第188話 卒業式
今日は琴音先輩たち3年生の卒業式。
昨日で
あっという間だったな。ついこの間、入学したように思える。
それがもう1年という月日が経とうとしている。
「3年生の皆さん、学年別個人トーナメントお疲れさまでした。本戦まで勝ち進めた人も進めなかった人もこれで終わりではありません。寧ろこれからが始まりです。在学中は大した実績を残していなくても学園を卒業してから名を轟かせた卒業生もいます。心機一転、卒業を機に何か新しいことを始めてみるのもいいでしょう。皆さんのこれからの活躍を心から応援しています。私から以上で」
学園長の短いお話が終わり、卒業生代表として琴音先輩が壇上に上がる。
いつもはどこかおっとりした雰囲気だけど、今日はなにかオーラを感じる。
「今日は私たち3年生の為にこのような場を設けて下さり、ありがとうございます。…」
琴音先輩ってあんな真面目な話できたんだ。
どこか親しみやすくて頼れるお姉さんって感じ真面目なイメージ無かったけど。
その後は薫先輩が在校生代表として壇上に立ち、話をしていろいろあって卒業式は終わった。
式は終わったけど、これからが本番。
琴音先輩に卒業祝いを渡さないと!
今回はさすがの郁斗も遅刻せずに来たし、こっちの準備は万全。
事前に許可をもらってゲーム室1を借りているので、今から向かって最終準備に取りかかる。
と言ってもゲーム室1に備え付けである冷蔵庫に飲み物とかいろいろと入れてある。
すぐにでも飲み食いできるように紙コップや紙皿、割り箸などを全員分用意するだけ。
これだけは時間が足りなくて卒業式が始まる前に終わらなかった。
あとは薫先輩からメッセージが来たら冷蔵庫から飲み物を取り出しす。
ケーキはまだ隠しておく為に冷蔵庫の中。
それから3時間後、薫先輩から合図のメッセージが来る。
それを確認し、冷蔵庫から飲み物を取り出し、全ての準備を終える。
これでいつ琴音先輩が来ても大丈夫。
そしてその時がやって来る。
「「「「琴音先輩、卒業おめでとうございます!!」」」」
「わああ、ありがとう。これ私の為に用意してくれたの?嬉しい!」
すごく喜んでくれてる。待ったかいがあったな。
琴音先輩は大学に進学しないみたいで仲の良い人とはこの先、琴音先輩は多忙でいつ会えるかもわからないらしいからこれでお別れになるかもとか。
それ故に話が長くなると事前に薫先輩から待つと長いと聞かされてはいたけど、まさか3時間も待つことになるとは。
早速、1人ずつ琴音先輩に卒業祝いを渡すことに。
莉菜とオリヴィアからはコーディネートを一式。
「おおー!!すっごくオシャレ!!」
「卒業したらトーナメントに制服で出場するの問題なので、着てもらえたらな〜と」
「ありがとう!絶対にこれ着て出場するよ」
白をベースとした薄手のチュニックとロングスカート、ベージュのカーディガン、黒のポーチ。
ポーチは小物入れって感じかな。
さすが莉菜とオリヴィアだな。センスが良いな。
よし、次は俺だな。
俺からは10種のマシュマロ詰め合わせ。
ブルーが何故か興味を示したやつ。
「わああ、美味しそう!!ありがとね!」
次に郁斗からはフランスで売っている"カリソン"というお菓子を卒業祝いとして用意していた。
いろいろとツッコミ所満載だけど、琴音先輩はこのお菓子がかなり好きみたいだ。
調べてみたらフランスのプロヴァンス地方の伝統菓子だとか。
一応、通販とかで日本でも販売しているけど、ラベルとかがフランス語で書かれてるし、郁斗もフランスで購入したと言っているので、この短期間にフランスまで行っていたらしい。
それに加えてもう一つ。これには何やら手紙らしきものが付いている。
こちらはフランスにお店を構えている紅茶専門店の紅茶でかなりのハイブランド商品みたい。
