第201話 正式な要請

 前書き失礼します。

 先日確認したところ、「カドカワBOOKSファンタジー長編コンテスト」の中間選考に残ってました!!

 めっちゃ嬉しいです!

 読者選考もあったので、読者の皆様にはホントに感謝しています!!!!


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 5月も中旬に差し掛かる頃、俺は琴音先輩に呼ばれてとある場所に向かっている。

 そこは白黒モノクロ学園の貴賓室。俺が初めて輝夜さんと会った場所。

 何故かは知らないけど、そこに呼ばれた。薫先輩ならともかく、卒業された琴音先輩に。

 あ、ちなみに琴音先輩はこの間、ギルドに加入してくれた。


 俺はここで学園OGと会う運命でもあるのだろうか。

 琴音先輩からは着いたらすぐに中に入るよう言われているので、一応ノックをして入る。

 すると貴賓室の中には琴音先輩だけでなく、薫先輩に郁斗、莉菜、オリヴィアもいる。それに輝夜さんと学園長も。

 これ一体どういう状況?


「さてと、揃ったわね。蓮くんも座って。大事な話があるの」


「はい」


 何だろう、俺の知ってる輝夜さんじゃない。目には見えないオーラを纏っているみたいだ。


「まず話をする前に今からする話は他言禁止。それだけは絶対に守ってほしい。いい?」


 他言禁止。このメンバーが集められているってことはLMBに関係しているよな。

 潜在解放や昇華スキルみたいに秘匿義務がある何かを輝夜さんは俺たちに話そうとしている?でも、何で俺たちが集められた?それに学園長はどうして。わからないことだらけだ。

 話をしっかり聞けってことかな。


「うん、大丈夫そうね。これは12神として私から正式な要請です。一緒にレイドを結成して世界最難関ダンジョン『天上庭園』に挑戦して欲しい」


「「「「!?」」」」


 え?どういうこと、ちょっと待って。え、12神としての要請?ていうか、何で俺たち?もっとランクの高いプレイヤーに頼めば。そう、他の12神とかAランクプレイヤーとか。


「何で俺らですか?もっと強いプレイヤーは他にたくさんいますよね?あと、『天上庭園』ってダンジョン聞いたことないんですけど」


「意外と冷静ね。もっと慌てふためくものと思ってたけど」


 もう何が何だかわからないよ。よくそんな冷静に質問できるね、郁斗。

 ギルドマスターなんだから俺がもっとしっかりしないといけないのに。頭パンクしそう。


「二階堂くんの言い分は尤もだよ。挑戦するダンジョンが『天上庭園』でなければの話だけどね」


 学園長も『天上庭園』というダンジョンを知ってそうな口振りだけど、真面目にわからない。輝夜さんは世界最難関ダンジョンって言ってたよな。でも、世界最難関ダンジョンにそんな名前のダンジョンは存在しない筈。


 俺が知ってる世界最難関ダンジョンは『海底神殿』、『奈落迷宮タルタロス』、『竜峰りゅうほう』の三つ。

 それ以外に世界最難関ダンジョンとして認定されているダンジョンは無い。

 プロフェッサーの公式記録だから間違いない筈だけど。


「『天上庭園』はダンジョン島に入場したことのあるプレイヤーじゃないと知らないから郁斗くんが知らないのは当然。ダンジョン島にあるダンジョンに関する情報はダンジョン島に入場できるCランク以上のプレイヤーにしか共有できないからプロフェッサーの公式記録にも載っていない」


「ダンジョン島…」


 ダンジョン島か。確かゲームの運営がダンジョンを無人島を開発して作った場所。入場できるのはCランク以上のプレイヤー。ダンジョン島にあるダンジョンは全てCランク以上だけど、その大半をBランク以上が占めているからCランクのプレイヤーが入場することは少ない。


 この場で気づいていないのは蓮だけで郁斗、莉菜、オリヴィアは既に気づいている。

 スポンサー契約の話が鬼姫に来た時に薫が話していた実績云々の話。それが恐らくこれに繋がっている。

 理由はどうあれ、薫と琴音はあの時には既に知っていたことになる。

 それが示すことは一つ。前々から鬼姫をレイドに勧誘することが決まっていた。

 一体、いつから決まっていたのか。どうして鬼姫なのか。他にも疑問は山ほどある。


「私から二階堂くんの疑問には答えよう。何故、鬼姫か。確かにもっと強いプレイヤーはいる。だけど、『天上庭園』は強いプレイヤーを集めても攻略はできない。仮に12神でレイドを結成できたとしても攻略はできない。『天上庭園』のダンジョンギミックがそれを阻んでいる」


