第276話 狐神降臨

「光り輝いて、レリア!」


 ローズの2体目はエースモンスター、天使と雪女を合成した天女のレリア。


「レリア、天女の書、天女の加護、天女の解放、天女の覚醒!」


 天女の書で攻撃力2倍、天女の加護で防御力2倍、天女の解放で全ステータス2倍、昇華スキルの天女の覚醒で全ステータス3倍。これにより、攻撃力と防御力が12倍、素早さは6倍まで上昇するが、


「ハク、妖気解放!」


 ハクの妖気解放によって全ステータス2倍のバフを付与する天女の解放が封じられる。

 それにより、レリアに付与されるバフは攻撃力と防御力が6倍、素早さは3倍となる。


 バフ込みのステータスで大きく相手を下回る場合、妖怪種の妖気解放はバフを封じ込めるのに使われることが多い。だが、ステータス差がそこまで無いと他のスキルを封じることもあるが、さすがに攻撃力と防御力のみ12倍などは放置できなかった。


「ハク、連続で白金狐火!」


 妖気解放でクールタイムを0にしたスキル、白金狐火。それに魔法攻撃スキルが尻尾の数だけ一度に放てるようになる白金九尾の業によってとてつもない数の白き炎がレリアへと襲い掛かる。

 それを更に上空へ飛ぶことで回避するも一度の九発の白金狐火を放てる上に連続で撃ち放題。

 三次元的な動きでフィールドを無駄なく使い、回避できているが、なかなか攻めに転じられない。


 ハクの攻撃を観察し、その軌道を見極める。

 そして、反撃の狼煙が上がる。


「レリア、セイクリッドブレイク!」


 一度に九発放てるというのは、かなり強い。それはナタフ戦でも証明されている。

 だが、人によっては的が増えてブレイク系スキルで破壊しやすくなるだけ。


 レリアが放ったセイクリッドブレイクは真っ直ぐにハクの放った白金狐火を捉えた。


 これにより、白金狐火は妖気解放の効果でクールタイムを0にしているが、破壊されたことで強制的にクールタイムに入る。クールタイムから明ければ、再びクールタイム0で撃ち放題だが、それまでは使えない。


