第14話 準備
「セリーナさん、怪我してますよ」
ダンジョンからの帰還後、セリーナさんの左の二の腕から軽微ではあるが出血していた。
「ケンジも」
セリーナさんが指差した先は右肘、左足。戦闘中はアドレナリンの分泌で一切気付かなかっただけで、2人して結構な切り傷や擦過傷を負っていた。
「よく生きて帰ってこれましたね……」
極度の疲労とともにふとそんな言葉が口をついて出た。思わず膝をつく。というか投げ出してあぐらかいて地べたに座り込んだ。
「……ですね」
返すセリーナさんも精魂尽き果てたといった様子。
「ま……、お疲れっした」
コツン、とお互いの拳を小突き合い互いの健闘を讃えた。
残るはとうとうボスの居座る50階層のみ。一方でセレナデーテさんのタイムリミットまでおよそ一週間程度はある。上出来のペースだ。
×××××
いよいよボス攻略戦とあって、俺達は綿密に作戦を考えていた。50階層の間取りは、10年前のボス討伐の際のパーティーが情報をもたらしてくれている。ちなみに前回討伐されたボスはドラゴンだったらしい。
閑話休題。ドラゴンがいただけあって空間は巨大だ。細かい寸法は記録されていないが、それでも全長10mはあったとされるドラゴンが飛び回れるだけあるのだからやはり広大だ。
気になるのは地形で、ドラゴンの寝床以外には成人男性ほどの大きさの石柱が無数にある様子。とは言え戦闘記録に『剣を振り回した』との記述があることからしてstg44の取り回しには困らなさそう。
一番の不安の種はボスの種族がわからないことだ。ダンジョンのボスも1つの生命であり、一度討伐されれば、原理は全く不明なものの、別の新しいボスが現れる。そして前回のボス討伐後、新しいボスへ挑んだ者はあらず、よってボスについては何もわかっていない。
喜ばしい情報もある。これまたどのような原理に基づくのか不明だが、50階層にはボス以外の魔物は出現しない。
そして我々は強大なボスに備えて新兵器を購入した。パンツァーファウスト。第二次世界大戦においてドイツが開発した携行式の対戦車擲弾発射機で、今日の対戦車ロケットの先駆け的兵器だ。200mmの装甲貫徹力を誇る。
見た目は横から見ると、先端に六角形の弾頭、それに続く円筒、円筒にちょこんとのせられた照準器とそれなりにシンプル。
これを1人1つで計2つ。これを機を逃さずにボスにぶち込めばいかな強敵でも葬り去ることができるだろう。
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