第223話 VSロイヤルナイト ミザリー&アルバス&ユン

 輝夜さんとジャスパーさんが有言実行を果たし、ロイヤルナイトのHPを半分ほど削った。

 セレーネが倒された直後に上空から3体のモンスターが投下される。


「ミザリー、神技・ラース、狂戦士化、怒りの化身、怒り朽ちるまで戦う!!」


「アルバス、神技・スロース、怠惰の祝福、怠惰の囁き、怠惰の悪夢!」


「ユン、プリンセスヴェール!」


 現在、ミザリーのステータスは神技・ラースの効果で凡そ10倍に膨れ上がっており、狂戦士化で更に全ステータス2倍、攻撃力に関しては怒りの化身で更に2倍、それに加えて怒り朽ちるまで戦うの効果で与えたダメージ分上限を無視してHPを回復できる。

 アルバスはライズによって付与されたデバフを更に悪化させ、必中攻撃の怠惰な悪夢で先制攻撃を仕掛ける。

 ユンはまだ神技を温存しつつ味方全員に食い縛りを付与。これで一度だけHP1で耐えることができる。


 この状況、新手の出現にロイヤルナイトも黙っていない。

 真っ先に視界へと入ったミザリーへ一目散に駆ける。

 もちろん、投下の段階でミザリーがロイヤルナイトの視界に入るよう調整されていたので、ロザリアたちにとっては想定の範囲内。


「ミザリー、怒りの武舞!」


 ロイヤルナイトの光を纏った剣とミザリーの斧が激しい火花を散らし、衝突するもすぐに均衡は崩れる。

 あれだけのバフで徹底強化したミザリーと正面から打ち合うのは幾らAランクダンジョンのエリアボスといえど不可能。今はデバフでステータスが低下している状態なので尚更。


「ユン、仲間への嫉妬、対象はミザリー!」


 仲間への嫉妬は味方モンスター1体を指定して状態模倣するスキル。つまり、バフやデバフ・状態異常などをコピーする。

 今回はミザリーを対象とした為、全ステータス20倍、攻撃力に関しては40倍というとんでもないバフを己に付与している。


「よーしユン、嫉妬の炎!」


 全体的にステータスはそこまで高くないユンだが、攻撃力40倍となれば話は変わる。

『天上庭園』では全ステータスの上限が100に設定されている。つまり、今のユンの攻撃力は4,000。これには物理も魔法も関係ない。

 だが、これだけの攻撃力を持ってしても与えられるダメージは少ない。

 ライズを倒した後くらいからロイヤルナイトは光の膜に覆われている。恐らく、それが被ダメを減らしていると思われる。


「今、ミザリー、怒りの破壊!」


 ロイヤルナイトの体勢を崩したところでブレイク系スキルの怒りの破壊を叩き込むが、光の膜は破壊できない。


「これ破壊は無理!琴音お願い!」


「オッケー!ユン、神技・エンヴィー!」


 何かしらのスキルの効果で光の膜で己を覆っていたと思われる為、ユンの神技・エンヴィーによって永続で封じた上でユン自身が発動できる。

 今はロイヤルナイトではなく、ユンが光の膜に覆われている。


(物理、魔法ともに防御力は2,000でしょ?それに被ダメを抑えると思われる光の膜も展開してるし、もしかして今のユンって無敵?)


「アルバス、ダークネスストーム!」


「ミザリー、怒りの衝撃!」


「ユン、嫉妬の氷!」


 大罪種3体による遠距離からの一斉攻撃。

 光の膜を失ったロイヤルナイトには大ダメージと思われたが、ボス部屋全体を覆わんとする光属性の攻撃によって相殺された。


「「「!!」」」


(((光属性版の昇華スキル!)))


