第226話 来訪の目的
あ、そっか。ソフィアさんの言う通りだな。確かにブルーは世界中どこを探しても唯一無二のスライムと言って過言じゃない。そう考えると俺の夢ってもう叶ってるのか。
そうなると今の夢って何だ?
(君にはカグちゃんを始めジャスくん、アダルくん、シグくんといった実力者が一目置いている。それに何故か接点の無い筈のレオくんまでも。悪いけど、私には君がそこまでのプレイヤーなのか確信が持てない。だから教えて、君のことを)
「正直、わかりません。考えてもこれ!ってのが思い浮かばないっていうか」
「うーん、例えばさカグちゃんを超えるとかは?」
「カグちゃん?…あ、輝夜さんのことですか?」
「そうそう」
(意地の悪い振りだな。その答えはおまえが一番望んでいないだろ。さあ、どう答える?)
「俺は輝夜さんを超えるとかそんな大それたこと考えたこと無いです。このゲームを始める切っ掛けとなった人で、この人みたいにバトルしてみたい、ずっとそう思い続けてきたので」
「!なーんだ。ちゃんとあるじゃん!」
「え?あるって何がですか?」
「何って気づいてない!?天然?まあいいや。今の夢。カグちゃんみたいにバトルしたいんでしょ?わかるよ、その気持ち。同じ12神の私もカグちゃんのガチバトルはかっこいい!って思っちゃうからね。うんうん」
何だろう?ソフィアさんってすごい掴み所が無い人だな。質問の意図もイマイチわからないし。
「どうやら俺が口を出す必要は無いみたいだな」
「うん、ありがとねジャスくん。さてと
「??えっとランク変動型の『疾風の剛翼』と『侏羅の大森林』の二つです」
「となると既にモンスターは3体いるし、『天上庭園』さえ攻略すれば、あと一つCランクダンジョンを攻略するだけでBランクに昇格できるね」
ん?Bランク昇格?え、どういうこと?
「あの『天上庭園』ってレイドを組んで挑戦しているから攻略しても昇格条件を満たしたことにはならないんじゃ…」
「え?」
「え?」
「鬼灯くん、確認だが、輝夜から『天上庭園』攻略の要請を受けた時にBランク昇格条件に関する話は挙がったか?」
「いえ、何も無かったと思います」
すると、ジャスパーさん、ソフィアさん、アダルウィンさんと苦笑いしつつ頭を抱えていた。
この雰囲気、話の流れから察するに輝夜さんは何かしらの説明を怠ったことになるのかな。
それが恐らく今、話に挙がったBランク昇格とその条件に関係している。
「カグちゃん!しっかり説明しなよ!なんか私がバカみたいじゃん!!」
ソフィアさんの心の底からの叫び。もちろん当の本人はここにいないから届く筈もない。
その頃、輝夜はというと
第四層エリアボス、ロイヤルナイト戦の映像を見返していた。
これはゲームシステムを利用し、予めバトルを録画していたから今こうして見ることができる。
今は最奥のボス戦に向けて少しでも他のモンスターの動きや癖を掴んで連携に綻びが出ないように研究中。
「カグちゃんの代わりに私が説明するね。ジャスくん、後で他の子たちにも確認しといて。たぶん、鬼姫はみんな知らないと思うから」
「すまない。手間を取らせる」
「まあ、カグちゃんだしね。こういうこともあるよ。蓮くんの言うことは概ね正しい。レイドを組むデメリットはダンジョンを攻略しても昇格条件を満たした扱いにはならない。これはレイドを組む上で把握しておかないといけない大原則だけど、例外はある。未だ攻略者0の四つの世界最難関ダンジョン。これらのダンジョンに限っては初回攻略ボーナスがある。レイドを組んでの攻略でも昇格条件を満たせるとか」
「それってもしも『天上庭園』を攻略できたらBランクへの昇格条件の最難関、Bランク以上のダンジョン攻略を満たした扱いになるってことですか?」
「そう!そしたら後はCランクダンジョンを三つ攻略するだけ!蓮くんの場合はあと一つね。それで晴れてBランクプレイヤーの仲間入りさ!!そしたら次はAランク!あと1年もあればいけるよ!」
その話が本当なら正直、めっちゃ助かる!だってBランク以上のダンジョン攻略、この条件が一番ネックになってたから。とりあえず、Cランクダンジョンを三つ攻略してから考えようとか思ってたけど。
でも、1年でAランクはたぶんというか絶対に無理です。
「さてさてカグちゃんのせいで話が逸れちゃったから戻すね。私もアダルくんも君の連絡先知らないからさ、今日は無理言ってジャスくんに仲介してもらったの。そんで折り入ってお願いがあるの」
お願い?俺とは面識の無いソフィアさんが?一体どんなお願い何だろう?
「ディアボロス、ソフィア海賊団共同主催、『竜峰』攻略メンバーに鬼姫にも加わって欲しい!」
「!?『竜峰』って現時点での彼らの実力では、」
「ジャスパー、おまえの言いたいことはわかる。何も今すぐじゃない。こっちもおまえらのやり方を参考にさせてもらってるだけだ」
「私とアダルくんの間で現状、『竜峰』を攻略するのは不可能と断定した。だから時間を掛けて集めるの。理想の攻略メンバー
アダルウィンさんは今すぐじゃないと言った。ジャスパーさんたちのやり方を参考にする。そしてソフィアさんの時間を掛けて集めるという発言。
それって育つのを待つってこと?いや、なら現時点で強いプレイヤーを集めてレイドを結成して挑戦すればいいよな。あ、もしかして『天上庭園』みたいなギミックが存在して強いプレイヤーを集めただけだと攻略が厳しいのかな。
んーでも、55人っていうのも気になるけど、いろいろと情報が足りないから全然状況が掴めない!
「蓮くんは『竜峰』についてどこまで知ってる?」
「えっと、世界最難関ダンジョンの中でも最も攻略難易度が高いとしか」
「うん、その認識で正解。『竜峰』は全部で10のエリアが存在してそこにはエリアボスしかいない。つまり、普通のモンスターはいない特殊なダンジョン。更に細かく言うとエリアボスを倒さなくてもその横をスルーして次のエリアには行けるけど、ボスに挑戦するには幾つか条件を満たす必要がある。これが現時点で『竜峰』が攻略不可能な理由」
エリアボスを倒さなくても次のエリアに行けるのか。そんなダンジョンが存在するなんて初めて知った。
でも、ボスに挑戦するには幾つか条件を満たす必要があって、それを満たすのが難しい感じかな。
「蓮くんも知ってるよね?エリアボスは倒してから30分後に復活するって」
「はい、知ってます」
「そして『竜峰』は10体のエリアボスを誤差30分以内に倒さないと攻略できない」
「……」
「実際に1体だけ倒して他はスルーして最奥のボス部屋の前まで行ったけど、挑戦できなかったし、頑張って2体エリアボスを倒してもその証は1体目を倒してから30分ほどで消えたから間違いないと思う」
10体のエリアボスを誤差30分以内に全て倒す?俺の聞き間違いかな?
普通に考えて1体3分ペースで倒せってことでしょ?いや、それでランク変動型は攻略不可能でしょ!
「なるほどな、理解した。だから55人集めようとしているのか。5人1パーティーで各エリアボスを1体ずつ担当してもらい、集めた中で最も強い5人が最奥のボスへと万全の状態で挑戦する。だが、それだけの数が集まるのか?」
「そうなの、問題はそこ!」
あ、なるほど。ジャスパーさんの話を聞いてソフィアさんとアダルウィンさんがやろうとしていることがやっとわかった!
エリアボスとは戦わなくても次のエリアに行ける。これを利用して10のパーティーでエリアボスを誤差30分以内で各個撃破して万全の状態で待機していたパーティーが最奥のボスに挑戦するのか!
「正直、今は数が全然!足りない。エリアボス1体1体が超強いから1人1人が12神とまではいかなくてもそれに近い実力はいる。そんなわけで将来有望どころか
「『天上庭園』攻略と違って攻略開始の日程とかは何も決まっていない。そもそも55人を集めるとこからだからな。またその時が来たら連絡する。その為にも連絡先を交換してくれないか?
「蓮くんたちは君たちのペースで上を目指してね。こっちも全エリアボスに関する情報収集などやるべきことは山積しているから~」
こうして俺は成り行きでソフィアさん、アダルウィンさんと連絡先を交換した。
そして、別れ際にはソフィアさんがとにかく謝って来た。『天上庭園』のボス戦を控えた前日の休みに押しかけたことを気にしてるみたいだった。
そういえば、最初の自己紹介の時も同じこと言ってたな。驚きの余り、あんま頭に入ってなかった。
まあ、俺としては暇だったし、『天上庭園』攻略でBランク昇格条件の一つを満たせるって知れたしで寧ろ感謝してるくらいと伝えたら「ホントにカグちゃんの後輩!?」って驚かれたよ。
「それにしてもおまえが彼のことを名前で呼ぶとは少し意外だ。己がその実力を認めた者しか名前では呼ばないおまえが途中で呼び方を変えるとはな」
「そうかな?妥当な評価だよ。私はカグちゃんに『天上庭園』での蓮くんの戦いの映像を見せてもらったしね。ただ、確信が持てなかっただけだよ。でも、今なら確信を持って断言できるよ。蓮くんはアダルくんと同じとこまで辿り着くんじゃないかな」
「!!ラグニアか……。いや、ブルーか。どうだろうな。ロードと同じ**の1体とは限らんぞ」
「まあそれはいずれわかるよ。それに今日話してみてカグちゃんたちが一目置くのもわかった気がするよ。レオくんだけ意味わかんないけど」
「
「!?そんなに凄いの!?私、まだ見てない。後で見ないと!あ、どっちが勝ったとかのネタバレ禁止ね!なんとなくわかるけどさ」
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