第183話 卒業祝いを選ぼう!

 白黒モノクロ学園学年別個人トーナメント1年生の部はオリヴィアの優勝で幕を閉じる。

 俺は結果、準優勝だったけど、最初からお祈りプレイとかしてたし妥当かなって思ってる。

 今日は薫先輩たち2年生の部1回戦と2回戦が行われるけど、薫先輩からどうせ勝つから応援はいらないと言われた。そんな時間あるなら琴音先輩への卒業祝いをどうするか考えろとのこと。

 正に仰る通り。薫先輩が1、2回戦で負けるところが想像できないな。


 てなわけで、俺は郁斗たちと一緒に琴音先輩への卒業祝いを探しに白黒モノクロモールというショッピングモールにやって来ている。もちろん、私服で。じゃないと目立つと最近、発覚したから。


 目立たないように一度家に帰って着替えてから再集合したにも関わらず、何故か周りの人たちから注目を集めている。

 きっと郁斗や莉菜みたいな有名人がいるからだな。


 おい、あれって。

 マジで本物じゃね?

 何でここにいるんだ?

 今日は2年の本戦だろ?仲間の応援はいいのかよ。

 応援せずとも勝つと。

 これが強者の余裕か。

 さすが鬼姫だな。

 ああ。

 だな。

 すげえな。

 見習いたいぜ。


 郁斗と莉菜がいつもみたいに目立っているのかと思ったらギルドとして目立ってたみたい。

 金曜日の夕方だし、人も多い。目立たないようにするのはもう無理だし、迷惑にならないように心掛けよう。


「注目されてるけど、周りの人たちの迷惑にならないように行動しよ」


「お、さすがギルマス!いいこと言うね」


「郁斗茶化さない。まあ私たちはいつも通りでいいでしょ?」


「私も必要最低限、いつも通り気をつけていればいいと思います!」


 うん、特に気負ってないみたいだし、安心。

 それにここではARフィールドが展開されていないから学園内とは違って平和だ。

 俺にとっても安心できる環境だな。


 プル、プル、プル


 ……気のせいかな。俺の足下で何かプルって動いた気がするな。

 いや、今はARゴーグルを付けていないし、ここではARフィールドが展開されていない筈だし、気のせいだよな。


 プル、プル、プル

 ピヨ!ピヨピヨ!


 遂にピヨって鳴く声まで聞こえるようになった。

 おかしいな。そんなわけないのに。

 それに何でだろう。急に周りの人たちから可愛いって声が上がり始めたぞ。

 すると一瞬ではあったが、謎の影が現われて俺の足下にいたであろう何かを回収して消えた。

 あまりの早業に状況を理解できない人が多数。寧ろ俺以外に理解できたのは郁斗たちくらいだろう。

 恐らく、リーフィアがブルーとピナを一瞬で回収して消えたのだ。

 それにしても何でブルーとピナはここに現われることができたんだ?


