第171話 真打ち登場!

「あとは頼んだよ、ガイア!」


「出でよ、コン!」


 召喚と同時に光り輝くオーラを身に纏うガイア。

 それを見て郁斗は自分の推測が正しかったことを確信する。

 ガイアは英雄系の人類種に間違いないと。

 直前にアイリスが結果的に倒れている。その過程に何があったか関係ない。

 既に味方モンスターが倒されているなら英雄系の人類種は召喚と同時に全ステータスを2倍にする。


「ならこっちも!コン、稲荷狐の祈り、稲荷狐の祟り、降臨・稲荷神社、参の型!あとダメ元で肆の型!」


「稲荷流狐剣術、参の型 夜桜、肆の型 色即是空!」


 ゴーストタウンが展開されていたフィールドが消え、狐を祀る神社が出現すると、次の瞬間、夜の帳が下りて満開の桜が花開く。

 これによりコンの全ステータスが2倍になる。


 リベリオンとのギルドバトルではルーカスのファムが使ったドラゴンフォースすら打ち消した肆の型、色即是空だが、ガイアに付与されたバフは打ち消せなかった。

 これには郁斗もやっぱりといった感じ。


 英雄系の人類種が召喚と同時に自身の全ステータスを2倍にするのはバフに該当しない。ドラゴンフォースと同じ強化に該当する。それだけなら打ち消せるのだが、英雄系の人類種のこれには打ち消せし不可の効果がある。

 その為、コンの色即是空でも打ち消すことは不可能。


「ガイア、大地崩壊!」


「うお!マジか!コン、捌の型!」


「稲荷流狐剣術、捌の型 爆轟!」


 ガイアが持っている剣を地面に突き刺すとそこから地面が崩れていく。崩壊の波は衝撃波を伴いながら辺り一帯を燃焼させる爆轟で相殺に成功。

 いきなり2回戦では見せなかったスキルを使ってきた。あれだけの大逆転勝利にも関わらず、まだ温存しているスキルがあることに郁斗は驚く。


「ガイア、大地の聖剣、天閃!」


「コン、影分身、壱の型、陸の型、陽炎、蜃気楼!」


「稲荷流狐剣術、壱の型 迦具土、陸の型 御神楽・稲荷突き!」


 コン本体と影分身、総勢9体が一斉に襲いかかるが、大地を操ることのできる大地の聖剣で大地を隆起させて9体全て宙に浮かせたところを斬撃を飛ばすスキル天閃で全ての影分身を消し去る。

 コンが陽炎と蜃気楼のコンボを発動すると厄介なのは既に周知の事実。なら使わせなければいい。

 このコンボの中核を成しているのは影分身。

 影分身がいなくなれば、使われても長時間の発動は無理。まずは厄介な影分身を消し去るのは当然。

 それは郁斗だって理解しているし、逆の立場ならきっと自分でも同じことをする。

 だからにするにはこれ以上ないくらい効果覿面。


「コン、玖の型!」


「稲荷流狐剣術、玖の型 流星火!」


「え、その体勢で!?」


 まだコン本体は宙に浮いている状態。この体勢から反撃があるとしたら狐火や鬼火といった遠距離攻撃くらいだと考えていたから完全に不意をつかれた。

 しかも流星火は一瞬にして間合いに入って斬るスキル。

 相手視点だとホントに気づいたら斬られていた、そういうスキル。

 最も警戒していたスキル、使わせらないように策を練ったのに全て無に帰す。


(ああ、宙に浮いた状態でも使えるとか知らない!!初見殺しにも限度があるでしょ!こうなるとを使われる前に倒さないとだな)


「ガイア、大地の鉄槌!」


「コン、漆ノ型!」


「稲荷流狐剣術、漆ノ型 狐高・呑!」


「よし!ガイア、ガイアブレイク!」


「ならコン、伍の型!」


「稲荷流狐剣術、伍の型 紅炎・稲荷!」


「まだまだ!ガイア、大地の祝福、ガイアブラスター!」


(あ、これ絶空の発動条件に気づかれてるな。ヤバいかも)


 激しい攻防の末、ガイアの放ったガイアブラスターがコンに直撃。

 大地の鉄槌でコンの防御スキル漆ノ型 狐高・呑を、ガイアブレイクで伍の型 紅炎・稲荷を使わせて迎撃させることでガイアの高火力攻撃を防ぐ術を失わせる。


 郁斗のコン対策は万全に行っただけに死角はない。

 一部例外として玖の型 流星火はあれだったけど。



(クソッ、今のでコンのHPが残り4割まで削られた。この感じだと弐の型 忌火の効果も気づいてるよな。なら絶空は使えない前提で考えるべきか。そう簡単には勝たせてもらえなさそうだ)


(コンのスキルで最も警戒しないといけないのは流星火と忌火のコンボ。僕の推測が正しければ、絶空を除く全ての型のスキルを使えば、絶空が使えるようになる。そうじゃないならガイアブラスターに被弾する前に使っただろうし)



 郁斗にはガイアを倒す術が既に絶空を使うしか無い状況。ルーカスのファム戦を見てしっかりと対策を練られている。

 一方で郁斗はガイアの手の内を全て把握しているとは言い難い。

 ここまで見せたスキルで全てかもしれないし、そうじゃないかもしれない。常に未知のスキルの存在を警戒し続けないといけない。状況はかなり郁斗に不利。


 今更になってどこかで弐の型 忌火を使っておくべきだったかと後悔もするが、コン唯一の回復スキル。

 やたらめったら使えない。

 一応、フィールド展開と同時にこっそり使ったスキルがもしかしたらこの状況を打開できるかもだが、今使っても防がれて終わる。

 使い所が大事になる。


「コン、狐火、鬼火!」


「ガイア、大地の聖剣で防いで!」


「ッ!」


(完全に手詰まりかな。念の為にもう少し様子を見よう。それで問題なさそうなら決める!)


 それからバトルは膠着状態に陥ったように見えるが、実際はお互いに動こうとしていないだけ。

 正確には郁斗は動くタイミングを探していて、星宮聡龍は様子見に徹している。


「ガイア、ガイアフォース!」


 先に動いたのは星宮聡龍。

 それを今か今かと待っていたのは郁斗。


「コン、玖の型!」


「稲荷流狐剣術、玖の型 ――――」


 土属性の全体攻撃スキル、ガイアフォース。もちろんフィールド全体が攻撃範囲だが、ガイアの周辺だけ範囲外となる。


「うん、それしかないよね。ガイア、ガイアブレイク!」


「コン、今だ!伍の型、捌の型、弐の型!」


「稲荷流狐剣術、伍の型 紅炎・稲荷、捌の型 爆轟、弐の型 忌火!」


 コンは玖の型 流星火を使うフリだけして、実は発動すらしていなかった。

 すると次の瞬間、何の前触れもなくコンとガイアの居場所が入れ替わる。

 これは稲荷の境界線の効果だが、鬼姫のギルドマスター決定戦での郁斗のバトルを見ていない星宮聡龍にとってこれは初見のスキル。

 更に居場所が入れ替わる時、体の向きは入れ替わる前のモンスターと同じになることを利用してコンはガイアに背を向けていた。


 背を向けたままガイアと入れ替わったので、今度はガイアがコンに背を向ける形となり、背後から捌の型 爆轟が直撃する。

 それに加えてコンのHPが忌火の効果で回復する。


(あ、ヤバい!絶空が来る!あれに頼る展開にはしたくなかったけど、仕方ない!)


「これで決まりだ!コン、拾の型!」


「稲荷流狐剣術、拾の型 奥義 絶空!」


「ガイア、アジャスト・フォートレス!」


(防御スキル!まさか絶空を防げるのか?)


 ガイアのHPは




 まだ3割ほど残っていたが、


「コン、今度こそ玖の型!」


「稲荷流狐剣術、玖の型 流星火!」



『ガイア DOWN』


(ふう、なんとか勝てた)


(あああ!!絶空を防いでもまだ流星火が使えるってことはさっきのはフリか!確実に流星火の発動を確認してからガイアブレイクを放つべきだったか)

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