第202話 12神の成り立ち
え?ちょっと待って。もしかして…。
「改めて12神の1人として要請する。一緒にレイドを組んで世界最難関ダンジョン『天上庭園』に挑戦して欲しい!」
さっき輝夜さんは約束の日が迫っているって口にした。
誰かと何かしらの約束をしている?それが『天上庭園』攻略と関係している?
ん?ちょっと待って。輝夜さんはずっとレイドを組むって言ってるよね。それに加えてさっきのこの場にいるメンバーだけじゃ攻略は無理。
そもそもこの場にいるメンバーだけじゃレイドにはならない。
このゲームにおけるレイドは最低でも10人以上、多くても15〜20人のプレイヤーで組むもの。
俺、郁斗、莉菜、オリヴィア、薫先輩、琴音先輩、輝夜さん、学園長。仮に学園長を頭数に入れても8人。
レイドにはまだ足りない。
つまり、輝夜さんが思い描く攻略メンバーはここに全員揃っているわけじゃないってことか。
「輝夜さん、まだ挑戦するか決めあぐねています。だからこそ知りたいです。ここにいないメンバーって誰ですか?それがわからないと決断できません」
「あ、まだ話して無かったわね。12神からは私とジャスパー、Bランクプレイヤーから薫くん、琴音さん、ロザリアさん、Cランクプレイヤーは鬼姫とリベリオン。総勢、13人!」
13人、レイドとしては若干人数が少ないけど、凄いメンバーが揃ってる。
輝夜さんだけじゃなくて、ジャスパーさんも。それにリベリオンのみんなと一緒に戦える。
「蓮、どうする?ギルドマスターの判断に任せるよ」
「そうね、蓮の判断に任せる」
「はい、蓮にお任せします」
「鬼灯、ギルドマスターとして決断しろ。仮にギルドとして不参加でも俺と琴音先輩は参加する」
郁斗、莉菜、オリヴィア、薫先輩と全てギルドマスターである俺任せなのね。
あ、でも薫先輩と琴音先輩はギルドとして不参加でも参加するんだ。
「鬼灯くん、まだ君たちは知らないだろうけど、12神同士でパーティーやチーム、レイドを組むことは本来禁じられている。今回は運営が特別に許可をくれた形で実現している。こんな機会、二度と巡りあえないよ」
初めて知った。12神ってそんな制限があったんだ。
でも、確かに12神同士が組んでダンジョン攻略したとか、そういう話は聞いたことないな。
それなら学園長の言う通り、こんな機会もう二度と無いな。
うん、決めた。
「輝夜さん、鬼姫ギルドマスターとしてその要請を受けます!」
『天上庭園』攻略に関する話は後日、メンバーが全員揃ってからとなった。
ちなみにリベリオンにはロザリアさんとジャスパーさんが同時刻に話をしているらしい。
輝夜さんが言うには2年くらい前にジャスパーさんと2人で『天上庭園』攻略を掲げ、低ランクで強いプレイヤーを探していたとか。
でも、それだけだと戦力的に厳しいから何人かBランクでAランクに匹敵する実力のあるプレイヤーが欲しかったとか。それでまず、当時Dランクで頭一つ、二つ飛び抜けていたロザリアさんに話を持ち掛けて、時間を掛けてメンバーを集めてもらったとか。
つまり、リベリオンは元々世界最難関ダンジョン攻略の為に結成されたギルド。
そして、今回の『天上庭園』攻略にはちょっとした条件がある。
運営から12神のトップ2がレイドを組むに当たって攻略開始は今年の5月中までと決められている。
これには運営の思惑も絡んでいるとかで、学園長が言うには世界最難関ダンジョンという攻略者0のダンジョンを無くしたいとか。
特に『天上庭園』はダンジョン島にあるAランクダンジョンということもあって、挑戦者がほとんどいない上に全くと言っていいほど、攻略の兆しが見えていないダンジョン。
それ故に輝夜さんとジャスパーさんがレイドを組む許可は出たけど、さすがに無制限とはいけなかったらしい。
そこで出されたのが攻略開始時期の指定。今年の5月中までという曖昧な所が真実味を帯びているな。
一度攻略メンバーを決めて、挑戦を始めたらどれだけ時間が掛かってもいいらしいけど、途中でのメンバー変更は禁止みたい。
「あ、輝夜さん、一つ聞いてもいいですか?」
解散して準備を進めるべく、すぐに帰る一方で俺は輝夜さんに疑問に思ってたことを聞くことにした。
「ん?何?」
