第13話 カイトの恫喝

 歓談の後、カイトは前夫人(カイトの生みの母)の自慢の温室に案内してくれるようだった。

 カイトはルーナに渡すものがあったようで、

「すまない、部屋まで忘れ物を取りに行く間、少し待っていてもらえないだろうか?」

 と言ってしばらく温室を離れるようだった。

「はい。お待ちしています」

 ルーナは快く返事をし、温室の中を一人で見て回ることにした。


 カイトがルーナを屋敷に招待していると聞いた義妹のヴィオラは、ルーナが一人になったのを見て側にやって来た。応接室からずっと様子を伺っていたようだ。

「ごきげんよう、ルーナ様」

「ごきげんよう、ヴィオラ様」

 ルーナは仕方なく挨拶をした。

「わたくし、ルーナ様にお話があるのですが?」

 話の内容に予想がつくルーナは、面倒だと思ったが話を聞くことにした。


「ええ、お伺いしますわ」

「義兄様との婚約は白紙に戻ったのでは?貴女、はしたないわね。私と義兄様の事はご存知なのかしら?」

「カイト様とヴィオラ様のことですか?血の繋がらないご兄妹でしたわね」

「そうよ。義兄様と私はお互いに好意を持っているのよ。貴女、邪魔する気なの?」

「それが本当なら、わたくしは身を引く覚悟ですわ。カイト様には幸せになって欲しいと思っています」


「まあ、それなら話は簡単ね。今すぐお帰りいただいても」

「私はカイト様に招いていただいているので、勝手に帰ることは出来ません」

「貴女本当に非常識ね」


「非常識なのはおまえの方だ。ルーナは私の大事なお客様だ」

「義兄様···」

「いい加減な事を言うなヴィオラ、私は君のことなどなんとも思っていない。それに沢山の男達とふしだらな関係で節操のない女は嫌いだ。俺が知らないとでも思っているのか?そのうち父上に知れるだろうな」

「な、な、なによ。ふしだらなお付き合いなどしていないわ」


「おまえと付き合ったという男どもが、俺に自慢してきたぞ」

「そんなの嘘に決まってるわ」

「まあ、いい。これ以上勝手な真似をしていると、この屋敷にいられなくなるぞ。それと、私の大事なルーナに近づくな」

 ヴィオラは真っ赤な顔をして走り去っていった。


「ルーナ待たせてしまって申し訳なかった。これを渡そうと思っていたんだ」

 そう言ってカイトはルーナに小さな箱を手渡した。

 箱を開けてみると、冬空を思わせるブルームーンストーンのついたネックレスが入っていた。

「まあ、とても美しいわ」

 ルーナは嬉しかった。

「カイト様ありがとうございます。私とても気に入りました。大事にします」

 満面の笑みを見せるルーナに、胸のときめきが収まらないカイトは真っ赤な顔で、

「気に入ってもらってよかったよ」

 としか言えなかった。

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