「ハク、金色焔!」


「レリア、躱してアイシクルボール、アイシクルジャベリン、アイシクルランス!」


「ハク、白滅金色壁はくめつこんじきへき!」


 金色に輝く炎が九つあるハクの尻尾からそれぞれ一発ずつ放たれる。

 それを空中で躱し、氷魔法による攻撃スキルで反撃するもハクの目の前に突如として出現した金色の壁によって全て防がれる。


「レリア、神技・ダイヤモンドダスト!」


 ハクが神技・ダイヤモンドダストの攻撃範囲内にいる。それに大きな動きを見せない為、ローズは早々に神技を使う。

 その攻撃範囲は広く、今からでは回避も間に合わない。


 フィールド上、かなりの広範囲に小さな氷の結晶が降り注ぐ。

 あまり強力な攻撃スキルに見えないが、小さな氷の結晶がそれなりの威力を秘めており、無数に降り注ぐそれに被弾し続けると大ダメージは避けられない。


「ハク、神技・白滅金色はくめつこんじき結界けっかい!」


 黙って受けると大ダメージは不可避。回避、もしくは防御のどちらかを選択しないといけない。

 今回、回避は間に合わないので、実質防御一択。


 ハクをスッポリと覆う無色透明で金色に光り輝く結界。

 無数に降り注ぐ小さな氷の結晶が結界に当たり、瞬く間に溶けて消える。

 それを繰り返し、やがて神技・ダイヤモンドダストの効果が途切れ、ハクを覆う結界も消える。


「ハク、白金の尾!」


 大ジャンプでレリアの上を取り、空中で回転しながら白く輝く炎を纏った九本の尻尾を振り落とす。

 あまりにも無駄の無い動きに加え、予想外の攻撃だったこともあり、回避行動が間に合わず、もろにくらうレリア。


 そのまま叩き付けられた勢いのまま地面に衝突するかと思われたが、寸前の所で踏ん張り、地面への衝突だけは回避する。


 ハクは当然だが、空が飛べない。

 にも関わらず、大ジャンプでレリアを上を取り、攻撃してきた。これには意表を突かれたが、攻撃の後、地面に着地するまでの時間、無防備なことに変わりない。


「レリア、セイクリッドランス、セイクリッドジャベリン、セイクリッドキャノン!」


「ハク、神技・白狐びゃっこ!」


「!?レリア、神技・金剛…」


 空中にいる間、ハクが無防備なのはルートも承知の上。

 この間にレリアが攻勢に出るのも。


 重力による自由落下をも利用して威力の底上げをし、白く輝く炎を纏ったハクが真っ直ぐレリアへ突っ込む。

 通常スキルを全て神技・白狐で弾きながらレリアまで一直線に突き進む。


 この時、ローズは考える。

 この局面、神技・金剛不動壁を使って防御するのが最善策かどうか。

 神技・金剛不動壁を使えば、最小限のダメージに抑えられるが、果たしてその必要があるのかどうか。

 レリアは未だに回復魔法を使っていない。

 今は多少ダメージを受けているが、まだ回復魔法を使う程では無い。

 もし、神技・白狐の直撃を受けたら耐えられるかどうか?HPが全快なら間違いなく耐えられる。

 今の残りHPだとどうだ?確実に耐えられるとは言えない。


 こうしてローズが1秒にも満たない時間で思考し、導き出した最善策は、


「レリア、プチヒール、受け止めて!」


「!?」


 プチヒールでHPを全快させ、神技・白狐を受け止めるだった。

 これにはルートも予想外過ぎ、少し嫌な感じが顔に出ている。

 それほどまでにローズの選択はルートにとっては嫌だった。


 回復魔法が三つも使えるレリアを相手にハクが勝つには一撃でHPを削り切るしかない。

 その為には神技・金剛不動壁をどうにかこうにかしないといけない。

 これを早々に使わせないとかなり厳しいバトルになる。



 サスケでナタフを倒し、ある程度のダメージをレリアに与えてハクにバトンを繋ぐ。ルートが事前に考えていた勝ちのパターンはこれだ。

 サスケ相手にレリアが神技を使ってくれると尚良しだったが、現実は違った。

 サスケはナタフに倒され、万全の状態のレリアを相手にハクは勝たないといけない。


 遠距離からチクチク攻撃しても回復魔法を使われてHPは直ぐ全快になる。

 白金狐火による連続攻撃もブレイク系スキルで破壊されて再び強制的にクールタイムに入らされる。

 この状況を打開する策が思い浮かばないルート。

 いや、正確には一つだけこの状況を打開できる可能性を秘めた一手が存在する。

 だが、これは切り札。これを使い、状況を打開できなければ、負けは確実。

 ならば、使うしかない。


「ハク、狐変化!」


「!!ようやく。本番はここから。その前にレリア、ヒール!」


 このバトルの本番はここから。ローズがそう口にするほどハクの狐変化は可能性を秘めている。


 狐変化の発動と同時に白い煙に覆われるハク。

 煙によって完全に姿が隠れて見えない。


「神技・狐神降臨!」


 ここで三つ目の神技が発動する。

 狐変化は姿を変えるというそこまで強力なスキルでは無いが、この神技と組み合わせることで強力無比なスキルとなる。


 白い煙が晴れるとそこには九本の尻尾を持ち、頭には狐耳を付けた白髪ロングヘアーの男性がいた。


 神技・狐神降臨によってステータスが大幅に上昇し、スキルも一部変化している。その上、特定のスキル一つだけクールタイムを0にできる。

 これは強力だが、時間制限がある。

 10分。これを過ぎると自動的にハクは戦闘不能扱いになり、このバトルに負ける。


「ハク、連続で白金狐火、白金はっきん焔之拳ほむらのけん!」


 無数の白金狐火が飛来する中、一瞬にして間合いを詰めたハクによる怒涛のラッシュ!

 直ぐに地上から空中へと逃れたいが、ハクの猛攻の前にそれができない。


「レリア、アイシクルブレイク、セイクリッドブレイク、セイクリッドカウンター!!」


 ブレイク系スキルでクールタイムを0にしている白金狐火と白金焔之拳を破壊しようと試みる。

 だが、さすがに二度目、それに二つ同時に破壊するのは無理があった。

 先に放ったアイシクルブレイクで九つある内の一つを狙って白金狐火を破壊しようとするも、外してしまう。しかし、運良く別の白金狐火に当たり、破壊に成功。

 その後に放ったセイクリッドブレイクはハクの拳を捉えることができず、破壊は失敗に終わるも至近距離でラッシュを続けていたハクはセイクリッドカウンターを回避することができなかった。


「神技・ダイヤモンドブレイカー!!」


 セイクリッドカウンターにより、ラッシュが止められ吹き飛ばされるハクだが、数歩後退あとずさりしただけで踏みとどまる。そこから一歩、二歩と踏み込んで残りHPが1割を下回っているレリアに追撃を試みる。

 それと同時にレリアの神技・ダイヤモンドブレイカーによる無数の氷の礫がハクに襲いかかる。


 結果、先に攻撃に被弾した


『ハク DOWN』


 ハクのHPが0になった。

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