第7話 意識が戻る

 朝の目覚めとともに見慣れたベッドの天蓋が目に入り、自分の部屋だということに気がついた。

「あれっ。私···夢を見ていたのかしら?」

 ルーナな両腕を上げようとしたが、左腕しか上がらなかった。人間の手だった。


「誰かいないの?」

「お、お嬢様!侍女のセーラでございます。お分かりになりますか?」

「ええ、セーラおはよう」

 セーラは涙目になり、お待ちくださいといって部屋を出ていった。

 父、母、兄が慌てて部屋に入ってきた。

「おーっ。ルーナ、よかった。よかったよ」

 三人は抱き合いルーナを見ていた。

「医者だ、医者を呼べ」

 父は使用人に叫んでいた。


「大丈夫?どこか痛いところはないの?」

 母は優しく声をかけ気遣ってくれた。

「右腕が重くて持ち上がらないわ」

「そ、そうよね?指は動くの?」

「うん。大丈夫みたい」

「まあ、まあよかったわ」

 母は涙を流し大きく頷いていた。


「お兄様、私どれくらい眠っていたのかしら?」

「うーん、五日間かな?俺たちにとってはもっと長く感じたけどな」

 お兄様も涙目になっていた。


「お父様、ご心配をおかけしました」

「ああ、いいんだ。落ち着いたら話をしよう」

「はい」

 お医者様が入って来たので診察を受けることになり、お父様とお兄様は部屋を出て行った。


「苦しくはないですか?」

「はい。大丈夫です」

 その後も色々と質問されたが、右腕の傷以外これと言って問題はないようだった。

 医者は奇跡に近いと言っていた。

「お嬢様は木にぶつかりながら落ちて、地面が柔らかい落葉と土でしたので、頭を強く打たなかったようです」

「そうなんですね。私はバルコニーで躓いてしまい、低い柵に腰を打って落ちてしまったのです。お恥ずかしいですわ」


「恥ずかしいなどと、事故なので仕方がありませんよ」

「ええ。誰かに突き落とされたとしたら、もっと大怪我をしていたでしょうね」

 ルーナはカイトのことを考えた言葉を口にしていた。

「意識もハッキリされているし、内蔵の方も問題ないようですね。後は怪我の治療を続けましょう。体調に変化があれば直ぐにお知らせ下さい」

「はい。ありがとうございました」

 お医者様は安心した顔をすると、軽く会釈をして部屋から出て行った。


「お母様、お恥ずかしいのですが、私お腹が空きましたの」

「まあ、早速用意させるわ。消化の良いものにするわね」

 母は直接厨房に行ってくれるようだった。

 セーラは水差しからグラスに水を入れ、飲ませてくれた。

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