あなたのお眼鏡にかなうかしら?

ねこ大名

あなたのお眼鏡にかなうかしら?

おれたちは就職難民。

さすらって放浪のすえ、ようやくこの星にたどりついた。

役人による管理体制と、住民のリプ欄通報による衆愚主義ポピュリズムが混在した妙な星だ。


ここの入管役人によると、おれたちのような異星人が「なりわい」をなしたり、労働の申請をして何某かの職につくにあたっては必ず試用期間があり、その資格をとることが必要らしい。

その資格の取得は、住民のクレーム率によって左右される。


「おまえらシュウダン、ワルいやつひとりいたら皆クビチョンパあるよ」入管役人はそう言った。

おれたちは余所者の集団就職なので、だれかひとりでも基準を満たさない奴がいれば即通報、住民の噂はまたたく間に流れて全員同レベルとみなされ、容赦なく首を切られる覚悟しなければならない。


しかし、そんなことで躊躇ちゅうちょするおれたちではない。さっそくこの星の高給取りを目指し、試用兼資格試験にのぞんだ。


高給取りなかでもとりわけ人気なのは探検家である。

自前では危険なことを一切しないこの星では、希少金属をはじめ古代文明の至宝などお宝がたくさん眠っていると噂される。山師よろしく一発当てるとデカいのだ。


しかしながら現実は厳しかった。


ここの「探検家」とは名ばかりで、決死の冒険や胸躍るアドベンチャーとは無縁の、人の命を削るばかりの岩砂漠の開墾採掘、その繰り返し。

酷だけの地道な作業の山がおれたち皆の性に合わず、あっという間に脱落した。


脱落したのはこれだけではない。


以下はリプ欄通報で指摘されたおれたちへの「クレーム」の一部である。

・原住民(臨時)…「メイクが下手」「驚嘆の表情に欠ける」

・原住民の恋人(これも臨時)…「色っぽさが足りない」

・クリーンスタッフ…「仕事が雑」「挨拶ぐらいしろ」

掏摸スリ…「検挙」


ああ、結局おれたちに残されてた役は、ここでも「ひとつ」だけだった…。


「観光客」である。


商売人にぐるりを囲われ、入場券とグッズを買わされ、御誂おあつらえの見世物を見てるだけ。

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あなたのお眼鏡にかなうかしら? ねこ大名 @bottleneckslider

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