第184話 スポンサー契約
俺たちは無事に合流を果たした。
結果は俺・莉菜ペアは全身ファッションコーデ。
郁斗・オリヴィアは消え物と完全に正反対の意見に分かれた。
どうにか上手く纏まらないか考えていると薫先輩から俺に電話が。
「もしもし、どうされました?」
「ちょうど今、2開戦が終わったところでな。俺も合流するよ。どこにいる?」
「ホントですか!今、郁斗たちと
「りょーかい。10分くらいで着くと思う。着いたらまた連絡する」
「はい、ありがとうございます!」
「蓮、電話の相手って薫先輩か?」
「うん、来てくれるみたい。あと10分くらいで着くって」
「助かるわ。琴音先輩の好きな物とか全然わかんないし」
「はい、すごく助かります!」
その後、薫先輩とは無事に合流でき、現状どうなっているのかを話した。
すると少し思案してから幾つかのアイデアを出してくれる。
「俺は両方ともいいと思うけどな。折角だし、両方用意しよう。それに琴音先輩、服とか無頓着でトーナメントとかは必ず制服で出場してるからな。私服より制服の方がオシャレだとか。卒業したら制服で出場はマズイし、ちょうどいい機会だろ」
「それじゃ、私とオリヴィアで琴音先輩と近いうちに女子会やらないとね」
「はい!楽しみです!」
「そんじゃそっちは姫島とオリヴィアに頼むわ。消え物については俺ら男3人で考えるか。鬼灯たちの方では具体的な物、何か出なかったのか?」
「入浴剤って案が出たんですけど、肌トラブルの可能性があるから無しにして、そっからは全然」
「ああ、あの人化粧品とか肌荒れするから絶対に使いたくない!って人だから無しにして正解だな」
なんか薫先輩がすごい琴音先輩に詳しい。
それにいつも通り、すごく頼もしい。
プルル、プルル、
ん?また電話だ。誰だろう?…学園長?え、何で?
「鬼灯、電話出なくていいのか?」
「え、あ、今、出ます」
「もしもし、鬼灯です」
「突然すまないね。今、時間大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です」
「実はね、私のところに鬼姫のスポンサーになりたいという企業から連絡があった。そこでギルドマスターの鬼灯くんにこうして電話をしたわけさ」
「…………スポンサーですか?」
「そう。悪い話では無いと思うし、時間がある時に学園長室まで来てくれるかな?できれば、メンバー全員で」
「わかりました。ちょっと待ってください」
電話をミュートに切り替え、こちらの声が学園長に聞こえないようにして、内容をみんなに伝える。
そして話が話だけに琴音先輩への卒業祝い選びは一時中断。
すぐに学園長室へ向かった方がいいのではとなる。
今から向かってもいいかと学園長に電話で伝えると快く快諾してくれた。
5人揃って
コンコンコン
「鬼灯です」
「どうぞ、入りたまえ」
「失礼します!」
5人揃って来るようにって話だけど、具体的にどういう話をするんだろう。
薫先輩も個人としてはスポンサー契約を結んでないみたいだから詳しいことはわからないらしい。
学園長室の中には学園長だけ。
スポンサー契約を名乗り出た企業の人がいるわけじゃないのか。あ、いや、よくよく考えたらさすがにいないか。
「急に呼び出してすまなかったね」
「いえ、大丈夫です」
「はは、立ち話もあれだからソファーにでも座って」
「ありがとうございます」
学園長とはリベリオンとのギルドバトルをする上でメールのやり取りとかはしたことあるけど、直接話をしたことは無かったよな。
なんか緊張するな。
「単刀直入に本題に入るとしよう。鬼姫にスポンサー契約をしたいと話が来ているだけなら鬼灯くん1人に来てもらうだけでいいのだが、全員に来てもらったのは複数の企業から打診が来ているからだ」
「…………」
複数?え、何で?
薫先輩はBランクだけど、他はCランクで特筆した実績も無いと思うけど。
もしかしてどの企業とスポンサー契約を結ぶか選べって話!?
「基本的にギルドとスポンサー契約をする=所属するプレイヤーとも契約するということになる。君たちは個人ではスポンサー契約をしていないから面倒事にはならないが、こういうのは後々面倒になる。早めに決めておいた方がいいだろうね」
「で、どの企業から話が来てるんだ?肝心なのはそこだろ?」
うわ、学園長相手に薫先輩、タメ口!
