第220.5話 第四層 エリアボス戦 偵察戦

 第四層のエリアボスはロイヤルナイト。

 二本の剣を装備しているザ・騎士って感じのモンスターだ。


「タロス、挑発、鉄壁、重戦車、装甲復活、チャージカウンター!」


「カーラ、悪魔の祝福、悪魔の囁き、ナイトメア!」


「ノワール、ドラゴンフォース、ブラックラグナロク!」


「アテナ、戦の乙女、乙女の祈祷、乙女の加護、降臨・戦乙女之天穿剣!」


「ドレイク、ドラゴンフォース、火炎竜王の誇り!」


「ドランバード、ドラゴンフォース!」


「シルヴィーユ、エルフの加護、妖精の羽ばたき!」


「ファム、ドラゴンフォース、聖竜の加護!」


「コン、稲荷狐の祈り、稲荷狐の祟り、影分身、陽炎、蜃気楼、降臨・稲荷神社、参の型、壱の型!」


「稲荷流狐剣術、参の型 夜桜、壱の型 迦具土!」


 バフ・デバフの付与できないブルーたちは待機。

 ここまではいつもの流れだが、ここで思いもよらないことが起きる。


 タロスを無視してシルヴィーユを攻撃する。


「挑発無視!厄介だけど、アテナ、祈りの剣!」


「ドレイク、ルミナスフレイム!」


「あっぶな!シルヴィーユ、シューティングスター!」


「アルテミス、シャインブレイク!」


「エルナ、スターブレイク!」


「ユニ、ユニブラスト!」


「ブルー、雷霆!」


 挑発スキルを無視してくるならタゲを気にせず、攻撃できる。

 ただ、こうなると防御力に特化しているタロスは置物同然になる。


 アテナ、ドレイク、ノワール、ドランバード、シルヴィーユを中心にある程度塊ができている。

 こうなるとパーティーという概念が存在しない。


 ある程度攻撃を凌ぎ、何とかなりそうと思った矢先、突如としてロイヤルナイトの持つ剣が闇に覆われる。

 いや、剣だけじゃない。

 ロイヤルナイト自身が闇に覆われている。


「!これは、まさか…。直ぐにロイヤルナイトから距離を取れ!」


「(あ、間に合わない。なら)リリースヒーリング!」


 ジャスパーさんが何かに気づいて指示を出してくれたが、既に遅かった。

 ロイヤルナイトを中心に闇が広がり、ボス部屋全体に広がる。


 闇が消えるとアテナとドレイク、タロスを盾にして隠れていたブルー、アルテミス、ファム以外のモンスターの姿が見えなかった。

 この時、咄嗟に近場にいたタロスを盾にして残った3体のファインプレーに気づいたのは輝夜とジャスパーの2人だけ。

 この2人だけが今のスキルの正体を知っている。


(すご!よくあれを耐えたわね。タロスはダメージを受けると同時にウィリアムくんがリリースヒーリングの指示を出して上手く相殺した感じかな。コンマ1秒でも読み違えたら倒されていた。これはさすがの一言ね。咄嗟にタロスを盾にしたブルーたちもタロスなら耐えると信じた結果の行動ね)


(はあ、危なかった!んーと、今さ、ブルー、アルテミス、ファムと君らタロスを盾にしたよね?迷わずタロスの後ろに回った感じからしてタロスを犠牲に残ろうとしなかった?君らちょっとだけ、ちゃっかりしすぎ)


(あれの直撃を耐え切るか!だが、今ので半数以上倒されたか。まあ、初見なら仕方ない)


 たった一撃でこれか。

 今のスキルって神技なのかが気になるな。

 ジャスパーさんは何か知ってそうな感じがするし、後で教えてもらえるか。

 それは一旦置いといて、アテナとドレイクって今、神技を使ったようには見えなかったな。

 通常スキルで相殺していたように見えた。


「アテナ、裁きの剣!」


「ドレイク、イグニスブレード!」


 ここでアテナとドレイクがロイヤルナイトを側面から挟撃する。

 裁きの剣、イグニスブレードともに理論上は無限に連撃を続けられるスキル。

 ここでこのスキルを使うってことは手数重視?でも、何で?