郁斗にこっそり聞いてみるとこれはロザリアさんがカリソンに合う紅茶ということでチョイスした琴音先輩への卒業祝い。
手紙はもちろん、ロザリアさんから琴音先輩に宛てられたもの。
家に帰ってからゆっくり読むみたい。
最後に薫先輩からは一輪の花、ピンクのカーネーションが贈られる。
琴音先輩は花言葉とかそういうの詳しいのかな。
俺はさっぱりだから意味とかはわからないけど、きっと薫先輩が琴音先輩に伝えたい想いは全て詰まっているんだろうな。
後でピンクのカーネーションについて調べてみると意味は「感謝」だった。
琴音先輩への卒業祝いを渡し終えたら早速、用意したお菓子やらジュースを食べて飲んでと琴音先輩の卒業をお祝いするパーティーが始まる。
「琴音先輩は卒業したらどうするんですか?大学には進学しないって薫先輩から聞いたんですけど」
「うーん、2ヶ月くらいはLv上げをして挑戦するつもり」
挑戦、その言葉が意味することは恐らくAランクへ昇格する為の挑戦。
BランクからAランクに昇格するには二つの方法が存在する。
一つは現役のAランクプレイヤーとバトルして勝つ。
もう一つは現役のAランクプレイヤーとバトルして勝つ、これと同等の実績を示すこと。
もちろん、BランクプレイヤーならAランク昇格に挑戦できるわけじゃない。
今までと同じで昇格条件は存在するので、まずはそれを満たす必要がある。
きっと琴音先輩は条件を既に満たしているのだろう。あとは少しでもLvを上げて挑戦するだけか。
ん?でも、何で2ヶ月くらいLv上げをして挑戦なんだ?もっと時間を掛けてLv上げをすればいいのに。
「何で2ヶ月後に挑戦するんですか?もっと時間掛けた方がよくないですか?」
あ、莉菜ナイス!それ俺も聞きたかった。
「え?えっとね、それはね…」
「まあ簡単に言うと琴音先輩はロザリアに先を越されたくないだけだ。確かロザリアは今年の夏前くらいに挑戦するんじゃないかって囁かれているしな。だから5月くらいに挑戦しないと先を越される可能性がある」
「そう!そうなの!ちょうど今、薫くんが言った通りなの!」
ああ、なるほど。琴音先輩とロザリアさんって親友でもあり、ライバルでもあるのか。
でも、それだと琴音先輩が5月頃に挑戦するとロザリアさんが知ったらロザリアも挑戦時期を早めるんじゃ。
「ロザリアはもう挑戦相手が誰かも詳しい日程も決まってるの!あ、これまだ非公開情報だから他言禁止だよ」
みんな俺と同じ疑問を抱いていたのか、なるほどって納得した様子だ。
まだ情報は非公開だけど、ロザリアさんはいろいろと決まってるのか。
それだと琴音先輩も決まってたりするのかな。
「琴音先輩はまだ決まっていないのですか?」
「え?あ、私はまだかな。ほら急いで決めないといけないわけじゃないし!ね?」
確かにそうだな。まだ2ヶ月あるわけだし、そこまで急ぐ必要ないもんな。
オリヴィアが聞いた最後の質問で郁斗、莉菜、オリヴィアの3人は気づいていた。
何か隠していると。それと同時に2ヶ月という期間がある人物との発言とも重なった。
そこまでして隠し通そうとする情報。2ヶ月後に一体何があるのか。
遠回しにまだ知るのは早いと言われているようなもの。
それを理解しているから3人ともこれ以上は何も聞かない。
約1名、嘘だと見抜けずに信じきっている者もいるが。
だが、そうとは知らない薫は内心、諦めモードだった。
あまりにも琴音が嘘をつくのが下手すぎるからだ。
これではフォローした意味が無くなる上に後輩たちにいろいろと気づかれてしまう可能性がある。
今、薫にできることはなるようにしかならないが、なんとかなると祈ること。
あとは、念の為にロザリアに話を通して口裏を合わせるくらい。
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