第225話 今日のブルーは甘やかし厳禁?
「莉菜、おつかれ。最後、ホント助かったよ。でもさ、なんか雰囲気的にエルナを犠牲にするのかと思ったよ」
「そんなわけないでしょ。ちゃんと神技・スタースフィアで防ぐつもりだったし。蓮、完全に忘れてたでしょ、神技・スタースフィアのこと」
「そりゃあ、普段あまり使ってないからさ」
「それは否定しないけど」
その後、郁斗たちも混ざってもう何が何だかわからなくなった。
最終的にブルーがプルンと俺の腕の中にジャンプして収まるのと同時に場も和やかになり、第5層を軽く確認だけして今日は帰ることになる。
だけど、俺たちの目の前に標示されたウインドウに第5層という文字は存在しなかった。
そこに存在したのはボスへ挑戦するかどうかの選択肢。
「『天上庭園』は全4層のダンジョンってことか。いよいよ次がボス戦だ」
「ようやくここまで来られた」
ジャスパーさんと輝夜さんは既にボス戦へと意識を切り替えてる。
いや、ちょっと早すぎません?
でも、遂にディアボロスですら攻略できなかった『天上庭園』のボスモンスターに挑戦できるんだな。
「明日は休みにしてみんな疲れを取って明後日のボス戦に備えて。まあ、いきなり攻略戦を始めるわけじゃないけど」
「今回同様に最低でも一回、多ければ三、四回は偵察戦を行うことになる。そのつもりでいてくれ」
そうして今日は解散となり、各々ホテルに着き次第、自分の部屋へと戻って行った。
俺はというといつもなら部屋ですぐにARフィールドを展開しようかと思ったけど、さすがに今日は疲れた。ブルーに構ってる余裕は無いし、展開するのは辞めておこう。
その頃、ブルーはモンスターファームにてプルプルとARフィールドが展開されるのを待っている。
それもこれも第四層のエリアボス、ロイヤルナイト戦の最中に蓮が心の中でブルーを褒めてあげないとと思ったことを本能で感じ取っていたからだ。
「ブルー、主はきっとお疲れです。今日はもう休まれてると思いますよ」
プル!?プルプル!
「今日は諦めて下さい。主に甘えてばかりではいけませんよ」
プルプル、プルプル!!!!
「主との約束、ですか?それならピナとの約束はどうしたのですか?今日の武勇伝を語るのでは?今か今かと待ってますよ」
プル!?プルプルプル、プル!
「ピナの名前を出した途端にこれですか。まあ、いつも通りのブルーですね」
プルプル、プル
ピヨ!ピヨピヨピヨ
その後、一晩中ブルーはピナに今日の武勇伝を語った。ピナの目は一晩中輝いていたとか。
当然、翌朝になってそれを知ったリーフィアからブルーはお説教されることとなる。
自分が夜更かししたから大好きなお姉ちゃんが怒られていることを知らないピナはベッドでぬいぐるみに囲まれながらスヤスヤと幸せそうに寝ている。
うぅーー、よく寝た。
何か忘れてるような気もするけど、まあ忘れるってことは大して大事なことじゃないってことだよね。
とりあえず、顔洗って朝ご飯を食べに行こう。
みんなまだ寝てるのか、それとも俺より早く起きて朝食は済ませてるのかレストランに知り合いは誰もいない。
食パン1枚に目玉焼き、ベーコンを乗せる。今日は軽めにいこう。
食べながらスマホでいろいろ見てるとあるモンスターニュースが目に入った。
『あわや全滅!その窮地に機転を利かせ勝利に導いた男、鬼灯蓮!!!!』
……違う。絶対にこれは違う。
この記事ってたぶんプロフェッサーのギルマスが書いてるよな。つまり、誰かがその人に
考えられる心当たりは1人しかいないな。
俺は心当たりのある人にメッセージを送る。
もうここまで来たらド直球に。
そしたら秒で返信が来たよ。そして案の定、輝夜さんだった。
でも、輝夜さんが言うにはちゃんと時系列順に誰がどう立ち回ったか詳しく伝えた結果、このニュースになってるみたい。
当事者からすると何も間違ったこと書いてないと思うけど、このニュース見た人は勘違いするよね〜と割と他人事のように。そしてこればかりは輝夜さんですら何もできないみたいで、諦めるよう言われた。
最後に輝夜さんからもっと強くなれば、気にならなくなるって。いや、言いたいことはわかるけど、そんなに簡単じゃないです。
その後、部屋に戻ってARフィールドを展開すると朝からベットでスヤスヤと寝ているピナ、何やら萎れてるブルー、ブルーを睨みつけているリーフィア、我関せずとスルーしているラグニア。
え?何この状況…。
ちょっと聞くのが躊躇われたけど、リーフィアに何があったのか確認するとどうやらブルーがピナを夜更かしさせたことが原因のようだ。
毎日、必ずこの時間までにピナを寝かせるという取り決めがあったにも関わらず、それを破った罰として反省中らしい。
うん、これは弁明の余地は無いな。
「ブルー、しっかり反省するんだよ」
プル!?プルプル!
