第219話 第四層

 特に反対意見が出なかったから100万ポイントのアイテムボックスを購入した。

 その結果がかつてないほど運に恵まれた。


 全部で三つ、総額1億700万ポイントのアイテムがたった100万ポイントで手に入った。


 ・星の欠片(3,200万)

 ・混沌の翡翠(3,500万)

 ・女帝の証(4,000万)


 この中で星の欠片という一番よくわからないアイテムはブルーが気に入ったみたいで颯爽とプル!って持って行った。

 3体の中で女帝云々に関係してそうなのはリーフィアだけだよな。

 そうなると女帝の証はリーフィア、混沌の翡翠はラグニアが関係してるかな。

 とりあえず、使えそうなアイテムでよかった。



 翌日、第四層攻略に取りかかる。

 輝夜さんとジャスパーさんの予想では恐らくこの第四層が最終層。

 他にもタワー型ダンジョンで中に城などが存在するダンジョンがあって、それらのダンジョンは一つの例外も無く、そこが最終層だったらしい。

 その話を聞いた俺を含めた攻略メンバーはやる気に満ちているが、城の中は迷路のように入り組んでいてなかなか最上階への道が見つからない。

 それに加えて、ここで出現するモンスターがちょっと厄介。メイドと執事の姿をした人類種のモンスター、名前も王宮メイドと王宮バトラー。

 そしてシンプルに強いから倒すのに時間がかかる。


「今度はバトラー3体、第1パーティーやるよ!アテナ、降臨・戦女神之天穿剣、乙女の祈り、乙女の祈祷、乙女の加護!」


「タロス、挑発、重戦車、鉄壁、装甲復活、リリースカウンター、リリースヒーリング!」


「ファム、ドラゴンフォース、聖竜の加護!」


「ブルー、雷霆!」


 タロスが攻撃を一手に引き受けてくれてるからまだ何とかなってるけど、タロスが崩れると第1パーティーが崩れると言っても過言じゃない。

 この『天上庭園』攻略におけるウィリアムくんの貢献度は計り知れないな。


「タロス、重鋼破砕!」


「ブルー、タロスにプチヒール!」


「そろそろいいかな。アテナ、裁きの剣!」


「ファム、聖竜の心眼、シャイニングクロー、クロスドライブ!」


 プルプル!


「ブルー、天御雷!」


 はいはい、みんなに混じって攻撃参加したいのね。霹靂神はタロスの妨害になるし、八雷神はさすがにここじゃ使えないからね。天御雷で我慢して。


 プル~


 うん、ブルーも攻撃して満足したみたい。これで勝手な行動はしないでしょ。

 それにしてもファムが『天上庭園』第一層からよく使ってるシャイニングクローとクロスドライブの合技はすごいな。威力がエグい。ここ最近はそこに聖竜の心眼を使って動きを止めて確実に攻撃が当たる状況を作っている。


「…タロス、回復!」


 やっぱり回復が追いつかない。ブルーのプチヒール、ファムのプチヒール、ヒールと三つの回復魔法を駆使してもタロスがダメージを負うペースが回復を上回っている。

 それによってタロスは時折、リリースヒーリングの効果で回復して持ち堪えている。

 ただ、リリースヒーリングはチャージカウンターで蓄積したダメージを回復に回すスキル。これを使わないと回復が間に合わない現状、迂闊にタロスはリリースカウンターが使えない。

 ここのモンスターも当たり前のように神技を使ってくるし、連携して動いてくるから油断できない。


 ここで3体の王宮バトラーの拳が光り輝く。

 これは神技発動の証。


「神技来るよ!!」


 輝夜さんが念の為に全員に聞こえる声で情報共有をしてくれる。

 これは万が一にも第1パーティーが崩れた場合、第2パーティーがすぐに救援に駆けつけられるようにする為。特に神技はパーティーが崩れる可能性は高い。


 タロスのHPはマックスまで回復してる。

 もし危うくなれば、ウィリアムくんがリリースヒーリングの効果で直ぐにでも回復の指示を出してくれるけど、最悪なのは回復する前に倒されること。

 それだけは避けないといけない。

 その為にやれることをやる!


