第152話 ステラ&輝夜の実況解説⑤
「2勝2敗で迎える第5試合、両ギルド最後のメンバーがバトルステージに登場しました。泣いても笑ってもこれが最後のバトル。二階堂郁斗VSルーカス・ガルシア!両者、1体目のモンスターを召喚します!」
「ネメアは予想通りね。だけど、カレンは初めて見る。ルーカスくんってDトーナメントだとファムを1体目に出して1回戦から決勝戦までファムだけで2体抜きしてたから全くの情報0。未知のモンスター相手にどう戦うのかしら?」
「まずはゴーストタウンを展開し、武器の顕現といつもの流れですが、ここに差し込むように酒呑の盃なるスキルを発動!フィールド全体を幻で覆いました!それに紛れる形でカレン自身も姿を隠す!」
「ブラックホールか、なかなか便利なスキルね。幻を全て吸い込んじゃったわね」
「おおお!鎌と刀の激突からの鎖による拘束!かと思いきや灼熱の炎で溶かした!!それでも執念でくらいつきカレンにデバフや状態異常を付与することに成功!!」
「へえ、あれって溶けるのね。…ん?デバフや状態異常付与されたの?」
「え?それはどういう…。あ!失念していました。確か私の持つデータではゴーストタウンはバフ・デバフ、それに状態異常を敵味方関係なく反転する効果を持っていた筈。ですが、このデータはゴーストタウンのスキルLvが1の時のもの。恐らくLvが上がったことで効果にも何かしらの変化があったのかと」
「よくあるのはデメリットだけが消えるやつね。偶にそれに加えて効果は増えるなんてこともあるけど。これルーカスくんは頭に入れておかないといけないことが増えてちょっと大変かな」
「ここで妖気解放です!封じたのはブラックホール!」
「酒呑の盃を使うならブラックホールは邪魔でしかないしね。クールタイム無視は紅・鬼斬りか。願わくばこれで倒しきりたいって想いが伝わってくるわね」
「姿を隠しながら全方位からランダムの攻撃!完全に防戦一方!この状況を打開する手立てはあるのか!?」
「そんなの全方位に同時に攻撃を飛ばせば問題無いわよ」
「…それできるモンスターってそんなにいませんよ」
「だから擬似的にそれを再現するの。私ならそうする。その方が相手を罠に嵌められるから」
「罠?一体どういう――――」
「ほら?郁斗くんがちょうどやったわよ。きっと罠も用意してるわよ。後はかかるのを待つ」
「え?爆発!?」
「あの感じランドマインかしら?所謂、地雷ね。正面に設置していた罠にいきなりかかってくれたのは郁斗くんとしてはありがたいわね。逆にルーカスくんは運が悪い」
「なるほど!そしてランドマインと追撃のグリムリーパーで大ダメージをカレンが負った途端に幻が消えました!ある程度ダメージを負うと解除される類いのスキルだったわけですね」
「!?勝負に出たわね」
「覚醒スキルの持続時間はおよそ5分といったところ。ですが、覚醒強化スキルを取得している場合、その倍、10分ほど持続します。時間切れまで粘るか難しい判断が迫られます!」
「それに覚醒とかドラゴンフォースの全ステータス2倍ってバフ扱いじゃないからゴーストタウンで反転もできないみたいね。このステータス差で合技の直撃は間違いなく倒れるわね。躱す素振りを見せないけど、何か狙いでもあるのかしら?」
「狙いですか?可能性としては影渡りからの奇襲でしょうか?ですが、既に影渡りの存在を知っている相手に正面から使ってもカウンターの餌食になるだけでは、…なんと!」
「へえ、これは郁斗くんの方が上を行ったね。今のはゴーストタウンの効果かまだ見せていない未知のスキルか。どっちにしろここまで温存していたのはファインプレーね」
「しかし、最後の最後で影渡りを使い追撃を試みたタイミングで返り討ちに!1体目のモンスターを先に失ったのは二階堂さんの方です。最終第5試合、先に召喚されるエースモンスターはコン!何やら見た目がかなり変わっています!これがバトルにどういった影響を与えるのか」
「はっや!瞬間移動?一瞬で斬り裂いてイーブンに持ち直したわね。しかもゴーストタウンを上書きする形でフィールドを展開してるし、桜まで花開いてるし、演出も完璧ね!」
「確かに!神社を舞台に夜の帳が下り、桜が満開。その上、光り輝く竜が登場。演出としては完璧」
「そうそう。あの金色の炎も綺麗よね」
「はい。って!今なんかサラッとありえないことが起きました!なんとドラゴンフォースが打ち消された!私が知る限り、そんなことを可能にするスキルはありません!」
「できそうなスキルには幾つか心当たりあるけど、実際に打ち消されるところは初めて見るわ。今、気づいたけど、コンの全ステータスが2倍に上昇してるわね。夜桜に見入ってる場合じゃなかったわ」