「12神って肩書きを背負っててもゲームのプレイヤーですよね?なのに制限があるって変というか、なんというか」
「そうね、蓮くんはどうして12神という枠ができたか知ってる?」
「いえ、知らないです」
「じゃあ、そこからね。チュートリアルでこのゲームについて説明があったと思うけど、最初プレイヤーのランクはG〜Aまで。Aランクが最高だった」
あ、そっか。ゲームのサービス開始から12神という枠があったわけじゃないのか。
今はSランクまであるけど、これは実質12神だからな。12神が存在しなかった時にはSランクも存在しないわけか。
「ゲームのサービス開始直後はまだ低ランクのプレイヤーが溢れてたけど、徐々に強いプレイヤーが現れ始めた。そこでランク変動型ダンジョンとは別に各ランク帯のダンジョンを運営は用意した」
「え?ランク変動型ダンジョンって最初からあったんですか?てっきり、ARゲームの特性上、用意できるダンジョン数に限界が見え始めて、それで途中から作られたダンジョンだと思ってました」
「そう思ってる人も一定数いるけど、蓮くんは疑問に思わなかった?世界にあるダンジョンの内、その7割がランク変動型だってことに」
「確かに多いとは思ってましたけど、7割もランク変動型だったんですか!?」
「そうなの。でも割と初期からあるランク変動型ダンジョンはひどい作りよ。バランスが最悪!蓮くんも
言われてみれば、確かに不憫かエリアボスだな。
普通に戦うと激強で勝てなかったけど、動かれる前に雷属性の攻撃をすれば楽勝だった。
あ、リーフィアが覚醒した今なら普通に戦っても勝てる説あるかな。
「それで各ランク帯のダンジョンを用意する上で運営に求められたのは必ずプレイヤーが攻略できるダンジョンを作ること。そこで各ランク帯の実力あるプレイヤーにテストプレイをしてもらうことにしたの。最初は守秘義務を与えていろんなプレイヤーに頼んでいたみたいだけど、ある程度の数ダンジョンを用意でき、これからはより難易度の高いAランクダンジョンの作成にシフトすることになった。そこで人数を固定しようとなった」
「もしかしてそれが、」
「そう。当時は正式な名前とか無かったし、12人もいなかったけど、徐々にプレイヤーが全体的に強くなった。そこで当時最強と呼ばれていた何人かのプレイヤーに声が掛かり始めた」
うーん、でもそれだけならSランクとか12神とかいう枠組みを作る必要あったのかな。
それに12神って入れ替わり戦もあるし、いつも固定メンバーってわけじゃないよな。
「運営は常にその時、最強と呼ばれるプレイヤーを求めている。プレイヤーの更なるやる気を引き出す為にSランクという特別な枠組みを作った。そしてある時、特別な総称を求める声が上がり、当時飛び抜けて強かった12人を称える意味でSランクプレイヤーを12神と呼ぶようになった。これが12神の成り立ちで、パーティーとか組めないのは規約みたいなもの。それが嫌なら12神入りを断わればいいだけの話だし。実際に12神じゃなくても私たちと互角に戦えるプレイヤーはいるし。プロフェッサーとかディアボロスのギルマスがその筆頭ね」
あ、ちゃんと拒否権はあるのか。
というか、プロフェッサーやディアボロスのギルマスって輝夜さんたちと互角に戦えるの!?
今度、機会があったらシグマさんにどんな人か聞いてみよ。あんまり、プロフェッサーのギルマスの情報って無いんだよな。
あとディアボロスって、なんか輝夜さんに言われるとちょっと納得。
「でも、その話が事実なら攻略者0の世界最難関ダンジョンが存在するのって変な話じゃないですか?」
「ああ、今世界最難関ダンジョンと呼ばれてるダンジョン全て古いダンジョンだから。『竜峰』なんて最初期のダンジョンだし」
『竜峰』って世界最難関ダンジョンの中でも最も難易度が高いとされてるランク変動型ダンジョンだよね。
あれがゲームのサービス開始時にはあった?いくらなんでもバランス悪すぎじゃ…。
「そういえば、輝夜さんは何で『天上庭園』攻略に拘ってるんですか?他の世界最難関ダンジョンなら1人でも攻略とか狙えそうですけど」
「他の子たちが狙ってるからね。横取りはよくないでしょ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます