第205話 これが12神序列1位の実力

 何でそっちにいるのブルー!攻撃しちゃったものは仕方ない。輝夜さんとアテナの邪魔しないように立ち回らせないと。

 とりあえず、そうそう距離を取る。えらいぞ、ブルー。それから魔法で攻撃。


「ブルー、鳴神、プロミネンス!」


 あ、ターゲットがブルーに移った。それじゃあ、回避一択。


「ブルー、逃げ回って回避!」


「アテナ、今がチャンス。降臨・戦乙女いくさおとめ天穿剣てんせんけん、聖なる祈りの剣!」


 神子の攻撃対象がブルーへと移った瞬間、アテナの持つ剣が光り輝く。

 そしてアテナの上空に魔方陣が突如として出現し、一振りの剣が舞い降りるとアテナの持つ剣と合わさり、一つとなる。

 これは輝夜が『天上庭園』攻略のために用意していた秘策の一つ。

 これは発動の際にアテナの動きが止まるからブルーがこうして神子の意識を誘導してくれたからこそ使える。


『天上庭園』ではリヴィングウェポンによるステータス強化も無効化されてしまう。それはリヴィングウェポンがモンスターでなく、武器として判定されているから。

 ダンジョンギミックで武器・防具による強化が無効である以上、武器や防具のスキルしか使えない。

 輝夜はここに着目し、裏技とも呼べる方法で打開した。

 リヴィングウェポンを武器・防具としてじゃなく、モンスターとして判定させればステータスが大幅に強化できると。

 普通ならできないが、とあるAランクダンジョンの虹色宝箱からドロップしたアイテム、「使役の心得」と美徳種である博愛の聖女、セレーネの神技を使い、それを可能にするスキルを取得した。

 それが降臨・戦乙女之天穿剣。

 このスキルにより、武器・防具判定を持っていたアテナのリヴィングウェポンはアテナの使役モンスターとして判定される。


 使役モンスターとは、本来ならモンスターにテイムスキルを使用し、成功して初めて存在するが、それを強引な手法でリヴィングウェポンを使役モンスターとし、召喚する。

 それでもまだ本来のステータスにはほど遠いが、神子を倒すだけなら十分。


 アテナの放った一閃は神子のHPを一瞬にして半分ほど削り切った。


 一方でウィリアムとルーカスはというと、


「ファム、聖竜の心眼!」


「タロス、重鋼連破!」


 基本的にファムはタロスの援護。聖竜の心眼によって神子の動きをタロスの目の前で止める。それと同時に重鋼連破による連撃を放つ。ダメージは少なくても0じゃない。いつかは倒せる。それに第1パーティーが危うくなれば、第2パーティーが救援に入る予定となっている。恐れることは何も無い。


「タロス、重鋼じゅうこう天落てんらく!」


「ファム、シャイニングクロー、クロスドライブ!」


 聖竜の心眼による硬直から解放され、タロスに拳を振り上げるもそれよりタロスが棍棒を振り下ろす方が早かった。

 脳天に直撃した一撃はそのまま神子の頭を地面に叩きつけた。

 そこを光のエネルギーを纏って急降下したファムが両手の鉤爪で×印を描くように引き裂く。ドラゴンフォースによるステータス2倍、急降下した勢いがシャイニングクローとクロスドライブの合技に上乗せされたことで普通では出せない威力を出し、一気に1割ほど神子のHPを削る。


 ウィリアムが神子の動きを完璧に読み切り、タロスへと指示。ルーカスはそれを信頼し、ファムは上空へ飛び上がるように指示を出す。輝夜と蓮がもう1体の神子を相手しているこの状況、そして2人の信頼関係と連携が無ければ、こうも上手く決まることは無いだろう。

 この神懸かった連携を横目で見ていた輝夜は一安心。

 すぐにでも救援に行かないとという焦りが消えて、このまま1体任せて大丈夫と思えた。


「蓮くん、このまま2人で1体確実に倒すよ!」


「!はい!!」


 まさか輝夜さんに2人で倒すって言ってもらえるなんて。ウィリアムくんとルーカスくんの援護にって言われると思ってた。まあ、今の連携を見たら逆に俺が行かない方がいいって判断かな。嬉しいようで嬉しくない。なんか複雑な気持ちだ。


