第271話 海蛇
神技同士が衝突した末、先にHPが0になったのはシエル。
先に2体目のモンスターを召喚するのはアンジェラ。
「暴れて、レア!」
蒼い鱗に覆われた巨大な蛇、レアがフィールドに召喚される。
竜とは違い、手足や羽、それに角などは無い。
「レア、
レアは海蛇王で全ステータス2倍、蛇神の加護で更に全ステータス2倍と合計、全ステータス4倍。
今はこれだけだが、海蛇王は特殊なフィールド条件下でのみ更なる効果を発揮する。
そして突如として何も無い場所に出現した激流がカイザーに迫る。
攻撃範囲外への回避を即座に試みているが、攻撃範囲が広すぎるあまり回避は困難。
そして迫り来る激流に飲み込まれ、カイザーのHPは0に。
『カイザー DOWN』
シエル戦で全ての神技を使い、番長鉄拳・無間はブレイク系スキルで破壊され、クールタイムに入っている。この状況を打開できるスキルが今のカイザーには無かった。
「来て、リヴァイア!」
必要最低限の力でノアのエースモンスター、リヴァイアを引きずり出すことに成功する。
ここからがこのバトルの本番と言っても過言では無い。
「リヴァイア、ドラゴンフォース、海竜の加護、海神の竜、海竜の巣窟!」
リヴァイアはドラゴンフォースで全ステータス2倍、海竜の加護で攻撃力2倍にし、更に昇華スキルの海神の竜で全ステータス3倍となり、合計で全ステータス6倍、攻撃力のみ12倍となっている。
今現在、海神の竜を発動したこのタイミングでリヴァイアのステータスはレアを上回っている為、全ステータス6倍の効果は発揮されない。
海竜の巣窟でフィールドが海に沈めるが、この前の12神祭で見ているのでアンジェラに驚きは一切無い。
「リヴァイア、海竜の海地獄!」
海竜の海地獄によって海は大荒れ状態。だが、レアはその影響を微塵も受けている様子が見受けられない。
いや、正確には違う。フィールド上に展開された大荒れ状態の海に流されていないだけで影響は少なからず受けている。
そう、レアが召喚直後に使った海蛇王のスキル効果によって。
海蛇王はフィールド上に海が展開されている時に限って、海蛇王の効果でレアに付与されている全ステータス2倍のバフを全ステータス4倍に書き換える。
つまり、今のレアは全ステータス8倍となり、攻撃力以外ではリヴァイアをやや上回っている。
本来なら海神の竜で全ステータス6倍が見込める状況だが、あれは発動時のステータスで全てが決まる。
海神の竜と海竜の巣窟の発動順が逆であったならリヴァイアが大きく優勢となっていただろう。
ノアの中にほんの僅かだが、慢心があったことは否定できない。
相手はエルシーじゃない。それに秘策を授かっている様子も無い。
カイザーとシエルのバトルを通して強いけど、リヴァイアが負ける可能性は低いという考えがあった。
それが本来なら絶対にしないプレイングに繋がってしまった。
いつもなら海竜の巣窟でフィールドの展開、それから海神の竜を発動という順番なのだが、海竜の巣窟はまだ取得したばかりで使い慣れていないのも相まって最も慣れ親しんだ順番でスキルを発動してしまった。
ノアも即座に自分のミスに気づくが、起きてしまったことは変えようがない。
直ぐに気持ちを切り替える。
「レア、トーレントウェーブ!」
「リヴァイア、躱してマリンブレス!」
「こっちも躱して
リヴァイアの攻撃力の高さを鑑みると一撃でも受けたら致命的。徹底して回避しつつ、距離を詰めて確実に攻撃を当てる。
範囲攻撃のトーレントウェーブを回避するには、迫り来る波の上を取るしかない。
それさえわかっていれば、先んじてそこにレアを向かわせることもできる。
だが、先に上を取ったのはリヴァイアだった。
そして間髪入れずに放たれるブレス。
ギリギリの所で回避に成功し、リヴァイアの首に巻き付き、噛み付くことでリヴァイアの状態異常無効を貫通して状態異常が付与される。
「リヴァイア、海神の領域、マリンブラスト!」
自分の首周りは普通なら攻撃が届かないが、リヴァイアならどこにでも攻撃できる。
首に巻き付き、噛み付いているレアの背後から水の塊が出現し、放たれる。
「レア、後ろ!」
スルッと巻き付きを解いて下へ潜り、退避する。
だが、ノアがそれを黙って見過ごすわけが無い。
「リヴァイア、神技・マリンクラスター!」
海中で水が炸裂しているかのように弾けながら一直線に突き進み、レアへと放たれたブレス。
この距離、このタイミングでの回避は間に合わない。
「神技・ハイドロロア!」
神技による相殺しか選択肢は無い。
だが、攻撃力に差があり過ぎる為、相殺というよりも威力を殺すことしかできない。
レアの口からも同様にブレスが放たれ、一時は拮抗しているかに見えたが、徐々にリヴァイアの神技・マリンクラスターが押し始める。
そしてレアの放った神技・ハイドロロアごとレアを飲み込む。