さすがに怒られるんじゃ…。
「はは、確かにね。失礼した。一つ目の企業はシーハウス。ギルド、ソフィア海賊団とスポンサー契約を結んでいる船舶関連の大企業」
え、あのソフィア海賊団とスポンサー契約しているシーハウスから話が!?
何で?鬼姫ってそこまで実績のあるギルドじゃないのに。
ソフィア海賊団は12神序列8位のソフィアさんがギルドマスターのギルド。
実力、実績ともに兼ね備えた世界トップクラスのギルド。
シーハウスもソフィア海賊団以外のギルドとはスポンサー契約をしていないし、ますます鬼姫に話が来た理由がわからない。
(生保内薫くん、君なら何故鬼姫にスポンサー契約の話が来たのか。何故、メンバー全員を呼んだのかわかるだろう?君はどういう答えを出すのかな?)
(ソフィア海賊団のスポンサー企業から話が来てる。あの人が根回しきてるよな、これ。面倒だな、どう断るかが大事になるな)
「他にも幾つかの中小企業から話が来ている。それと
あの
さっきからずっと気になってるけど、何で鬼姫にそんな話が来るの?
「えっと学園長、話遮ってすみません。一つ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「どうぞ」
「何で鬼姫にそんな話が来てるんですか?実力、実績ともに足りてない。俄に信じられないです」
郁斗、ナイス!それ俺も聞きたかったけど、聞きづらくてさ。助かる。
「そこは私にもわからない。ただ、私はスポンサー契約の話が来ているという事実のみを君たちには伝えているだけだよ」
「……」
(上手く猫被ってるな。このタイミングで話が来る理由か。そんなのわかりきってる)
「学園長、その話には何かしら条件があるだろ?例えば、琴音先輩の鬼姫加入とか」
「さすがに鋭いね。その通りだよ。まあその条件を提示しているのはシーハウスと
「はあ、やっぱな。それなら断る。その魂胆には乗らない」
「やはりそうなるか。では、私から先方には断りを入れておくよ」
えっと、全然話についていけない。
とりあえず、薫先輩が話を断ったことだけ理解できた。理由まではわからないけど、企業側にも当然だけど、何かしらの思惑があるみたいだし、ここは薫先輩の判断に従おう。
学園長もこの場に薫先輩に居て欲しいからメンバー全員って言い方をしたのかな?
うーん、それなら薫先輩と2人でって言えば解決の気がする。
その後、薫先輩が場所を変えて説明をして下さるとのことで学園長を後にし、ゲーム室1に移動する。
ゲーム室1を使う許可は今さっき学園長に口頭でもらった。薫先輩が。
「悪かったな。折角のスポンサー契約を台無しにして。今から具体的な理由を話したいとこだが、秘匿義務にも抵触するから全部は話せない」
秘匿義務ってことはゲームが関係しているのかな。
俺が知ってる秘匿義務は潜在解放に関することだけ。
…ん?あ、そういえば何か秘匿義務なんちゃらの通知が来ていたような。
トーナメントのことで頭が一杯でまだ見てなかった。
まあ内容は想像できるけど。
「まず今回、鬼姫にスポンサー契約の話が来た理由の一つは琴音先輩がもうすぐ卒業するから。琴音先輩が卒業を機に鬼姫に加入するんじゃないかって噂が広まっている。それを聞きつけた中小企業がまず名乗りを上げたってとこだろう」
そんな噂が、全然知らなかった。
琴音先輩なら大歓迎だけど、それの何が問題なんだろう?
「こういう言い方はしたく無いが、はっきり言って鬼姫のスポンサーはそれなりの企業じゃなきゃダメだ。将来性有望株が揃っている。まだ実績の乏しい内に決めるのは早すぎる。それに今、話を持ち掛けている企業の大半が琴音先輩目的だ」
「はい!折角話をいただいたのに簡単に断ったりしたら鬼姫の外聞が悪くなったりしませんか?」
「普通なら姫島の言う通りになる。だけど、こうなる可能性があったから予め手を打ってあるから問題ない」
「えっと、何をどうされたのか聞いてもいいですか?」
「鬼灯は輝夜さんから聞いてると思ったけど、その感じ何も聞いてないのか。輝夜さんとジャスパーさんに12神の威厳を最大限に活用してもらう手筈になってる」
「「「「……」」」」
誰もが言葉を失った。
何故、鬼姫の為に世界トップツーが動くのか。
誰もが理解できないでいるが、これ以上ないくらいに頼もしいことは確かだ。
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