 乱入を警戒しながらバトルを後方で見ているメンバーは、輝夜のやりすぎにより、救援に入ることも一瞬視野に入ったが、杞憂に終わった。

 それどころか誇らしげにしている面々が。


 ロザリアは「私が選んだメンバー。これくらいできて当然!」と自分のプレイヤーを見る目を自画自賛。


 シャーロットとユリアは「あの2人ならこれくらいできて当然!」と仲間への信頼が厚い。


 郁斗は「さすが俺らのギルマス!輝夜さんのフォローのいち早く対応してるな。俺じゃ無理だわ」と自分と比較し、蓮の対応力を絶賛。


 莉菜とオリヴィアは「さすが蓮!」と郁斗同様に蓮の対応力を絶賛。


 薫と琴音は「鬼灯(くん)ならこれくらい当然」と特に変わったリアクションは無い。


 そしてジャスパーは自分たちの見る目に狂いは無かったと『天上庭園』攻略への確かな手応えを感じていた。



「ブルー、雷霆!」


「アテナ、裁きの剣!」


 雷霆の追加効果で痺れて神子の動きが止まった所を狙い撃つが、一撃入れたところですぐに対応される。

 神子の防御が予想以上に堅く、アテナが思うように攻められないでいる。


 このままじゃダメだ。さっきのアテナの一撃で完全にブルーが無視されてる。見向きもされないとは。

 ブルーも戦いの最中だけど、プルプルとちょっとショックを受けている。

 ここで八雷神とかを使わないあたりブルーの成長を感じるな。

 今使えば、当たるだろうけど、その先が続かない。この状況を打開するにはもっと違う手を考えないと。

 やるべきことはアテナが攻めやすくすること。つまり、神子の防御を崩す!

 今のブルーとならきっとやれる!


「ブルー、霹靂神はたたがみ、フレイムフォース、電光迅雷、プロミネンスアタック!」


 ここは敢えて全体攻撃を放つ。本来なら前衛で奮闘しているアテナの妨げになるから避けたいとこだけど、味方の妨げになるなら敵の妨げにもなる。

 そこで電光迅雷の高速移動からの攻撃にプロミネンスアタックの追撃。これを極力同じ箇所に時間を置かずに。

 ブルーのここまでの攻撃、特に雷霆とかうざいよね。一瞬とはいえ痺れて動けなくなるから。それにブルーの防御力なら一撃で倒される。そう、一撃で。

 うざくて一撃で倒せる相手がすぐ側にいる。しかも視界状況は雷と炎で最悪。

 そう!攻撃してさっさと倒そうとするよね。普通ならこの距離、攻撃時に神子に弾かれ宙に浮いたブルーに回避は不可能。でも、俺は知ってる。ピナに飛び方を教えようとブルーが奮闘しているのを。


「ブルー、真下に向かってプロミネンス!」


 真下にプロミネンスを放ち、その余波を推進力とすることでカーラ戦で見せたほどの大ジャンプは無理だけど、宙に浮いた状態でもほんの数十cmなら更に浮き上がる!

 ブルーは元々小さいから数十cmでも浮き上がれば、神子の拳は空を切る。


 全てはこの瞬間の為。

 輝夜さんとアテナなら一瞬でも隙を作れば、きっと決めてくれる。そう信じて。


「アテナ、神技・審判の抹殺!」


「ナイスだよ、ブルー!はあああ!!」


 アテナの剣から放たれた強力な光は神子を貫く。そしてその光はその先でタロスとファムが相手をしている神子のも届く。

 たった一振りで離れた場所にいた2体の神子を両方とも攻撃し、倒してみせた。

 予想外の所からとんでもない威力の攻撃が飛んできたことにタロスとファムは唖然とする。

 攻撃を放った当の本人は笑顔でいえーいとVサインをしているが、その直後、足下で自由落下中に危うく攻撃に巻き込まれかけたブルーがプルプルと猛抗議。それに対し、しゃがみ込んで目線の高さを下げ、両手を合わせて謝るアテナ。


 あの、ブルーさん。君もよくリーフィアやラグニアを巻き込む形で攻撃してるよね。

 その抗議は正当じゃないと思うんだけど。てか、当たってないし、当たってもダメージないよね。

 これがブルーとアテナの人徳の差…。あ、いや、この場合はモンスター徳の差か。

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