第228話 ジャスパーの3体目

『天上庭園』のボス、天上の王キング・オブ・ヘブンを相手に10分と経たず全滅。

 これを受けて一度、ホテルに戻り会議室を借りて作戦会議をすることに。


「まずは情報の整理から。ボスの名前は天上の王キング・オブ・ヘブン。右手に身の丈ほどのハンマー、左手に杖を持っている。かなり攻撃的で一撃が重く、まず耐えられない。攻撃手段はハンマーによる雷属性の物理攻撃、もしくは杖による雷属性の魔法攻撃。あと高速移動のスキルもある」


 それだけ聞くと大して情報は掴めてないよな。

 やっぱりモンスターを代えるかは別としてもう一度偵察戦をする必要があるかな。

 それをするにしてもある程度の対策を考えておかないと今回の二の舞になるだけ。

 俺は空を飛べるモンスターを増やしてもいいんじゃって思うけどな。


「今回の反省点だが、今まで通りタロスが敵の攻撃を受け止め、そこを攻撃という形が作れなかった。それにその場合、どうするかが決まっていなかったのが大きい」


「はい!次もロイヤルナイト戦みたいにパーティーを更に細かく分けて最後のパーティーで倒すってのは無し?最初にデバフを付与して悪化させれば何とかなりそうだけど」


「うーん、莉菜さんの言いたいことはわかるけど、ちょっと厳しいかな。それをするにはあの猛攻を少数で凌ぎつつデバフ付与、悪化させる術を模索する必要がある」


「ああ、そっか。今のままだと状態異常を悪化させる前に倒されて無駄にこっちの数が減るか」


「じゃあ、セレーネの神技・無垢の変貌で雷属性を封じるのは?」


「そこに気づくとはさすがウィリアムくん。でも、それはできない。そもそも神技・無垢の変貌に特定の属性を封じる効果は無い。あれはロイヤルナイトが光属性と闇属性のスキル、それに光属性付与と闇属性付与を切り替え使っていたからできただけで本来の効果は通常状態に戻して封じる。敵モンスターのバフ、味方モンスターのデバフ・状態異常をリセットしてバトル中に永続で封じるだけだから」


 え、だけじゃないです!めっちゃ強い!!

 だってバフを付与しても解除されて、もうバトル中は付与できない。

 PvPだと開幕と同時にバフを付与する人が多いから知らないとセレーネ相手に手も足も出ず負けるんじゃ。

 でも、天上の王キング・オブ・ヘブン相手には使えないかな。

 ロイヤルナイト戦は偶然にも使えただけと考えるべきか。


「今回はスキル封印とか考えない感じなら私はシルヴィーユでいいかな?」


「一つ封じても大して意味無さそうだし、それでいいと思う。私はどうしよう。ノワールとミザリー」


 シルヴィーユを選択するってことは神技・ミラージュインパクトやリ・ミラージュで手数が増える。

 ノワールならデバフ・状態異常の悪化、ミザリーならより多くのダメージって感じか。

 確かにどっちの方がいいんだろう?


「ロザリアはノワールで頼む。長期戦になるとデバフ・状態異常の付与はバトルに大きく影響する」


「うん、りょ」


「それなら俺はドランバードじゃなくてアルバスだな」


 薫先輩はドランバードをアルバスに代えるのか。それだと俺もブルーをリーフィアに代えるべきかな。


「あ、蓮くんはブルーのままでお願い。これ以上地上の戦力を減らすわけにはいかないから」


「わかりました」


「あ、僕はタロスからヴェルに代えます。タロスの素早さだと厳しいから」


「蓮くん、そういうわけだから」


 プルプル!プルプルプル!!


