第4話 ルーナの日記
ハーマン伯爵家に帰ったカイトは、父親にモントン伯爵の意向を伝えに行った。
ハーマン伯爵は一言「そうか」と言っただけで、次の縁談を考えないといけないなと、言って眉間に皺を寄せて考えていた。
カイトはルーナの侍女から借りた日記を読んでいた。
『カイト様は朝早いのに遅れずに来てくださる。カイト様にもらったブローチを着けて来たけど、似合ってるかしら。お渡ししたハンカチは使っていただいているかしら。カイト様はお野菜が苦手みたいだわ、私がお料理を手伝おうかしら。今日は髪型を変えたけど気がついてくれるかしら。カイト様が幸せなら、私は喜んで身を引くわ。私はカイト様の事が大好きです···』
カイトは婚約者に対して不誠実な自分に呆然とした。
送ったブローチも予算の範囲内で、高見えのする物を使用人に用意させたもので、どんなものをルーナに渡したのかも見ていないので分からなかった。
彼女からもらったハンカチもどこにあるのか分からない。
月に一度しか会わなかったのも、結婚したら毎日顔を見るし、興味のない婚約者に会うのが面倒だったからだ。
こんな不誠実な婚約者の幸せを祈るなど、ルーナはどうかしている。
カイトは両手で頭を抱え、大きなため息をついた。
猫のルーナは深刻な顔をするカイトが気になり、机の上に飛び乗り日記を見つけた。
「ニャー」(うわっ、恥ずかしい)
「シャーは分かるのかい?俺は人として男として恥ずかしいよ」
「ニャー」(これ以上見ないで)
「慰めてくれてありがとう」
そう言ってカイトはシャーを抱きしめていた。
「ニャ、ニャー」(離して下さい)
猫のルーナは前足に力を込めて、カイトの抱擁から逃れようとじたばたしていた。
「ニャッ、ニャー」(これ以上ダメ、死にそう)
猫のルーナは胸がドキドキして、心臓がどうにかなりそうだった。
ようやくカイトの抱擁から逃れた猫のルーナは、ぐったりとしていた。
「シャー大丈夫かい?」
「···」
猫のルーナはカイトの手の届かないベッドの下に逃げ込み、眠りについた。
翌日目を覚ました猫のルーナは、使用人たちの話から、カイトが昨日ルーナのお見舞いに行った事を知った。
(それで私の日記を持っていたのね)
ルーナとの婚約も白紙になったらしいと、使用人たちが話していた。
(カイト様が幸せならそれでいいわ)
猫のルーナは伯爵家のお庭を気持ちよく歩いていた。
猫のルーナは庭で、カイト様の義妹ヴィオラに会ってしまった。
ヴィオラは猫の方へ真っ直ぐ歩いて来た。
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