「ダンジョンギミック?それってステータスに制限がかかったり、デバフや状態異常の無効とかですか?」


「ステータスの上限を100に固定、スキルLvの上限を20に固定、武器と防具によるステータス上昇無効の三つ。これがAランクダンジョン『天上庭園』のダンジョンギミック」


 輝夜さんの口から語られた『天上庭園』のダンジョンギミック。

 正直、耳を疑うレベルのものばかり。そんなダンジョンギミックが三つもある。

 それに加えてAランクダンジョン。要はステータスの最大値100で固定された状態でAランクダンジョンを攻略しないといけないってことでしょ。

 スキルLvの上限が設定されて無ければ、高威力のスキルでゴリ押しって作戦があるけど、それすら無理。

 どう考えても攻略は不可能でしょ。


「『天上庭園』の攻略にはCランクプレイヤーの協力が必要不可欠なの。Aランクプレイヤーや12神のモンスターは強力なスキルを多数取得してる反面、クールタイムが長い。スキルLv20という制限があると逆に足手まといになる。だからステータスやらの兼ね合いから必要最低限の上位プレイヤーとCランクプレイヤーでレイドを組むのが一番バランスがいい」


 なるほど。輝夜さんの言うことにも一理あるな。

 今でこそ強力なスキルもスキルLvが伴ってないと使い勝手が悪い。

 ブルーの八雷神とか良い例だな。大雑把なイメージ、八雷神クラスのスキルが使えるけど、スキルLv20という制限下ではまともに戦えないって感じかな。

 でも、いくら輝夜さんがいても俺たちじゃAランクダンジョンの攻略は無理でしょ。

 ここは正直に気持ちを伝えよう。


「すみません、輝夜さん。どう考えてもここにいるメンバーじゃAランクダンジョンの攻略は無理だと思います」


「そうね。ここにいるメンバーじゃ無理ね」


「「「「え?」」」」


 意味がわからない。ここにいるメンバーじゃ無理。じゃあ、何でこんな話を持ち掛けてきたんだ?


「蓮くん、それに郁斗くん、莉菜さん、オリヴィアさんもゲームを始めてから今日まであったことを思い出してみて」


「今日まであったことですか?」


「うん」


 今日まであったこと。

 ゲームを始めて最初にブルーを召喚したな。それからダンジョンに挑戦して新入生代表トーナメントで戦って、郁斗たちとパーティーを組んでダンジョンに挑戦したな。

 それからタッグEトーナメントに向けて特訓をして、タッグEトーナメントに出場して、莉菜の発案でギルドを結成したな。夏休みには常夏の白黒モノクロフェス。いろいろあったな。

 夏休みが終わってからは海外ダンジョンに挑戦。年が明けて2月にはリベリオンとのギルドバトル。

 3月には学年別個人トーナメント、4月にはCランクダンジョン挑戦でこの間、リーフィアが覚醒した。


 思い返すといろいろあったな。でも、これに何の意味が…。


「去年の4月7日、全てはあの日から始まった。ゲームを始めたばかりのGランクプレイヤーがスライム1体でFランクダンジョン『嘆きの墓地』を攻略したというモンスターニュース。あれを見た時、『天上庭園』攻略に光が差した」


 そうだ。そういえば、入学式の日に郁斗が教えてくれたっけ。あれが無ければ、俺が郁斗とこうして友達になることは無かったかもしれない。


「それから個人的に蓮くんには注目してたの。新入生代表トーナメント、タッグEトーナメントと負けはしたけど、蓮くんに可能性を感じていた。そんな時にシグマから私に連絡が届いた。無謀な挑戦をしようとしている子がいる。現実は甘くないと教えてあげてほしいって。その相手が蓮くんだった。『遊楽園』の情報と引き換えはちょっと意地悪だったけど、蓮くんたちには上のランクのダンジョンに一度挑戦し、経験して欲しかった。そう、上のランクを」


 たった一日だけだけど、一つ上のランクのダンジョンに挑戦するだけでもかなり苦戦した。

 あの時は完全に薫先輩と琴音先輩におんぶに抱っこ状態。

 自分たちが弱いという事実を痛感した。


「その後、リベリオンとのギルドバトルが行われた。その出場条件はC。私は解説としてバトルを見させてもらった。結果、私の予想以上の成長だった。この子たちとなら、私はそう確信した。そしてがもうすぐそこまで迫っている」

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