KAC20248の作品 竜族の魔法使い 番外編
鈴木美本
『竜族の魔法使い』番外編『眼鏡と料理』
ある休日、婚約者の2人は同じ部屋で過ごしていた。
「ねえ、イレアル? その眼鏡どうしたの? 珍しいね?」
「ああ、これですか?」
イレアルはカウンターから見ている婚約者へ振り向き、耳にかかる水色の髪をかき上げ、眼鏡を右手で触る。それと同時に、彼の太ももまであるローポニーテールが揺れる。
「実は、この前、学校で使う本を探していたら、ギルバート家に伝わるレシピ本が出てきたんですよ。だから、『普段は作らない物を作ってみよう』と思ったのですが、私には字が小さかったので、眼鏡をかけることにしたんです」
「そっか、大変だよね……」
「ネシエ、そんなに気にしていませんから、気にしないでください」
「……うん」
ネシエは、まだ何か言いたそうに口を開くけれど、結局、何も言えずに口を閉じる。彼女の綺麗な銀髪がさらりと流れ、花の髪飾りにつくオレンジドロップが微かに揺れた。
その間にも、野菜を炒めているフライパンの端に入れた挽肉がジュージューと音を立てる。
「イレアル」
「はい」
「イレアルが料理を作るときに、眼鏡をかけるのは、すごく珍しいかも?」
「そうですか?」
「うん」
珍しく眼鏡姿のイレアルは赤ワインを投入し、火がつくのも気にせずにアルコールを飛ばし、用意しておいた調味料を加え、食材をさらに炒めていく。
ネシエは、いつもなら見られない婚約者の姿に、いつの間にか、ふわりと微笑んでいた。そして、彼女の口が自然と動き、透きとおるように綺麗な音を
イレアルはネシエの歌を聴き、頬を緩ませながら、目を閉じる。彼女は歌いながら、彼の笑う姿を見つめる。
イレアルは、ふっと目を開いて、先に塩、次に胡椒のグラスボトルを手に取り、サッと味付けしていく。
心地いい歌に合わせて料理を作るイレアルと、嬉しそうに歌うネシエは、とても幸せそうで、2人は「この日常が続いてほしい」と、そう思った。
KAC20248の作品 竜族の魔法使い 番外編 鈴木美本 @koresutelisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます