第275話 白面金毛九尾の狐

「ナタフ、アビスランス、アビスジャベリン、暗黒殲撃!」


 影分身を含め11体いるサスケの内、無作為に1体選び攻撃を仕掛ける。

 アビスランスとアビスジャベリンによって土遁・土釜は壊れ、そこを暗黒殲撃による六連撃が襲い掛かる。


「サスケ、土遁・土塊どかい、火遁・炎弾!」


「アビスブレイク、アビスピラー!」


 土遁・土塊を盾に暗黒殲撃を防ぎ、火遁・炎弾による反撃を試みるも瞬時にアビスブレイクで土遁・土塊を破壊され、暗黒殲撃による六連撃をまともにくらい、後方へ吹き飛ぶ。

 体勢を立て直す間も無く、アビスピラーによる追撃。更なる追撃をと行動に移そうとした瞬間、


 ドカーン!!


「!?」


 暗黒千雨を防ぐ為に土遁・土釜を展開し、隠れていた残る10体のサスケがそれを破壊して外へと出てくる。


「サスケ、水遁・水流槍!」


 出てくると同時にナタフ目掛けて十本の水槍が放たれる。

 四方八方から飛んでくる水槍。それを真っ直ぐ上に飛ぶことで回避するナタフ。

 しかし、この攻撃で先ほど暗黒殲撃をくらわせたサスケに更なる追撃ができなかった。

 とりあえず、サスケは空を飛べないので、ここで少し時間を稼いでナイトメアのクールタイムが明けるのを待つことに。

 だが、それを黙って見過ごすルートではない。


「サスケ、風遁・下降流!」


 1体1体が単独で使うとそこまで強力なスキルではないが、11体のサスケが同時にナタフ周辺に下降気流を発生させる。それも重ねて発動させることで合技と化し、通常では考えられないほどに強力な下降気流となっている。

