第17話 カイトへの気持ち

 ルーナの気持ちは決まった。

 カイト様ともう一度やり直したい。

 今の自分の気持ちを正直に伝えよう。

 これから先、もし上手くいかなくなったとしても、カイト様に気持ちを伝え後悔しないと決めた。

 ルーナはカイトにモントン伯爵家に来てもらうように手紙を出した。


 数日後、カイトはいつものように花束を持ってモントン伯爵家を訪れた。

「ルーナ様お招きいただき、ありがとうございます」

「カイト様、ようこそいらっしゃいました。お忙しい中来ていただいて、ありがとうございます。本日は庭園の中の温室にご案内致します」


 ルーナはカイトとの約束を取り付けたあと、精一杯のおもてなしをしようと、自宅に招いた。

 お茶会の会場である温室の一角にあるテーブルの周辺の花壇に気を配り、椅子や長椅子のクッションも自分で選んだ。

 軽食のメニューやデザートの種類、茶葉の選定など、父や母、兄やセーラ、数少ない友人などに相談しルーナ自らが初めてやり遂げていた。


 ルーナが身につけている衣装やアクセサリーも、母や使用人たちの意見を聞き、自分の魅力を全面に出せるよう考えた。

 カイトにもらったネックレスに合うように、派手にならず上品な装いを心掛けた。


 カイトはルーナの返事に期待していた。

 最近の手紙のやり取りに好感を持ち、訪問にあわせて衣装選びに悩んでいた。

 万が一ルーナに今日断られたとしても、時間が掛かっても何度でも、結婚を申し込むつもりでいた。

 自分の妻はルーナ以外に考えられなかった。

 カイトはクローゼットの中にある、薄い青色のジャケットが目に入った。

 ルーナの瞳を思わせる色にカイトの迷いが吹き飛んだ。


 カイトは他人に対しここまで関心があるのは初めてだった。

 父親の言う事が全てであり絶対だった。

 自分の意見など言うことも無いし無かった。

 最近は朝起きてから寝るまでルーナのことを思い悩んでいる。自分でも不思議な感覚だった。

 彼女の日記を見てからなのか。初めて女性として意識し始めたからなのか。

 ルーナへの執着心は止まらない。

 カイトの心の中はルーナを想う気持ちでいっぱいだった。


 ルーナが全て用意したというお茶会は心地がよかった。

 温室も丁寧に整えられ、テーブルや椅子、クッションまでも自分の趣味に合う。

 軽食や茶葉のも好みのピッタリで少し驚いている。

 清楚で上品な装いと胸元のネックレスが合い、彼女から目が離せない。瞬きするのも勿体ないと思っていた。

 ルーナの返事を聞かずにこのまま拐って行きたいとさえ思ってしまう。

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