「蓮、随分と苦労してるな。ブルーたちが現われたってことはARフィールドが展開されてるわけだよな。何かのイベントか?」


「ああ、それならきっとモンスターの触れ合い会よ。確か今日だったと思うし」


「モンスターの触れ合い会?どういうイベントですか?」


「プレイヤーが集まってモンスターと触れ合える場を設けるイベント。ホントにそのままよ」


「ああ、だからARフィールドが展開されてて、ブルーとピナが現われたのか」


「勝手に現われるモンスターってマジでブルーくらいだと思ってたけど、ピナもブルーに似てきたのか?」


「んー、たぶんブルーに懐いてるから一緒について来ただけだと思うよ」


 今頃、リーフィアにしっかりと教育を施されているだろう。

 ピナ、ブルーには見習ったらダメなとこもたくさんあるからね。

 リーフィアにしっかりと教えてもらうんだよ。


「んで、琴音先輩への卒業祝い何にする?」


「そうね、私たち根本的に琴音先輩のことあまり知らないし、何がいいのか…」


「そうですね。薫先輩なら詳しそうですが」


「今、ここにいない人を頼っても仕方ないしね。とりあえず、これっていう候補を探そう」



 そういうわけで2人1組になって琴音先輩への卒業祝い候補を探すことに。

 組み合わせは俺と莉菜、郁斗とオリヴィアになった。

 男女ペアの方が何かといいんじゃないかという考えから。


 俺と莉菜は何故か衣料品売り場にいる。

 何でこうなったのかというと、莉菜が「あ、あの服可愛い!」とマネキンに引き寄せられた結果だ。

 こうして俺と莉菜は婦人服を取り扱っている専門店に来ている。

 完全に莉菜は目的を忘れている気がする。

 あちこち見て回って「あ、これ可愛い!あ、これも!」とはしゃいでいる。

 もしかして服を卒業祝いで渡すつもりかな?そもそもサイズとか知ってるの?

 いや、莉菜ならモデルとしての経験から見ただけでサイズがわかるとかは、さすがにないな。


「蓮、これとかどう?可愛くない?」


「えっと、琴音先輩への卒業祝いを探してるってわかってる?」


「?もちろん。琴音先輩への卒業祝いとしてどう?って聞いてるの」


「デザインはすごくオシャレだと思うけど、サイズはどうするの?サイズが合わないはさすがに問題だよ」


「ああ、それね。それなら私とオリヴィアで琴音先輩を誘って女子会でもして上手く聞き出す!」


「あ、うん。じゃあ、そっちはお願いね。デザインとかそっち方面の話なら付き合うから」


「任せといて!」



 一方で郁斗とオリヴィアのペアはというと


「どうするよ?マジで」


「どうしましょう?困りました」


「とりあえず、良さげな店を探すってことにしたけどさ、どこも一つの店を魅力的で選べねえ!」


 可愛い服の誘惑にあっさりと負けた莉菜と違い、どの店も魅力的で選べないでいる郁斗とオリヴィア。

 店で選べないなら物で選ぶ作戦にシフト。

 先にどういった物がいいのかを考えることに。

 ただ、このまま突っ立たまま考えるのもあれなので、2人はフードコートに移動することに。


「何注文する?俺はカフェオレかな」


「私はメロンソーダで」


「へえ、意外だな。オリヴィアは緑茶とかもうちょい日本っぽい飲み物を注文すると思ったよ」


「日本では馴染みがあるかもしれませんが、アメリカ、少なくても私が住んでいた地域では緑色の飲み物は馴染みがありませんよ。こっちに来て驚きました!試しに飲んでみたらとても美味しかったので」


「へえ、そうなのか。それは知らなかった」


「そういう郁斗は甘党なのですか?」


「ああ、やっぱゲームに集中力は欠かせないからな。糖分補給も兼ねてる。まあゲーム関係なく、甘いのは好きだけど」


 注文した品を受け取り、空いている席に座り一息つく。

 一息ついたところで琴音先輩への卒業祝いに関する話に戻る。


「やっぱこういうのって合う合わないあるし、消え物の方がいいんじゃね?」


「そうですね。それなら入浴剤とかどうですか?お風呂嫌いの女性はいませんし」


「ああ、入浴剤か。使う使わないは人それぞれの好みだし、一番の問題は肌に合わない可能性があるってとこだな。女性なら尚更肌トラブルは避けたいだろうし」


「入浴剤は肌に悪いのですか?入浴剤を使うといいといった話ばかり耳にしますが」


「いや、入浴剤自体に問題はないよ。化粧品と同じで肌に合う、合わないがあるってだけ。あと、入浴剤を使うといいって話だけど、それきっと入浴とごちゃ混ぜになってるな。最近、シャワーだけで済ませて入浴しない人が増えてるからそういう話を聞くんだろうよ。実際に健康面で大きな影響が出るしな」


「そうなのですか!?初めて知りました」


「あ、めっちゃ話逸れたな。肌トラブルを引き起こす可能性がある入浴剤や化粧品とかはとりあえず無しの方向でいいよな?」


「はい、それで問題ありません。ですが、そうなると何が…」


 消え物がいいのではと話が進んだものの具体的な物が何一つ出てこない。

 その後も2人でああだこうだ話をするもこれだ!という物は出てこず、結局これといった物が何も無い状態で蓮と莉菜と合流することに。

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