第181話 ラグニアVSアルマ

 準決勝第2試合はオリヴィアが勝った。

 つまり、決定戦の相手はオリヴィア。

 ギルドマスター決定戦でのリベンジになるな。

 選出どうしような。うーん。


 プル!プル!プル!プル!


 俺の足下でさっきからプルプルして自己主張の激しい子がいる。

 うん、出たいんだね。


「ブルーは確定で2体目ね」


 プル!プルン!


 ブルー、ピナが寂しそうにピヨ…ってしてるよ。


 プル!?プルン、プルプル、

 ピヨ!ピヨピヨ、ピヨ!

 プル、プルプル


 卵の時よりも面倒見がいいな。

 ピナが可愛いからって現金なやつだな。


 まあブルーとピナは一旦置いといて、もう1体の選出を考えないと。

 ここまでブルーを選出したバトルではリーフィアを選出してるけど、どうしような。

 アルマ相手だと手数勝負になる気もするしな。

 スキル数に圧倒的な差があるリーフィアだと厳しいかな。

 いや、リーフィアなら騎士王の風刃閃や天空斬りでどうにかできるか。

 でも、無難に手数勝負するならラグニアだよな。

 うーん、悩むな。


 グルグル、グル!


 ラグニアも出たいんだね。

 リーフィアは大丈夫そうかな。

 よし、決めた。


「ラグニア、1体目は頼んだよ!」


 ギルドマスター決定戦と全く同じ選出になったな。

 ラグニアの切り札にはまだ気づかれていない筈だし、アルマ相手なら確実に倒してくれると思う。

 ただ、カーラが1体目で出てくるとヤバい。

 そこは祈るしかないな。

 あと問題はどのスキルをコピーするか。


 グル、グルグルグル!


「主、ラグニアはブルーの八雷神をコピーしたいと言っています」


「え?八雷神を!?あれってコピーできるの?」


「わかりません。ですので、一度試してみるといいかと」



『八雷神はコピーできません』


 あ、できないのか。

 やっぱり昇華スキルって特別なのかな。


 グル…


 落ち込んでるラグニアには悪いけど、別のスキルじゃないと無理みたい。

 今までは使い勝手の良さから空駆をコピーしていたけど、今回はどうしような。

 アルマは飛べるし、空駆の方が…。

 いや、こっちから空中戦を仕掛けなければ、たぶん積極的に飛んだりしないだろ。

 じゃあ、コピーするスキルはブルーの……。



「遂に本日、最後の試合!!1年生の部の決勝戦です!!!!ギルド鬼姫のギルドマスター、鬼灯蓮とそのメンバー、オリヴィア・ブラウンの対決!両者がいよいよバトルステージに入場です!」



 いよいよ、始まるな。

 ここまで楽なバトルは何一つ無かった。

 これから始まる決勝戦もきっと楽じゃない。

 それに俺は一度オリヴィアに負けている。

 勝つ為に今の俺にできることはラグニアとブルーを信じて戦うことだけだ。


『鬼灯蓮VSオリヴィア・ブラウン バトルSTART』


「出でよ、ラグニア!」


「お願いします、アルマ!」


 やっぱりオリヴィアの1体目はアルマか。

 カーラでも問題は無いけど、アルマの方が助かるな。


「アルマ、デュアルエッジモード、エネルギー充填、ミサイル発射、ミサイル補填、ダブルスラッシュ!」


「ラグニア、カオスオーガフレイムでミサイルを撃ち落とせ!それからカオスクロー!」


 混沌属性にはデバフ・状態異常付与以外にも追加効果がある。

 これはオリヴィアも知らない。

 デバフ・状態異常が機械種には効かないから油断しているだろう。きっと上手く刺さる。


(ミサイル発射は全弾カオスオーガフレイムで、ダブルスラッシュはカオスクローで相殺されました。やっぱりラグニアは強いですね)