「恐るべき稲荷流狐剣術!シャイニングディトネーションすらも容易く打ち破りました!ファムのHPを1割ほど削りましたが、これはすぐに回復されてしまう!」
「一瞬、もの凄い数の影分身を出したと思ったらすぐに消えたわね。ヘブンズゲートの効果かしら?それに今の反応は玖の型、流星火に狙いを付けてたわね。随分と思いっ切りがいいこと」
「どうやら影分身を始め、一部のスキルは封印されてしまった様子!それにステータスも通常状態まで戻っています!ステータスのアドバンテージが消えた今、コンには厳しい展開か!?」
「あ、でも、陽炎と蜃気楼で粘ろうと…。すぐに消されたわね。完全に流れを持っていかれたわ。この状況を覆すには必ずチャンスが来ると信じて我慢することが重要。もちろん、ルーカスくんはそれをさせまいと奮闘する訳だけど」
「ここで最速の攻撃!ノータイムで真下から光の柱が立ち上る!!たった一撃でHPも4割近く削れています!徐々に追い詰められていくコン!この状況を早々に打開できるのか!?」
「!随分と度胸あるわね。私ならできないな、一度かもられた攻撃をすぐに使うなんて。しかも、わざと
「それもすぐさま回復魔法で全回復されてしまいますが、なんと!コンのHPも9割近くまで回復しています!!これは状況的に推察すると弐の型 忌火の効果か!?」
「んー、その可能性もあるけど、その考えは時期尚早ね。郁斗くんはスキル名を口にしないこともあるし。現にこのバトルでもネメアがランドマインを指示なく使ったりとか。ネメアとコンは郁斗くんの指示の内容からそこに隠された意味を即座に察して独断でスキルを使うことがあるって既にわかってることだからね。使ってもすぐには効果を発揮しないスキルも一応存在するし、これは考えさせられるな」
「つまり、弐の型 忌火はまだその本来の効果を発揮していない可能性もあると!!確かに私個人的には忌火という名前から回復は連想できないので、納得です!!」
「どうやらルーカスくんが先に仕掛けるみたいね。ここで聖竜の心眼か。溜めの大きいスキルの隙を上手くカバーしてる。これは動けるようになっても回避は間に合わない。さあて、郁斗くんはどうするかな?」
「まだ動きません!まだ動かない!!!硬直が解けていないのか、それとも勝利を諦めたのか。動かない!!え?虚空を斬った?」
「斬ったわね。何も無いところを」
「……」
「……」
「な、な、な、なんと!!決着です!!!コン、ファム両モンスターともにDOWN!!問題はどちらのHPが先に0になったのか!!勝者は――――」
「一向に表示されません。これはもしかして、」
「完全同時DOWNね。つまりは判定戦にもつれこんだわ」
「なんと!なんと!2勝2敗で迎えた最終第5試合は異例中の異例、判定戦にもつれこみました!!!!」
判定戦?聞いたことない。
何それ?
結局のところ引き分けってことなの?どういうこと?
え?じゃあ勝ち負け着かず!?
誰か、判定戦について教えてくれ
「ええ、判定戦についてご存知ない方が一定数いるような感じなので、結果は出るまでの時間を使って私、ステラが説明させていただきます。まず、判定戦は完全同時DOWN、つまり引き分けでバトルが終了した時にのみ行われます。完全同時DOWNはシステム上でコンマ数秒のズレもなくHPが同時に0になることを指します。そして判定戦は専用AIがバトルの流れを細かく判定します。最終的にその判定結果を基に勝者が決まります」
「イメージはあれね。テストの採点。AIがバトルを採点して、その点数が高い方が勝ちと思えばいいわ」
「あとは結果が出るのを待つだけですが、個人的に新垣さんに質問が。バトルを振り返って、ファムが序盤に聖竜の心眼、ヘブンズクラッシュを使っていれば、あっさりと勝負が決まったのではと思うのですが、ここのところ詳しい解説をいただけますか?」
「聖竜の心眼はそんなに強力なスキルじゃないのよ。あ、いや、まあ強力かな。使い勝手がよくないの間違いか。聖竜の心眼は無条件に相手モンスターを硬直させるスキルじゃない。相手モンスターに与えた総ダメージ量に応じて効果時間が変動するの。今回の場合、ファムがコンにある程度のダメージを与えたのはわりと終盤の方。私は使うならここしかないってタイミングで使ったとは思うわ」
「あ、出ました!判定結果は――――」
判定結果、勝者 二階堂郁斗
鬼姫VSリベリオン ギルドバトル
3勝2敗で鬼姫の勝利
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