「さっきのは発動に溜めが必要!波状攻撃でその隙を与えないようにする!」


「なるほど。タロス、ロイヤルナイトの正面に!それから重鋼破砕!」


「アルテミス、ウインドブレイク!」


「ファム、聖竜の心眼、ヘブンズクラッシュ!」


「ブルー、天御雷!」


 アテナとドレイクが使っているスキルはあくまで理論上は無限に連撃を繋げるだけ。

 相手モンスター次第ではそうそう繋がらない。


 連撃が途切れてスキルが失敗ファンブルしても攻撃の手は緩めない。

 それでもスキルにはクールタイムが存在する。

 いつかはこちらの攻撃が途切れる。


 ロイヤルナイトにその瞬間を狙われた。


 残った6体の内、最初に光を纏った剣でドレイクが倒される。

 ドレイクが倒されると戦局が一気に不利になるが、フォローする余裕は誰にもない。

 その後、アテナがドレイクの分も奮闘したが、ロイヤルナイトのHPが残り7割を下回った所でスキルがクールタイムに入り、そこを突かれ倒される。


 ドレイク、それにアテナが倒され、次に狙われたのはタロス。

 これにウィリアムだけが違和感を感じる。


(挑発スキルを無視できるのにここでタロス狙い?最初にシルヴィーユを狙った時は厄介なモンスターから狙うとかかと思ったけど、これは違うな。何か別の理由がある筈。Lvは無いな。それなら最初にアテナとドレイクのどちらかを狙う。ここまでに狙われたモンスターには何かしらの共通点がある筈)


「ブルー、雷霆!」


「アルテミス、神技・ホワイトセイバー!」


「ファム、聖竜の心眼、ヘブンズノヴァ!」


 タロスに攻撃を集中しているロイヤルナイトの真上から急降下し、剣を振り下ろすアルテミス。

 攻撃そのものは直撃したが、大したダメージは与えられていない。

 そしてその瞬間、タロスからアルテミスへとタゲが移る。


「あ、ヤバ!神技・イージス!」


 右手の剣は光を、左手の剣は闇を纏う。それを真上にいるアルテミス目掛けて振り上げるが、神技・イージスを貫くことはできず、沈黙する。


(!遠距離からの魔法攻撃には見向きもしなかったのに、アルテミスの神技には反応した。もしかして物理攻撃を当てたら狙われる?試してみよう)


「タロス、重鋼連破!」


(……あれ?見向きもされない。仮説が違うのか?だとしたら何が違う)


 今、ウィリアムくん何か狙ってたかな?


 プル、プル、プル、プル!


 うーん、さっきからブルーが元気にプルプルしてる姿が目に入って考えることに集中できない。

 …ん?ちょっと待てよ。目に入る?あ、そうか!わかった。


「ロイヤルナイトは視界に入ったモンスターを積極的に狙う傾向にあると思う!」


「!?あ、なるほど。そっか、理解!ならルーカス、ファムの力を貸して!アルテミスとロイヤルナイトの間まで運んで欲しい!」


「はは、なるほど。了解!ファム、頼めるか?」


 俺の推測はどうやら合っているみたいで、タロスがアルテミスとロイヤルナイトの間に割って入ると同時にアルテミスは離脱。

 すると、狙いをアルテミスからタロスに変えた。

 このまま少しでも時間を稼いでロイヤルナイトに関する情報を掴もうと思ったが、そこまで楽な相手ではなかった。


深淵蚊帳アビスカーテンの直撃を凌いだモンスターか。だが、次はない」


 ファムによって上空から落とされたタロスはアルテミスからタゲを奪うことに成功したが、宙に浮いた状態でロイヤルナイトの攻撃を諸に受けた。

 それにより、後方に大きく弾き飛ばされる。

 その瞬間、再びロイヤルナイトが持つ二本の剣が闇を纏い、それがボス部屋全体に広がる。


 今度はウィリアムくんも指示が間に合わなかった。さすがに全滅かと思ったらちゃっかり残っているモンスターが1体。


 プル!


「はは、ちゃっかりしてるな」


 うん、ブルー、君さ、またタロスを盾にしたよね。だって、今、ブルーがいる場所ってさっきタロスが弾き飛ばされた所の近くというか俺の記憶が間違ってなければ、タロスの後ろだよね。

 はあ、危なかった!みたいな感じでプル!ってしない!違うでしょ!

 ウィリアムくんも絶対に気づいてるよな。ちょっと苦笑い。


 その後、思いのほかブルーが善戦した。


 プル!プルン!プル、プルプル!プルン!?プル~


 ロイヤルナイトの猛攻を単独で凌いでいる。

 まともに攻撃を受ければ、一撃で倒されるけど、その悉くを回避している。

 途中、怪しかったけど。


 最後は再び闇がボス部屋に広がるあの攻撃でブルーも倒された。

 それにしても最後、ブルーだけでよくあそこまで粘れたな。

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