第192話 覚醒に必要なアイテム

 とりあえず、ブルーのおかげ?で想定よりも早くジャイアントメタルバードを倒せた。

 事前に調べた情報によると『疾風の剛翼』はエリアが二つだけ。

 第2エリアの『鋼鉄の剛翼』を攻略したことで残るは最奥のボス戦のみとなる。

 まあさすがに今日はもう遅いし、まだ最奥のボスモンスターの情報をちゃんと調べてないから挑戦するのは明日以降かな。

 授業が終わって放課後に挑戦すると時間的にボス戦は一回が限界だな。

 明日は金曜日でまだ学園はあるし、本格的に最奥のボス戦をするのは明後日の土曜日かな。

 明日はもう一回、ジャイアントメタルバードと戦って少しでもスキルのLvとかを上げよう。


 金曜日の夜、ジャイアントメタルバードと一戦終えて家に帰った後、リーフィアから進言があり、ショップを覗いている。

 俺はもうアイテム数が多すぎて30分でギブアップしたけど、その後もリーフィアはずっとアイテム一覧を見続けている。

 何か欲しいアイテムでもあるのかな。

 そこそこポイントも貯まってるし、買うのもありか。

 あ、リーフィアが何してるのか気になったのか、ピナが駆け寄って行く。その後をプルプルと追うブルー。


 ピヨ!ピヨピヨピヨ、ピヨ!

 プル?プルプル


 どうやらピナとブルーもアイテム一覧を見たいようだ。リーフィアに頼んで見せてもらっている。

 ラグニアは大人しく毛繕いしてる。

 どうやらアイテムに興味無いみたい。

 その後、ブルーとピナは5分もしない内に音を上げ、リーフィアの元から離れる。

 うん、最初は新鮮だったけど、すぐに飽きたんだな。


 更に10分ほど待つと、リーフィアが目的のアイテムを見つけたようだ。


「主、このアイテムは早めに入手しておいた方がよろしいかと」


 リーフィアが進言してきたアイテムは覚醒の宝珠。

 アイテムの説明文には特定の条件を満たしたモンスターを覚醒させる宝珠だとか。

 モンスター1体につき1個しか使えないみたいで使っても条件を満たしてなかったらすぐには効果は現れないみたい。

 でも、その後どれだけ時間が掛かっても条件を満たしたら効果は現れるらしい。

 調べてみた結果、Bランク以上のプレイヤーには必須アイテムだとか。

 まだCランクの俺には早い気もするけど、リーフィアがそう言うならポイントで購入した方がいいかな。

 うーん、でも一つ200万ポイントか。

 今の手持ちがざっと173万ポイントだから一つも購入できないな。どうしような。

 あ、『疾風の剛翼』って確かクエストがあった気がする。


 えっと、クエスト一覧、『疾風の剛翼』、Cランク

 これで出てくるクエストは一つだけか。

 まあ仕方ないな。


 ・ボスモンスター『プライムバード』を倒す 獲得ポイント 300,000


 プライムバードというボスモンスターを倒せば、30万ポイント。これで一つだけなら購入はできるな。

 でも、いくらCクエストとはいえ、ボスモンスターを倒すだけで30万ポイントは違和感があるな。

 かなり多い気がする。

 試しに確認してみると他のCクエストだとボスモンスターを倒しても多くて10万。ほとんど10万を下回っている。

 これ絶対に激強ボスモンスターのパターンだ。


 土曜日、実際にプライムバードというボスモンスターに挑戦してみた。

 事前に集めた情報では攻撃が当たらないとばかり。

 それ以外の情報はほとんど無かった。

 この時、俺は失念していた。

 ボスモンスターであるプライムバードに挑戦しているということは第1エリア、第2エリアのエリアボスを倒しているということ。

 あの2体のエリアボスを倒したプレイヤーたちが口を揃えて当たらないと言っている。

 そこまで頭が回っていなかった。

 リーフィアが前衛で挑発スキルを使い、惹きつけてラグニア、ブルー、ピナで攻撃すればなんとかなると思っていた。


 実際に挑戦した結果、1ダメージも与えられなかった。

 ここまで戦ったエリアボスは2体とも巨体だったから無意識に最奥のボスモンスターの巨体だと思い込んでいたが、その真逆だった。

 かなり小さい。大きさならピナといい勝負か。

 全長1メートルにも満たない上に速い。

 それに加えて、全身が岩石や鋼鉄じゃなく、フサフサの毛で覆われている。遠距離から羽を飛ばすといった物理攻撃があるから今まで使っていた挑発スキルで惹きつけて、反撃はできない。