 3体の王宮バトラーが同時にタロスへ仕掛ける。

 大事なのはタイミング。

 アテナとファムさっきブルーの方をチラチラ見てた。

 その時、ブルーがちょうどプルプルしてたから何かしらのコミューケーションを取ってた筈。

 それを見たファムは今、上空にいる。たぶんそこから最も危うい場所の援護をしてくれると思う。


 王宮バトラーが攻撃態勢に入った瞬間、そこを的確に狙う。


 プル、プルプル


 まだ、もうちょっと、


「今!アテナ、神技・審判の抹殺!」


「今!ブルー、電光迅雷!」


 タロスの左側面から攻撃を仕掛けた王宮バトラーはアテナが、右側面からのはブルーが攻撃態勢に入ったのとほぼ同時に攻撃を仕掛ける。

 神技といえど、失敗ファンブルすれば、クールタイムに入る。そこは普通のスキルと変わらないし、失敗ファンブル狙いなら通常のスキルでもできる。

 ただ、ファムの聖竜の心眼やブルーの雷霆の追加効果で神技発動中の相手の動きを止めたりはできない。


「ファム、シャイニングテール!」


 アテナは王宮バトラーの神技を失敗ファンブルさせることに成功したけど、ブルーはやっぱりと言うべきか攻撃が軽すぎた。

 すかさず、上空から勢い良く降下したファムが対処してくれたから良かったけど。


 プルプル、プル


 次からは役回り交代かな。

 んー、でもブルーがフォローに回るのはちょっと不安だな。


(ブルーが失敗するなんて、ちょっと意外。でも、今のは物理攻撃力に問題がある。攻撃が軽いのは攻撃力不足。魔法主体だし、これは仕方ないかな。神技の失敗ファンブルを狙うには物理攻撃じゃないとダメだし)


 この時、もしも魔法攻撃を放っていたら神技によって相殺霧散している。魔法攻撃では神技を相殺しようとしても攻撃を繰り出したとシステムが判定するから神技の失敗ファンブルには物理攻撃で体勢を崩すしか手段が無い。


 結果的に王宮バトラー1体の神技がタロスを襲ったが、それだけなら持ち堪えることはできる。

 すぐさまファムのヒールで回復し、HPは全快する。

 そしてアテナの神技が直撃した王宮バトラーは虫の息。


「アテナ、祈りの剣!」


 神技・審判の抹殺で虫の息だった王宮バトラーはアテナの追撃によって倒せた。

 これで残る王宮バトラーは2体。

 その内1体は、ブルーの霹靂神と八雷神で吹っ飛んだ。

 んーと、俺、何も指示してないんだけどな。ブルーさん?


 プル?


 プル?じゃないよ。プル?じゃ。


 そして残る1体はタロスのリリースカウンターの餌食となった。

 まあ、ブルーが1体倒したからタロスもリリースカウンターを使って倒す選択ができたけどさ。

 結果良ければ、指示を無視していいわけじゃないよ。

 それと、


「ブルー、全体攻撃スキルと八雷神を俺の指示無く使うの禁止令まだ解けてないからね」


 プル!?プルプルプル!


「『天上庭園』攻略中は誰からも文句が無いから良いけど、いつもみたいにリーフィアたちとダンジョンに挑戦する時はダメ!」


 プル!?プルプルプル…


「あら、ブルーが萎れてるけど、大丈夫?」


「あ、大丈夫です。偶に萎れるんですよ」


「へえ、そうなの。スライムって時々、萎れるのね」


 輝夜さんがプルプルプル…と萎れてるブルーを見て心配してくれたけど、まあいつものことだしね。

 萎れたブルーはアテナに連れて行かれた。

 プルプルとアテナに何か伝えてる。

 まあ、何となく内容の想像はできるけど。


 その後も探索を続けたが、城の中が予想以上に入り組んでいて、難航している。

 城の外から見た感じ、3、4階建て?かなと思ったけど、今、把握している限りでは地下が最低でも3Fまである。

 そして地下は全体的に地上部分に比べると暗めの雰囲気だけど、普通に城の一部って感じ。

 個人的なイメージだと城の地下って地下牢とか非常時に使う外へと脱出経路だからちょっと違和感があった。


 それから1ヶ月ほど第四層の探索を続けたけど、エリアボスがいるボス部屋は未だに発見できていない。

 そもそも城全体のマッピングすらできていないのが現状だ。

 朝一でダンジョンに挑戦しているけど、モンスターとの遭遇率が高いこと、それにレイドで挑戦してるから乱入も起きる。

 だから途中、道が分岐している所は調べ尽くしたけど、その先には時間が足りず、進めてない。

 最短ルートでまだ進めていない場所に向かっても大して進捗は無い。


 このままだとダメだとなって薫先輩のネメシスに頼るって考えに至ったけど、どうやらそれも無理でネメシスはモンスターと遭遇しなくするわけじゃなく、擬態など隠れているモンスターと遭遇しなくするだけみたい。

 第三層ではブルーが突破口を切り開いたけど、無理そうならダメ元でネメシスを使うつもりだったけど、第四層では出番が無いから薫先輩もここまで黙ってたらしい。

 一つ確実なことはこの第四層でネメシスは使えない。

 じゃあ、どうする?

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