を見ていた。

 夕食が終わり、カイトは名残惜しそうにしながらモントン伯爵家を後にした。


 モントン伯爵はルーナを執務室に呼んでいた。

「ルーナ、カイト殿はもう一度婚約をやり直すと言ったが、君はどうなんだい?」

「そうですね。カイト様の気持ちは嬉しいのですが、一度婚約を破棄して結び直したら、カイト様の経歴に傷が付きませんか?」

「そうだな。婚約破棄の書類はまだここにあって、貴族院には出していないんだよ」

 父は、机にある封筒を指で軽く弾いて考えていた。

「よしわかった。この書類は出さずに、このまま婚約を継続させよう。結婚式は延期するということでどうだろうか?」

「はい。結婚式の日取りの事はカイト様と相談いたします」

「カイト殿のプロポーズはお受けするのだな」

「はいっ」

 ルーナはハッキリと返事をしていた。


 この国の取り決めとして貴族院は、婚約、婚姻、出生、死亡、爵位の相続や譲渡、廃位など貴族の人事に関することを管理している。

 家の存続、爵位の継続や相続などに関わる婚姻は、16才の成人にならないと認められないため、早い者は生まれた時から、婚約者がいることもある。

 安易に婚約を破棄して繰り返す事になれば、貴族としての信用や沽券に関わることになる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る