「ラグニア、フレイムクロー、ダーククロー!」


「アルマ、トリプルスラッシュ!」


「追加でライトクロー!」


 三連撃のトリプルスラッシュに対してフレイムクローとダーククローは単発のスキル。

 片手でそれぞれ同時に発動していた為、あのままでは二撃目までしか防ぎきれなかったが、咄嗟にライトクローを使ったことで辛うじで防げた。


 この時、オリヴィアには一つだけ気がかりなことがあった。

 何故、蓮はバトル開始直後にカオスオーガフレイムとカオスクローを使ったのか。

 勝負どころまで温存すると予想していたスキルをあっさりと使ってきた。

 もちろん、使うタイミングが開始早々なら勝負どころが来るまでの間にクールタイムから明けていると判断して使った可能性はある。

 もし、蓮がそのように考えてカオスオーガフレイムとカオスクローを使ったのならクールタイムはオリヴィアの予想よりも短い可能性が浮上してきた。


「ラグニア、メガファイア、メガシャイン!」


「アルマ、エネルギーシールド展開、エネルギースラッシュ!」


「ラグニア、カオスブレイク!!」


「!ここで!?」


 ここでカオスブレイクを使えば、混沌属性のスキルは全てクールタイムに入っている筈。

 ラグニアの切り札だろう混沌属性のスキルを序盤にあっさりと使い果たしている。


(この序盤で既に勝負を焦っている?いえ、それはありえません。蓮とラグニアは地道で我慢強く戦えます。だとしたら蓮は一体何を狙って……)


 パリン!!


「嘘…」


 今の音はラグニアのカオスブレイクによってエネルギーシールドが破壊された音。

 これを信じられないといった顔をしているオリヴィア。

 それも無理はない。


 ラグニアのカオスブレイクで破壊されたのはエネルギースラッシュの方だった。

 だが、エネルギースラッシュを破壊したカオスブレイクは更にエネルギーシールドをも破壊した。

 一度に破壊できるスキルの数は一つだけ。

 一つのブレイク系スキルで二つ以上、破壊した。

 これは本来、ありえないこと。

 ここでこれまで感じていた違和感が明確な形となる。

 ラグニアは何かしらの方法でスキルを強化している。

 そう考えるとカオスブレイクでエネルギースラッシュとエネルギーシールドが破壊されたことにも説明がつく。

 ただ、どうやって強化しているのか。それだけが見当も付かない。


「ラグニア、ライトファング!」


「アルマ、エネルギー大噴出、リペア!」


 ドカーン!!!


 フィールド上でアルマが大爆発を巻き起こす。

 ライトファングで噛みつく寸前で爆発が起きたことでラグニアも巻き込まれている。

 両モンスター共に少なくないダメージを受けていると思われるが、共に回復手段がある。

 現にアルマは即座にリペアで回復している。

 爆煙が晴れるとラグニアもまたプチヒールでHPを回復していた。

 それでもアルマはマックスまで回復はできていない。


(ここは距離を取って近接戦を避けましょう)


「アルマ、飛んで下さい!それからデュアルショットモード、ダブルショット!」


「ラグニア、躱してメガダーク!」


「アルマも躱してトリプルショット!!」


「ラグニア、カオスオーガフレイム!」


「アルマ、ミサイル発射!」


「ラグニア、全部躱して!」


 遠距離攻撃の撃ち合いとなると若干だが、アルマに分がある。


(何故、空駆を使って接近戦に持ち込まないのですか?もしかして空駆をコピーしてない?だとしたら蓮はラグニアに何をコピー……。ブルーの八雷神ですか!だから序盤から混沌属性のスキルを使えたのですね!読めましたよ、蓮の切り札は!!そうなるとこのまま遠距離で撃ち合うのは蓮の思惑通りですね)


「アルマ、デュアルエッジモード、ダブルスラッシュ!」


「?まあいいか。ラグニア、カオスクロー!!」


 バトル開始直後と全く同じ。アルマの双剣から繰り出される二連撃は両手でカオスクローを発動させたラグニアが上手く相殺するが、一つだけ違うことが起きる。

 最初は全くの互角だったにも関わらず、今はラグニアが押し勝った。


「ラグニア、シャインダイブ、フレイムクロー、ライトクロー!!」


「アルマ、トリプルスラッシュ、エネルギー解放、トリプルスラッシュ!!」


 よし、エネルギー解放を使った。

 ここで一気に攻める!!


「ラグニア、カオスブレイク!!」


「アルマ、飛ん…。リペア、スナイパーモード、レーザーキャノン!」


「!?」


 え、飛んで逃げるのかと思ったけど、まさかこの至近距離でスナイパーモードからのレーザーキャノン!?これはさすがに意表を突かれたな。でも、問題ない。

 万が一に備えてあのスキルをコピーしといて正解だったな。


「ラグニア、ディバインシールド!!」


「え?ディバインシールド?」


 この距離でしかも隙の大きいスナイパーモードから放たれる超強力な一撃。

 直撃したらヤバかっただろうけど、|たディバインシールドなら受けきれる。


「ラグニア、メガファイア、メガシャイン、メガダーク、シャインダイブ、ライトファング、ダーククロー!!」


 距離を詰められたスナイパーは弱い。スナイパーライフルはそもそも近接戦をする前提で作られていないから当然だ。

 敢えて至近距離でスナイパーモードからレーザーキャノンを放ったアルマだが、それで倒しきれないとどうなるかは容易に想像できる。


『アルマ DOWN』

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