 この中では満足に飛ぶことすらできない。

 徐々にその高度を落とすナタフを下で待ち構える11体のサスケ。


「ナタフ、神技・闇夜ノ断絶!」


「!?サスケ、下がって回避!」


 神技・闇夜ノ断絶を発動させ、下降気流に乗って勢いよく落下しているナタフを起点に闇が球体状に全方位に広がっていく。

 全体攻撃ではなく、範囲攻撃の神技。それ故に攻撃範囲にさえ居なければ、攻撃を受けることはない。

 11体のサスケが同時に繰り出した風遁・下降流が裏めった。ナタフの素早さに強烈な下降気流。それに加えて徐々に球体状の闇はその範囲を広げている。

 回避は間に合わない。しかし、ここで神技を使って迎撃すると影分身は神技を使えない為、サスケ本体が誰かを教えることになる。


 ナイトメアのクールタイムが明けるまでの時間稼ぎを封じる目的で使った風遁・下降流がこのような形で自分に牙を剥くとは思いもしなかった。


 このまま攻撃を受けるわけにはいかない。最善は神技を使わず、サスケ本体と影分身が最低限の犠牲で残ることだが、ルートにはどうしてもその方法が思い浮かばない。

 ならば、次善策を選択するしかない。


「サスケ、神技・秘伝忍法、空蝉うつせみ!」


 広がり続ける闇の球体は11体のサスケ全てを飲み込む。


 闇の球体が消えるとフィールド上にサスケは10体しかいない。

 消えた1体は恐らく、先ほど暗黒殲撃による六連撃をまともにくらった個体。

 その1体が消えても尚、まだ10体のサスケがいるということは消えたサスケは影分身。


「見つけた。それが本体。ナタフ、アビススラッシュ!」


 フィールド上にいるサスケを1体1体全て確認し、即座に本体が誰かを見抜く。

 神技を発動させた個体が本体だが、攻撃スキルではなく、防御スキルの発動だった為、ぱっと見では誰が神技を発動させたかわかっていなかった。

 だが、フィールド上にいる10体のサスケの残りHPを見て悟った。

 内9体は虫の息と言っても過言では無いが、1体だけHPがほとんど減っていない。

 つまり、防御スキルで神技を防ぎ、HPがほとんど減っていない個体がサスケ本体。


 サスケ本体を見つけて余裕が生まれたローズとかなりの博打に出て余裕など一切無いルート。


「サスケ、雷遁・雷虎!」


 一目散にサスケ本体へと突っ込むナタフ。それを阻止すべく10体の雷虎が解き放たれる。

 これを再び、上空へと逃れることで回避する。

 今度は下降気流ではなく、普通に地上から攻撃をするが、その全てを回避される。

 そして、ナイトメアのクールタイムが明ける。


「ナタフ、悪魔の囁き、ナイトメア!」


「くっ、」


 囁きナイトメアのコンボが決まったことで10体いたサスケが一気に1体まで減る。

 HPは残り3割ほどまで削られ、状態異常によるスリップダメージで刻一刻とダメージが蓄積する。

 回復魔法などが使えないサスケに残された時間はそう長くない。

 こうなれば、神技を使って一気に畳み掛けるほか選択肢が無い。


「サスケ、神技・秘伝忍法、千雪せんせつはなべん


「ナタフ、突っ込んで!」


 神技・秘伝忍法、千雪花ち弁の効果で雪でできた千の手裏剣が迫る中、真っ直ぐ躊躇すること無く突っ込むナタフ。

 いくらデバフでステータスが低下しているとはいえ、直撃すれば大ダメージは確実。

 直撃すればだが。


「神技・理への反旗!!」


 神技・秘伝忍法、千雪花ち弁が直撃する直前にナタフも神技を発動。

 だが、アタから見るとそのまま千の雪手裏剣に飲み込まれたようにしか見えない。


 一撃必殺の何かをローズは狙っている。ルートはそれに気づいているが、神技・理への反旗の効果がわからない。

 12神祭のレイラ戦の最後に見せた謎の神技と思われるが、どれだけ映像を見返してもその効果はわからないままだった。

 これにはアダルウィンやエルシーもわからないと口にした。

 ただ、一つの仮説として瞬間移動+アルファではないか?という考えを持っている。

 ダメージ反射の可能性も捨てきれなかったが、それだとナタフが攻撃を受けたであろう場所から移動していることに説明つかない。


 細心の注意を払ってナタフの動きを見る。

 今のルートならどんな些細な変化も見逃さないだろう。

 だが、それでは神技・理への反旗をどうこうできない。


 神技・理への反旗によって動けないナタフ人形がその場に残り、ナタフは存在を消し、サスケの正面まで移動する。この間、費やした時間は1秒。

 神技・理への反旗の効果時間は残り2秒ある。それだけあれば、効果が切れると同時に攻撃をする準備はできる。


 最後、神技・理への反旗の効果が切れると同時に存在を現したナタフの闇宵月によってサスケのHPは0に。


『サスケ DOWN』


「現われよ、ハク!」


 ルートの2体目は妖怪種の白面はくめん金毛きんもう九尾きゅうびの狐。

 純白の顔に金色の毛で覆われた九つの尻尾を持つ狐。妖狐が辿り着く最終進化の一つ。


「ハク、霊気解放、九尾の妖気!」


 霊気解放により、全ステータス2倍、九尾の妖気で更に全ステータス1.5倍になるが、霊気解放の効果に特定のスキル、今回は九尾の妖気の効果を2倍にする。

 従って、霊気解放により全ステータス2倍、効果が2倍になった九尾の妖気で全ステータス3倍と合わせて全ステータス6倍となる。


 召喚されたばかりのハクはまだデバフ・状態異常を付与されていない。

 ここでナタフの攻撃に被弾し、デバフ・状態異常を付与されるか否かは次に出てくるであろうレリア戦に大きな影響を及ぼす。

 ルートとしては速攻、ノーダメージでナタフを倒し、レリアを引きずり出したいところ。

 一方でローズとしては、まだ神技を一つ残しているので、それを使って大ダメージを与えつつデバフ・状態異常を付与できたらナタフはこれ以上無い働きをしたと言えるだろう。


「ハク、白金焔はっきんほむら白金狐火はっきんきつねび!」


「ナタフ、暗黒殲撃!」


 白金焔と白金狐火は共に魔法攻撃。つまり、闇属性の攻撃スキルなら魔法斬りができる。

 六連撃の暗黒殲撃なら二つの魔法を斬ってもまだ四連撃残している。

 それに距離を詰めないと残っている神技・暗黒閃舞が使えない。


「ハク、白金九尾のわざ!」


 一、二と白金焔、白金狐火とリズム良く魔法を斬り捨てるが、白金九尾の業によって魔法攻撃スキルが尻尾の数だけ一度に放てるようになり、追加で八つずつ白金焔と白金狐火をナタフへお見舞いする。

 どうにかこうにか暗黒殲撃の残る四連撃で四つは斬ることに成功するもまだ十二も残っている。

 これには四連撃の神技・暗黒閃舞を使っても対処は不可能。

 距離を詰め切れなかった時点でナタフに勝ち目は無かった。


『ナタフ DOWN』

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