海中で神技・マリンクラスターが炸裂したことで小規模の爆煙が舞う。そこから即座にレアが出てリヴァイアに向かって行く。
「リヴァイア、マリンスノー!」
「レア、ポイズンウェーブ!」
マリンスノーが爆煙から出てきたレアに当たると霞のように消え去った。
これにノアはやはりという思い。予め出てきたのが分身の可能性を考慮してマリンスノーの攻撃範囲に爆煙が入るように調整していたが、爆煙に届く前に中から放たれた
レアが分身を使うことはそれなりに知れ渡っていること。爆煙で姿が見えなくなったタイミング。
分身を使っている可能性は高いが、果たして出てきたのが分身なのかという疑問もある。
レアは時折、本体を囮にする手を使う。普通なら意味の無い一手だが、分身を使うことが知れ渡っているレアが使うと強力な一手になる。
危険が伴う方が分身、安全圏にいるのが本体という安易な考えで本体と思わしき方を攻撃すると実は分身でした。そして本体から手痛い反撃をもらうことがある。
だが、今回はどちらにも対応できるよう範囲攻撃を使った。
だが、一つだけ想定外が。ノアの知る情報よりも分身の数が多い。
今、1体消えたが、それでもまだ3体はいる。本体を入れたら4体。
リヴァイア対策の秘策。それがこの分身。
序盤に状態異常さえ付与できれば、後は時間との勝負。
元々は海神の竜で全ステータス6倍に上昇したリヴァイアを相手にする予定だった分、今の状況はかなり想定よりも楽。
「リヴァイア、マリンノヴァ!」
「レア、ヴェノムノヴァ!」
分身を手っ取り早く消し去るには全体攻撃を当てればいい。
リヴァイアの攻撃力ならもしかしたらという可能性があり、使ってみたが、レア本体と分身3体によるトーレントノヴァとポイズンノヴァの合技、ヴェノムノヴァによってマリンノヴァごとリヴァイアを飲み込んだ。
分身の数が増えただけで厄介さが極端に上昇している。
ここまでとは思っていなかったノアは自分の考えを改める。そして心が奮い立つ。
この強敵と正面から戦って勝ちたいという想いから。
早々にレア本体を見極めないといけないとリヴァイアのHPが0になってしまう。
レアの付与した毒属性による状態異常は闇属性によるそれよりも遥かに凶悪。
闇属性はデバフ・状態異常の付与に対し、毒属性は状態異常付与のみ。その分、凶悪な効果となっている。
「レア、散って!」
本体と分身を含めた4体のレアはそれぞれ四方に散る。
まとまっていると範囲攻撃や全体攻撃でまとめて撃破される可能性がある。
少しでも時間を稼ぐ為には散り散りになるのがベスト。
これを受けノアは攻撃をしないせず、守りに徹する。
1体1体の各個撃破を狙うのも一つの手だが、全力で逃げに徹するレアにそれは悪手と判断したからだ。
ならば、防御に徹する必要は無いが、これには別の思惑がある。
相手が欲を出し、動きたくなる状況を作る。
そのまま戦局が大きく動くことはなく、停滞した状況が続いたが、リヴァイアのHPが状態異常によるスリップダメージで半分を下回ったとこでノアが動く。
「リヴァイア、神技・マリンドライバー!」
4体いるレア(本体と分身合わせて)の内1体に向け、激流を纏ったリヴァイアが突っ込む。
この瞬間、アンジェラが動く。
「レア、神技・
レア本体から巨大な蛇の姿をした毒の塊が放たれる。
ノアはこの状況を作り出す為に敢えて神技・マリンドライバーを使った。
分身が使えるのは通常スキルのみ。神技は使えない。
リヴァイアの攻撃を受け、分身が1体霞のように消える。
そしてレア本体が放った神技・
海神の領域の効果であるフィールド上のどこからでも攻撃できるを利用し、マリンボルケーノを自身の真上から下に向けて放つことでギリギリのタイミングでの回避が間に合った。
「よし!リヴァイア、神技・
巨大な竜の姿をした水属性のブレスがリヴァイアの口から放たれる。
残りHPが半分を下回り、スリップダメージで刻一刻と減り続けているリヴァイアと半分をやや下回るくらいHPが残っているレア。
この状況、マリンボルケーノでレア本体に直接攻撃を狙うのもありだったが、間違いなくレアの神技・
そうなるとカイザーとシエル戦の時同様にどちらのHPが先に0になるかの勝負となってしまう。
リヴァイアの攻撃力なら神技でなくとも確実に削り切れるとはいえ、スリップダメージを考慮に入れるとかなり分が悪い。
勝利を手にするにはレアの神技・
そこで分身に向けて神技・マリンドライバーを放てば、必ずその隙を狙って来る。
もし、狙ったレアが偶然にも本体だったら迎え撃つ為に神技を使う。
違ったとしても残る3体から神技・
ここで反応できるかどうか。それがこのバトルの勝敗を分けた。
『レア DOWN』
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