第14話 冬色のネックレス

 ルーナは勇気を出して、

「カイト様、ネックレスを着けてもらってもよろしいでしょうか?」

 言い終わった後、ルーナは真っ赤な顔をしてうつむいた。

「あ、ああ。わかった」

 カイトも真っ赤な顔で、ルーナからネックレス受け取り、彼女の首に着けようとしていた。


 手袋を外したカイトのひんやりした指先がルーナの首に触れ、ルーナは少し肩が上がってしまった。

「すまなかった」

 とカイトは小さな声で呟いた。

「いいえ」

 ルーナは更に顔が赤くなった。


 右手を胸にあて大きく息を吐き気持ちを整えたルーナが、向き直ってカイトと顔を合わせると、

「やっぱりよく似合う。ルーナ綺麗だよ」

 とカイトが目を細めて言ってくれた。

 ルーナは目を潤ませ、

「ありがとうございます」

 と言った。カイトにずっと言って欲しいかった言葉だった。


 月に一度カイトに会える日は、髪型やドレス、アクセサリーなど、少しでも褒めてもらいたくて悩んで選んでいたものを、あの時のカイトは全く見ていなかった、見ようともしなかった。

 目も合わせてくれなかった。

 よく似合うね。綺麗だよ。と、嘘でも心がなくてもカイトの口から聞いてみたかった。

 やっと欲しかった言葉が聞けた。


 カイトは目を潤ませるルーナに、

「どこか痛むのか?何か気にさわったか?」

 と心配そうにルーナの顔を覗き込んでいた。

「いいえ。カイト様に綺麗だと言ってもらって、嬉しいのです」

「よかった。これからは何度でも言うよ。綺麗だよルーナ。貴女の隣にいる事を許してもらえないだろうか?」


「···それは?」

「もう一度、ルーナとやり直したいんだ。返事は急がなくてもいいんだ。俺とのことを考えて欲しい」

「わかりました。必ずお返事をさせていただきます」

 二人はしばらく見つめ合い温室を後にした。


 ルーナは自室でカイトにもらったネックレスを見つめていた。

 夏や秋のような鮮やかな青い空よりも、少し儚げな薄い色の空が好きだった。

 冬生まれのルーナは特に冬の空が好きだった。

 カイトにもらったネックレスは、ルーナの好きな冬の空を思わせた。

 冷たい空気が透明感を増し、レースのように薄い雲、水色の空に浮かぶ白い月、暖かさに癒しを感じる太陽の光が好きだった。


 ヴィオラのお陰で気がついた、カイト様の隣に他の誰かがいるのは嫌だった。

 カイト様が好きな気持ちは今でも変わっていなかった。

 ルーナはもう一度やり直そうと言ってくれた、カイト様のことを信じようと思った。

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