第185話 ピナの初陣

「次にシーハウスと白黒モノクロ財団の話だな。これは鬼灯とブルーが関係している」


 俺とブルー?それってやっぱり昇華スキルが関係してるのかな。それしか考えられないよな。

 秘匿義務のあることも恐らく昇華スキルに関することだろうし。

 ブルーがまだ空白スキルだった時に頑張っている様子見たリーフィアが何かを言おうとしてたけど、俺にはモヤがかかっているみたいで何も聞こえなかった。


「二階堂たちも薄々気づいてると思うが、八雷神やくさいかづちのかみは普通のスキルじゃない。ちょっと特殊なスキルだ」


「ああ、やっぱそうか!」


「でも、あれ神技じゃないのよね?」


「神技並に強力なスキルだと思いましたが、」


 あ、みんな普通では無いと気づいてたんだ。

 俺も昇華スキルに関しては超強力なスキルとしか把握してないからな。

 今度、薫先輩に詳しいこと教えてもらった方がいいかも。


「詳しい情報はBランクになったら解禁される」


「Bランクか。すぐには無理だな」


 郁斗の発言に莉菜とオリヴィアがコクコクと頷いている。

 俺もBランクに昇格するのはすぐには無理だし、気持ちはめっちゃわかる。

 ここからは昇格条件が厳しくなるからね。


「でも、八雷神が特殊なスキルだってことはわかったけど、それがどう関係してるんですか?」


 確かに。莉菜の疑問は尤もだな。どう関係してるのかな。


「少なくとも俺はあの類のスキルを12神以外のプレイヤーが使える話は聞いたことない」


「「「「!?」」」」


「実際に輝夜さんがジャスパーさんとのお手本バトルでも同じ類のスキルを使ってる。気づいてないだろうけど」


 八雷神と同じ昇華スキルを輝夜さんがあの時使っていた!?

 今、思い返しても全然わからない。

 郁斗たちも雰囲気的にわかってなさそう。

 あ、でもリーフィアに聞いたらわかるかな。

 後で聞いてみよう。


「まあもう察してるかもしれないが、鬼灯とブルーは準々決勝で八雷神を披露した。シーハウスから話がきたのはそれがソフィアさんの目に留まったってとこだろ。将来性有望どころか既に12神しか取得していないとされているスキルを使ったんだからな」


「オリヴィア、あんたよく蓮に勝てたわね」


「よくよく考えるとブルーってエグいスキル幾つも取得してるからな」


「はい…」


 え、もう何が何だか。

 とりあえず、この話はブルーにしてはいけない話だってのはわかった。

 話すと調子に乗ってリーフィアの心労が増えちゃうからね。ブルーの手綱はしっかりと握らないとね。



 その頃、ブルーはというと


 プル、プル、プル、プル、プル

 ピヨピヨ、ピヨピヨ!


 ダンジョンに挑戦するのを今か今かとピナと仲良く待っている。

 今日はダンジョンに挑戦しないとも知らずに。



 結論、今来ているスポンサー契約は実力や実績を一切考慮していない。

 受けても自分たちが苦しいだけでメリットが少ないから各自、もっと強くなって実力だけでなく、実績も残す必要がある。

 あとギルドとしての実績に関しては薫先輩に何か考えがあるみたいだった。

 それが何かまでは教えてもらえなかったけど。

 ただあと2ヶ月でもっと強くなれと言われた。

 2ヶ月後に何かイベントとかあったかな?

 特にこれといった心当たりはない。



 翌日、学園は休みの為、俺はダンジョンでピナのLv上げをすることに。

 挑戦するダンジョンは『嘆きの墓地』。

 まだゲームを始めたばかりの頃、ブルーしかいなかった時に初めて挑戦したFランクダンジョン。


 ARゴーグルを着けてダンジョンに入るとほぼ同時に足下でプルプルする子とその近くでピヨピヨ鳴いてる子が現れる。

 その後すぐにリーフィアが現れて、ピナに何かを教えてる。それをブルーがプルンプルと抗議している。

 うん、ブルーが先に変なことを教えたとかでリーフィアですらピナの教育は難易度が高いのだろう。

 ピナはピヨ?とリーフィアが何を言いたいのか理解できていないみたいだ。

 最終的にこれから少しずつ覚えていくということで話はついたみたいだ。


「よーし、じゃあピナ、今日は頑張ろうね!」


 ピヨ!

