ぼくが消えてしまうまで

ラッキー平山

ぼくが消えてしまうまで

豚なのに鼻がないんだ

人間なのに顔もないのか


飛び散った脳みその奥に

焼け野原を見た

それは君とおんなじ声で、

ただ笑って、

レールの上を大人しく、

御仏のように


殺されたんじゃ足りないか

生まれても、生まれても、

朝日は昇らない

ただ、まっ昼間が笑うだけ


嘘だぞ!

こんないい天気、

小細工だぞ!


誰のせいかは分かっているさ

だからごまかして、

魚のように食い殺されて、

串刺しこそが生命の源だと、

知ってましたか?


愛してるから凍りついた

そんなショッキングを

ワインクーラーに突っ込んで、

ここは寒い


幸せなのに、まるで俺のようだ

最低だ


生きた心地と挨拶する

頭痛の朝は異世界丸出しで殺し、

夜もあの世も風のように遠い


ほおずき背負って空飛んで

口笛をやっと覚えた原発の

腐ったオナラ


楽しいか

楽しいのはいいけど、

そこはケツで、

歌ってるのは未来だぞ

あるはずもない未来だぞ


どうせいなくなる俺たちの

最初から無かった顔、心、

海、山、トカゲ

その尻尾と第三十六の目は

360度吸い込んでしまえない、

みすぼらしく重い空気に似ている


えくぼが素敵だね

ただの分解だ

憎悪ぐっちょりの雑巾だ


拭いてごらん

きっと顔面だよ


あまりの無礼に、

日本で一番偉いテメエが憤死した

富士山のように憤死した


なぜなら、休んでばっかで、

ちっともこの国をどうにかしない報いだ


ぼくは生まれませんでした

育ちませんでした


だから、

なるべく鏡を見るようにはしているのですが、

あと何百回確認すれば、

人並みになれますか?


ふつうの人間というのは、

いったい確信しているのか?

鏡に映るそれが、

そんなにも自分の顔だとは


池の中からカバが現れ、

口の中には泥棒がひそみ、

まるで下から上へ沈む太陽だ

人を呑む月だ


詩を書いて、

よかったことはひとつもない

一人で苦しみ続けて死ね!

それが詩人だ


一つの詩ができるために、

それ以外の私の全てが潰れて消える


「飲み干されて潰されて、

捨てられた私は潰れ空き缶」

なんて詩を書いたんだが、

あまりにも甘かった


「おまえの惨殺死体が、まだあるなら、

それに頬ずりでもして、歳だけ食ってろ!」と

詩の神様から、

何百回も鉄拳が飛ぶのです


ぼくが消えてしまうまで、ね

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ぼくが消えてしまうまで ラッキー平山 @yaminokaz

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