 空を自由自在に高速移動するボスモンスター。これで防御面が紙装甲とかで一撃当てたら倒せるだとありがたいけど、ボスモンスターである以上、防御もそこそこ高いだろう。


 とりあえず、今日は部屋に籠って情報を集めよう。

『疾風の剛翼』は世界難関ダンジョンではない。

 つまり、攻略した人が一定数いることが証明されている。

 白黒モノクロ学園内のダンジョンだし、ここは市川先生に話を聞いてみたいけど、今日は土曜日。

 話を聞くにしても早くて明後日の月曜日。

 薫先輩と琴音先輩はあまり学園内のダンジョンについては詳しくないと前に言ってたから聞きづらいな。

 うん、ここは最終手段を用いるほかない。


 あの人に聞いてみよう。

 お忙しいと思うからメッセージを送る。

 じゃあ、返信が来るまで俺なりに調べて……。

 え、早くない?もう返信が届いたよ。


「おお〜『疾風の剛翼』か。また難しいとこに挑戦してるね。プライムバードなら私も戦ったことあるよ。そこそこ苦戦したから覚えてる。あれを倒すにはデバフで徹底的に弱らせるしか方法は無いと思うけど、」


 返ってきたメッセージにはそう書かれている。

 デバフで弱らすか。俺の中で今、すっごく疑問なのはあの人ってデバフを付与できるモンスター持ってるの?

 全然心当たりがない。普段のバトルじゃ使わないだけでいるのかな。

 ん?いや、そもそもデバフを付与するんだよね?それは俺もやろうとしたよ。

 羽を飛ばす攻撃に合わせてリーフィアが闇の盾を使う。だけど、挑発スキルをちゃんと使ってるのに何故かリーフィアを掻い潜って他のモンスターを狙って来る。どうやったら付与できるのさ。


「あ、知り合いに正面から空中戦を挑んで倒したプレイヤーもいたわね」


 その後、追加で送られてきたメッセージ。

 正直、意味がわからない。

 プライムバードと戦った後だと尚更理解できない。

 あの小さい体であの速さ。正面から空中戦をやって倒せるところは想像できない。

 輝夜さんにお礼のメッセージだけ送って、1人考える。


 カーラが使う悪魔の祝福みたいにデバフ・状態異常強制付与のスキルがあれば話は変わるけど、無いしな。

 その逆でロザリアさんのミザリーみたいにとにかくバフを積んで強化するもできないしな。

 うーん、やっぱりそろそろ着手しないとダメかな。

 リベリオンとのギルドバトルが終わった後に輝夜さんとジャスパーさんのお話にあったバフ・デバフの重要性。デバフはラグニアとリーフィアが付与できるからまだいいかなと思ってたけど、さすがに限界があるな。

 特にブルーは単体だとバフ・デバフともに付与できない。昇華スキルを取得して強くなったけどだもんな。

 でもどうやってバフ・デバフを付与するスキルを取得するかだよな。


 プルプル、プル

 ピヨピヨ、ピヨ


 部屋の隅でいつも通り過ごしている子たち。

 プルプルしてる子は俺と一緒にどうしたらいいかを考えて欲しいな。望み薄だろうけど。


 グルグル!グルグルグル


「主、ラグニアは今のままでは勝てないのなら別のダンジョンに挑戦するのはどうでしょう?と。私も同意見です」


 ラグニア、リーフィア、頼りになる。こういう時に意見を出してくれるとは!部屋の隅でプルプルして妹と遊んでる子とは違……。


 プル!プルプルプル、プルプル


 おかしいな。さっきまで部屋の隅にいた筈なのにな。気づいたら俺の足下にいる。

 先ほどまでいた場所に目を向けるとピナが周りをキョロキョロして見ている。

 ブルーを見つけた瞬間、ピヨ!とこちらに駆け寄って来る。


「ブルー、ちゃんとピナの面倒を見てて下さい。先ほど任せましたよね?」


 プル!プルプルプル!プルプル!


「では何故、電光迅雷を使ってこちらに来たのですか?」


 プル…プル、プル!プルプル


「仕方ありませんね。今回はそういうことにしておきます。ちゃんと両立して下さいね」


 プル!

 ピヨ?

 プルプルプル、プル

 ピヨ!


「…主、申し訳ございません。話を戻しましょう」


「あ、うん、そうだね。えっと、別のダンジョンに挑戦って話だけど、それ自体には賛成。でも、ラグニアとリーフィアからその話が出るってことはどこか挑戦したいダンジョンでもあるの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る