 プル!


「ブルー、今日は出番ないからリーフィアたちと一緒にお留守番でいいんだよ」


 プル、プルプル!

 ピヨ、ピヨピヨ

 プル!

 ピヨ!


 あ、うん、ピナの近くで見守りたいのね。

 たぶん、そんな感じの会話だと思う。

 まあ、邪魔しないならいっか。


「ブルー、ピナの邪魔だけはしないようにね」


 プル!


 しばらくブルーとピナが戯れているとグール2体が姿を現す。

 ピナの初陣、ブルーが心配そうに送り出す。

 当のピナはやる気に満ち溢れているけど。


「よし、ピナいくよ!プチウインド、プチファイア!」


 ここのグールは動きが遅いし、火属性が弱点。

 今のピナのステータスならそれなりのダメージが期待できる。

 実際、2体のグールのHPが一気に半分くらいまで削れた。

 次は物理攻撃を試してみよう。


「ピナ、つつく!」


 ピヨ!


 トテトテと小さな体で精一杯走り、グール1体を上手くつつく。

 見た感じ、そこまでダメージを与えられなさそうだが、蓋を開けてみたら被弾したグールのHPは残り3割を切るくらいまで削れた。

 ただ、攻撃が当たったことで満足し、動きを止めてしまった為にもう1体のグールから反撃を受け、吹き飛ばされる。



「ピナ、プチヒール!」


 ピナのステータスならプチヒール一回で総HPの8割ほど回復できるからすぐにHPは全回復する。

 ピナもそれほど堪えた様子は無い。

 ちょっとビックリした〜程度だ。

 まだ生まれたばかりとは思えないほどタフだな。


「ピナ、もう一度プチウインドとプチファイア!」


 二回目のプチウインドとプチファイアが2体のグールのHPを削り切る。

 こうしてピナの初陣は無事に勝利で終えることができた。

 その後もゾンビやグールを相手に勝利を重ねている。

 途中、気になって頑張って羽ばたくっていうスキルを使ってみたらパタパタ小さな羽を羽ばたかせるだけだった。

 空を飛べたりはなかった。

 それで落ち込んでいるピナを見かねたのか、ブルーがプルプルを何かしらアドバイス?をし始めた。

 ものすっごく嫌な予感がしたから急遽、リーフィアを召喚して通訳してもらった。

 そしたら俺の嫌な予感は見事に的中。

 ブルーは反省も兼ねてリーフィアとお留守番になった。

 そしたらピナが寂しそうにしていたから代わりにラグニアを召喚した。

 すると、すぐにピヨ!と元気になった。


 お留守番になったブルーは


 プルプル、プルプルプル!プル!


「ブルー、ピナに変なこと教えないで下さい。主も困っています」


 プルプルプル、プルプル


「力になりたいその気持ちはわかりますが、足下に魔法を放ち、その衝撃で勢いよくのはピナの思っているとは違います」


 リーフィアに諭されている。

 カーラ戦で見せた大ジャンブをピナに教えていたからだ。

 リーフィアの言う通り、同じでも意味が違う。




 日曜日もピナのLv上げに励むことにした。

 本当はブルーたちのLv上げをって考えてたんだけど、リーフィアからブルー自粛中反省中と言われたから急遽予定を変更してピナのLv上げをすることに。

 当のピナはすごく喜んでいる。

 昨日の初めてバトルしてみてどうやらハマったみたいだ。

 リーフィアはブルーで手一杯だから今日も昨日に引き続き、ラグニアにピナのバトルを見守ってもらう。


 途中、ピナがゾンビやグールの相手に飽きてしまったからボスのスケルトンナイトに挑戦した。

 ブルーは一回で攻略できなかったけど、ピナは回復魔法が使えるから一回であっさりと攻略した。

 その後も何回かボス戦を繰り返し、行った。

 宝箱は全て銀色で大したアイテムは無かったから全てショップで売却した。


 ダンジョンから家に帰ったピナはブルーに今日の武勇伝を自慢していて、ブルーが色々と複雑な心境で話を聞いていたらしい。

 俺はその事を後でリーフィアから教えてもらったからその場面に居合わせたわけじゃない。

 ちょっとだけその光景を見てみたかった気持ちもある。

 もったいないことをしたかな。

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