「アルバス、怠惰への誘い!」


「ミザリー、怒りの破断!」


「ユン、嫉妬のいかづち、嫉妬の業火!」


 先ほどは相殺こそされたが、着々とロイヤルナイトのHPは削れている。

 この調子でいけば残る2パーティーの出番無しに勝てるかもとこの場にいる誰もが考え始めた。

 それほどまでにロイヤルナイトを圧倒している。


 だが、ミザリーがどれだけ自己バフで強化しようと、アルバスがどれだけデバフを悪化させても関係ない攻撃を繰り出されると状況は一変する。


 攻撃を仕掛けたところにカウンターをもらうミザリー。その圧倒的なステータスの前に大したダメージは入っていないと思われたが、そこそこ削れている。

 ミザリーのHPは怒り朽ちるまで戦うの効果で既に1万を超えているが、一気に1,000近いダメージをもらう。


(!ミザリーのHPが一気に削られた。最悪のパターン)


「防御力無視の固定ダメージか。ロザリア、どれだけ削られた?」


「1,000ちょい」


「アルバスだと一撃で瀕死になるな」


「うっそ!そんなに!?」


 防御力無視の固定ダメージで1,000を超える。これは3人にとって経験の無い未知の領域。

 だが、どの攻撃が防御力を無視して発動できるのか、それがわからないとミザリーは先ほどまでのような攻勢を仕掛けられない。

 そうなるとロイヤルナイトの矛先がいつユンやアルバスに向くかわからない。

 ここまではミザリーがかなり間合いを詰めて戦うことでユンとアルバスが視界に入らないよう立ち回っていたが、それが難しくなる。特に空を飛べないユンは。


「アルバス、怠惰の祝福、怠惰の囁き、怠惰な悪夢!」


「ユン、嫉妬の大氷だいひょう、嫉妬の轟雷!」


「ミザリー、怒りの武舞!」


 この切り替えの早さはさすがと言える。

 3人は先ほどまでと違い、自分たちでロイヤルナイトのHPを削り切れるかもという考えは捨てている。

 今は次に繋ぐこと。それだけを考え、いずれ倒されることを前提とした攻勢に出ている。

 最低でも3割削る。事前に3割と宣言している以上やらないといけない。

 先陣を切った2人は見事に半分削り、有言実行を果たした。

 少しでも後輩たちの負担を減らす為に!


(まだだ。ギリギリまで貯めろ。少しでもダメージを与える為に!)


「アルバス、怠惰への誘い、怠惰の破滅!」


「ミザリー、怒りの破壊、怒りの衝撃!」


「ユン、嫉妬の土、嫉妬の風!」


 ロイヤルナイトも多少の被弾は覚悟の上で攻め立てる。

 それに呼応するかのようにミザリーは己を奮い立たせ、手数で不利にも関わらず、対等に打ち合っている。


「はあぁぁぁぁーーーー!!」


「ミザリー、神技・アンガーアックス!」


「てりゃあぁぁ!!!」


「今!」


「アルバス、神技・ワールドエンド!」


「ユン、神技・トランセンドフェイト!」


 アルバスの神技・ワールドエンドにより、ロイヤルナイトは闇に飲まれる。

 そしてユンの神技・トランセンドフェイトによってロイヤルナイトに絶対不可侵の改変が起きる。


 神技・トランセンドフェイトには複数の効果があり、どの効果を発動するかは琴音がその都度選択する。

 今回は絶対不可侵の改変。

 ユンと共に戦っているパーティーのモンスター、今回の場合はユン、アルバス、ミザリーが倒されるとその効果は発動する。

 その効果はバトル中、一つだけ指定した属性のスキルが全て使えなくなる。

 もちろん、琴音は光属性を指定しているからユンたちが倒されるとロイヤルナイトは自然と光属性も封じられることになる。


 ただ、神技とはいえ、この効果はあまりにも強力すぎるが故に神技・トランセンドフェイトは攻撃速度が遅い。

 何かしらの方法で相手モンスターの動きを止めないとまず当たらない。

 今回はアルバスの神技・ワールドエンドで闇に飲まれた所を狙い撃った。


「うっ、これ以上は無理。ミザリー、怒りの破滅、憤怒の解放!あとはお願い」


 ここまで怒りスキルを使ってロイヤルナイトに与えた攻撃が纏めてのしかかるが、ダメージは微々たるもの。

 ミザリーは憤怒の解放は間に合わず、ロイヤルナイトの返しの太刀で倒される。


 ミザリーの次は、


「アルバス、怠惰の解放!」


 そして最後は、


「ユン、嫉妬の逆鱗!」


 ミザリー、アルバス、ユンと倒される直前に一矢報いてギリギリロイヤルナイトのHPを3割削り切った。

 そして3体倒されたこともあって、ロイヤルナイトは光属性を封じられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る