さてと、ARフィールドは解除してブルーのことはリーフィアに任せよう。
しばらくというか、少なくとも今日のブルーは甘やかし厳禁だな。うん。
んー、今日は1日暇だからブルーに構ってあげようかと思ったけど、思わぬ形で予定が空いたな。
何しようか考えたらジャスパーさんからメッセージが届く。
あ、そういえばこの間一緒に遊んだ時に連絡先を交換したっけな。
また遊ばないかってお誘いかな。だとすると嬉しいな。
「鬼灯くん、今から時間取れるか。君に会いたい奴らがいるのでな」
俺に会いたい人?誰だろう。まあ、ジャスパーさんの紹介なら変な人じゃないか。
大丈夫とメッセージを返すと今から会議室に来て欲しいと返ってきた。
会議室に入るとジャスパーさんの他にもう2人。
お2人ともよく知っている方だ。
1人はセミロングの銀髪女性、12神序列8位、ソフィア・ロドリゲスさん。
もう1人はディアボロスのギルマス、アダルウィン・ミュラーさん。
アダルウィンさんはあれかな。『天上庭園』攻略に関する何かかな。
ソフィアさんだけ検討もつかない。
「いやあー、疲れてるとこごめんね!上手くいけば明日には『天上庭園』攻略でしょ?君を確実に捕まえられるのが今日しか無くてさ。とりあえず、自己紹介だけしとくね。私はソフィア海賊団のギルマス、ソフィア!よろしくね」
「この前は自己紹介してなかったな。改めてディアボロスのギルマス、アダルウィンだ」
「あ、えっと鬼灯蓮です。よろしくお願いします」
ホントに意味がわからない。今、思い出したけど、ソフィアさんってギルドメンバーを引き連れて世界最難関ダンジョンの一つ『竜峰』を攻略してるんじゃないの?
「先に俺から要件を済ませよう。…ありがとう!!君のおかげで『天上庭園』が攻略不可能じゃないと証明された。ギルメンたちのあの時の頑張りが無駄じゃなかった」
「いえ、そんな。大したことしてませんよ」
「謙遜だな。輝夜やジャスパーから君の活躍は聞いている。モンスターニュースはちょっと、いやかなり盛っているが、事実君は活躍している」
あ、あれを盛ってるって理解した上でですか。
でも、俺は俺にできることを精一杯やってるだけだしな。
「今は精一杯くらいついてるって感じか?それが普通だ。CランクでAランクダンジョン攻略を果たそうとしているわけだからな」
なんだか初めていろいろと理解してもらえた気がする。
ソフィアさんもすっごくうなづいてる。
はあ、なんか緊張がどこかへ吹っ飛んだ感じ。
「うん、良い感じに緊張が解れたね!アダルくんに先譲って正解!それでここからが本題。わざわざ休みの日に来たのもこの為。
え、ギルドとしての目標?
莉菜がギルドを作ろうと話を持ち掛けてくれて、いろいろあってギルマスになったけど、ギルドとしての目標。考えたこと無かったな。
でも、強いて挙げるなら
「特に決めてないです。でも、俺はギルマスとしてみんなの夢が叶えられたらなと思ってます!」
「ふーん、そっかそっか。夢か。じゃあ聞くけど、君の夢は何?(日本人だしカグちゃんを超えるとかかな。だとしたらちょっと期待外れ)」
「俺は最初に召喚したモンスターがブルーでした。正直、ちょっとガッカリというか思うとこはありましたけど、その時に夢ができました。ブルーを俺だけのオリジナルモンスターに育てることです」
「!へえ、ちょっと意外。でも、その夢ってもう叶ってるんじゃない?世界中どこにもスライムをここまで強く育成したプレイヤーは存在しないよ~。ってことはその夢は過去の夢。私が聞きたいのは今の夢」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます