第227話 VS天上の王 偵察戦

 昨日はいろいろあったけど、切り替えて今日はボス戦に集中する。

 あとジャスパーさんから『天上庭園』がBランクへの昇格条件の一つを満たせるという話が郁斗たちにもさっき伝わった。その時の輝夜さんは「あれ?伝えてなかったっけ?」って感じだった。

 それから昨日、ソフィアさんたちが来たことは輝夜さんには内緒になってる。知れば、輝夜さんも『竜峰』攻略メンバーに加わりたくなるからだとか。

『天上庭園』とは違って、12神からの参加者はソフィアさんだけみたいで運営に申請も出さないらしい。


「んじゃ、『天上庭園』さえ攻略しちゃえばあとはCランクダンジョン三つ攻略の条件だけになるな。それはめっちゃ助かるわ!」


「まあ私たちはAランクへの昇格条件を満たせるわけじゃないけどね~」


「そこは仕方ないでしょ?Bランク昇格条件はダンジョン攻略だけど、Aランク昇格条件はそれに加えてAランク以上のプレバトルでバトルで勝利しないといけないんで」


「うん、あれ大変。Bトーナメントで優勝してAランクプレイヤーとバトルする権利を獲得するか勝てそうな知り合いに頼むかだけど、頼みづらい」


 先輩たちは先輩たちでまた苦労してるみたいだな。ゲームのサービス開始当初は違ったんだろうけど、今のAランク昇格条件はAランクダンジョン一つ攻略、Aランクプレイヤーとのバトルで勝利するの二つだからな。

 ていうか先輩たちって既に他のAランクダンジョンを攻略済みなんだよな。ある意味そこがすごい。

 俺もAランク昇格を見据えるならどこのAランクダンジョンを攻略するか考えておかないとな。『天上庭園』を攻略できても実績はBランク昇格で消えるしな。


「さて、気を取り直してボス戦に切り替え!ロイヤルナイトみたいな特殊な感じかもしれないから今日のとこは偵察戦のつもり。勝てそうならそのまま勝っちゃおうって感じでお願い!」


「今日はロイヤルナイト戦とは違い、パーティー編成を元に戻し、総当たりで戦う。他のモンスターとの連携はいつも以上に意識してくれ」


 プル、プル、プル、…プルプル!


 あ、ようやく二度寝から起きたな。昨日、お昼過ぎにピナが起きると同時にリーフィアから解放されてピナをはしゃいでいて疲れてるにしてもね。もうちょっと早く寝ようよ。

 そういえば、五感が無くても寝るのか。あ、いや、五感が無くても脳は関係ないから脳を休める為に寝るのか?てか、ブルーにそんなの存在するのかな。


 プル?プルプル


 もう考えるだけ無駄だと思わないとな。よしよし、なでなで。本当ならリーフィアを出したかったけど、リーフィアからブルーも反省してるから気分転換も兼ねて今回もブルーでって頼まれなかったらここにいないからね。

 後でリーフィアに感謝してよ。


 プル〜


 みんなの準備が整ったのを確認し、ウインドウで最奥のボス部屋を選択する。

 階段を登って2Fに進み、あの面倒な道を進まなくても1F部分に出現する。これは助かる。


『天上庭園』のボスは天上の王キング・オブ・ヘブンという頭に王冠を載せた2メートルくらいの大男。左手には黄色い宝玉の付いた木の杖、右手には身の丈ほどの黄色いハンマーを持っている。

 盾とかを装備していないからロイヤルナイトと同じでかなり攻撃的に来るのかな。

 それとも左手の杖で防御に特化した魔法とかスキルを使うバランス型かな。

 攻撃型かバランス型かは戦えばわかる。


「タロス、挑発、重戦車、鉄壁、装甲復活、チャージカウンター、リリースヒーリーグ!」


「ファム、ドラゴンフォース、聖竜の加護!」


「カーラ、悪魔の祝福、悪魔の囁き、ナイトメア!」


「ノワール、ドラゴンフォース、ブラックラグナロク!」


「アテナ、戦の乙女、乙女の祈祷、降臨・戦乙女之天穿剣!」


「ドレイク、ドラゴンフォース、火炎竜王の誇り!」


「シルヴィーユ、エルフの加護、妖精の羽ばたき!」


「ドランバード、ドラゴンフォース!」


「コン、稲荷狐の祈り、稲荷狐の祟り、影分身、陽炎、蜃気楼、降臨・稲荷神社、参の型、壱の型!」


「稲荷流狐剣術、参の型 夜桜、壱の型 迦具土!」


「ブルー、雷霆!」


「エルナ、スターフレイムショット!」


「アルテミス、シャインストーム!」


「ユニ、ユニストーム!」


 ブルー、エルナ、アルテミス、ユニはバフとかが付与できないからいつも通り攻撃だけ。

 ちゃんとデバフ・状態異常の付与はできているし、ここまでは順調。

 それにロイヤルナイト戦を糧に敵がバフを付与するならすぐに誰かしらが解除する。

 基本的に絶空の発動条件を満たす為に郁斗がやる方針。


 だが、順調に思えたのも束の間。

 左手の杖の先端部分にある黄色い宝玉が光り輝くとタロスに雷が降り注ぐ。

 そしてタロスは回復する間も無く、一撃で倒される。


「!!一撃か…。これは回避一択だね」


「みんな攻撃は全て回避して!当たれば一撃でやられると思って!」


 直ぐ輝夜さんが全体に指示を出してくれる。

 アテナやドレイクならと一瞬思ったけど、ここにはステータス上限が100になるギミックがある。アテナはリヴィングウェポンのあれがあるけど、輝夜さんは攻撃力と素早さにSPを多く振っているから防御力はそこまで上がっていない。

 それにバフを盛ってもタロスの防御力の方が上。

 そのタロスが一撃ってことは誰が受けても結果は同じ。


 誰もが少し距離を置き、引き気味に戦おうとした所を的確に突かれる。

 雷を纏った天上の王キング・オブ・ヘブンが一瞬にしてドランバードの目の前に出現。


 プル!


「!ドランバード、仙竜爪・天!」


「シルヴィーユ、イグニスアロー、シューティングスター!」


「アテナ、祈りの剣!」


「てりゃあーーーー!!…あれ?」


 咄嗟にドランバードに防御スキルを使わせることに成功し、天上の王キング・オブ・ヘブンの動きが止まったとこを遠距離から上半身をシルヴィーユが、近距離から下半身をアテナが攻撃する。

 他のモンスターはいつでもフォローできるよう待機。

 だが、シルヴィーユとアテナの攻撃でも天上の王キング・オブ・ヘブンはビクともしない。

 そしてハンマーによる攻撃で仙竜爪・天が破られた直後、ドランバードには落雷が降り注ぐ。


 タロスに続き、ドランバードも倒される。

 防御スキルすら意に介さない二段構えの攻撃。それにシルヴィーユとアテナの攻撃でビクともしない。


 さっき雷を纏った高速移動からのハンマーによる攻撃があったけど、電光迅雷に似てるな。ブルーがプル!って反応してたし、間違いないと思う。

 距離を置いても一瞬で詰められる。なら空を飛んでれば…。


 ドランバードを倒した直後、すぐ近くにいたアテナと数回ハンマーで剣と打ち合うが、杖で剣を弾いてからハンマーを振り下ろす。激しい雷とともに振り下ろされたハンマーによる攻撃にはやはりアテナでも耐えられなかった。


 時間が経つにつれて1体ずつ各個撃破されていく。

 空中にいても雷属性の魔法がバンバン飛んできて、やがて逃げ場が無くなり、倒される。

 そうして10分と経たず、全滅する。

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