 先に輝夜さん、それとたぶんブルーにも釘を刺された。

 えっと、空中で戦うことが前提のモンスターはノワール、ファム、ヴェル、アルテミス、ユニ、エルナ、カーラ、アルバスと8体いる。

 これでブルーをリーフィアに代えたら空中に9体、地上に4体とより一層バランスが悪くなるな。


「バランス以前に地上戦力を疎かにはできない理由がある。恐らくだが、天上の王キング・オブ・ヘブンは地上のモンスターを全て倒してから空中にいるモンスターに対処している」


「あ、やっぱりそうですよね。これってロイヤルナイトの視界に入ったモンスターにタゲを移すあれと同じっですかね?」


「地上にいるモンスターにタゲが集中、いなくなれば空中にいるモンスターに移る。似たようなものだろうな」


 郁斗も気づいてたんだ。

 地上のモンスターがドレイクだけになっても空中にいるモンスターは狙わなかったからな。


「それに攻撃パターンもかなり単調。地上にいるモンスターにはハンマーによる攻撃と落雷だけ。あの高速移動は厄介だけど、わかってたら対処は容易。倒せない相手じゃない」


 プル!?


「……」


 さすが輝夜さん。すっごく簡単に言うな。

 高速移動もわかってたら対処は容易。その言葉が原因かな、ブルーがプル!?ってなってる。

 よしよし、なでなで。相手は輝夜さんだからね。

 気にしない、気にしない。


 プルプル〜!


 よし、これでブルーが静かになったし、話に集中できる。


「そういえば、ジャスパーはラスティーヌ使わないの?天上の王キング・オブ・ヘブンと相性が良さそうだけど」


「連携面で心配はあるが、ラスティーヌの名前を出すということは問題ないということだな?」


「もちろん、だからドランバードじゃなくてブルーを残すの」


「なるほどな。それなら問題ない。俺はラスティーヌでいこう」


 全然、話が見えない?何故か出てきたブルーの名前、ドランバードじゃなくてブルーを残すという輝夜さんの発言。

 どうやら俺の腕の中でプルプル〜としてた子はドランバードよりも自分の方が頼られていると勘違いしているのか誇らしげにプルプルしてる。

 絶対に違うからね、ブルー。プル?じゃないから!


 それにしてもジャスパーさんがドレイクからラスティーヌに代えるとは思わなかった。

 ドレイク、ライズに続くジャスパーさんの3体目のモンスター、ラスティーヌ。

 剣を使うアテナやドレイクと違い、槍を使うモンスター。

 俺が初めて見た輝夜さんとジャスパーさんのバトルではアテナと激闘を繰り広げていたからアテナと同じくらい強いんだろうな。


「槍の腕前でラスティーヌの右に出るモンスターはいない。強いから安心して!強力な攻撃には強力な攻撃を、高速移動には高速移動をってやつね!」


 あの輝夜さんが槍の腕前ならラスティーヌが一番って断言するほどなのか。最後のはよくわからなかったけど。

 でも、なんか最近になってジャスパーさんのモンスターってドレイクより他のモンスターの方が強いんじゃって思えてきた。


「あ、輝夜さん、槍はラスティーヌなら剣はアテナが一番なんですか?」


「グハッ!」


「アテナ、そんなわざとらしい演技はやめなさい。ごめんね、驚かせて。話を戻すと今のアテナを見てわかる通り、剣の腕で一番はアテナじゃない。これ人によって意見が分かれるけど、私はソフィアのランスロットに一票かな」


「いや、意見が分かれるのは二番目以降だろ?一番は満場一致でランスロットだ」


「あれ、そうだっけ?まあ、アテナやドレイクじゃなくてランスロットが一番ってこと」


 ソフィアさん、俺が思ってたよりもずっと凄い人だった!!

 親しみやすいあの雰囲気に騙されたらダメだ。


 そして、いろいろと話が脱線しつつも編成は決まった。


 第1パーティー

 アテナ、ブルー、ヴェル、ファム


 第2パーティー

 ラスティーヌ、コン、アルテミス、ユニ


 第3パーティー

 ノワール、アルバス、シルヴィーユ、エルナ、カーラ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る