第149話 第5試合、鬼姫の出場者は誰だ!?
鬼姫控え室にて
「悪い、勝てなかった」
「気にしないでください!薫先輩のバトル凄かったです!」
「そうですよ!まだ2勝2敗。負けた訳じゃないし」
「莉菜の言う通りです!まだ第5試合があります!」
「そうそう。1人で背負い込まない。薫くんの悪い癖」
俺、莉菜、オリヴィア、琴音先輩と薫先輩に思いも思いの言葉を伝えると少し表情が明るくなった。
でも、肝心な問題が未だに解決していない。
薫先輩も控え室全体を見回してそれに気づく。
「二階堂はまだ来てないのか?」
「第4試合の途中でもうすぐ着くとメッセージが俺のとこに届いたんですけど、まだ」
「一応、さっきから電話しようと思ってかけてるんですけど、繋がらなくて間に合うのかどうか何も」
「郁斗は必ず来ると思いたいです…」
「このままだと第5試合は不戦敗の可能性すらあるね。リベリオンと交渉して鬼灯くん、莉菜ちゃん、オリヴィアちゃんの誰かが代理出場できるようにしてもらう?」
「交渉に成功しても勝てないでしょ。3人ともそれなりに疲れてる。万全の状態ならまだしも今の状態じゃ…」
控え室全体に重い空気が漂う。
薫先輩の言うことは尤もだ。
第1試合に出場して比較的長い時間休めてるオリヴィアでさえ万全の状態とは言えない。
その状態でここまで戦ってきた相手(ロザリアを除く)よりも強いであろうサブマスターのルーカスさんを相手にしないといけない。
かなり厳しいバトルになるだろうな。
こっちは手の内が既に知られてる訳だし。
「もし、郁斗が間に合わないなら私がいく。蓮とオリヴィアは長期戦で疲れが溜まってるだろうし、比較的短期戦だったからこの中じゃ一番マシの筈」
莉菜だって疲れは残ってるでしょ?
それに薫先輩のバトルが一番早く終わった。
まだバトルの余韻が残ってて一番しんどい時じゃ。
本当なら俺がいかなきゃいけないのに。
まだブルーの手の内は割れてない。
3人の中じゃ俺が一番勝算がある筈なのに。
今すぐにもう1戦は無理だ。
完全にユリアさんとのバトルで出し切った。
「まあ、とりあえずはリベリオンに交渉しないとね。話はそれから」
「それちょっと待った!琴音先輩。第5試合は俺が出る!」
ずっと第1試合から待ちに待った親友の声が控え室のドアがある方から聞こえてきた。
莉菜とオリヴィアも状況を直ぐに察したみたいだ。
ちょっと嬉しすぎて涙出そうだよ。
まったくさ、遅い、遅すぎるよ。
てか、このタイミング狙ってた?
ちょっとタイミング良すぎない?
ヤバい、いろいろと言いたいことたくさんある。
でも、それは全部後だ。
「「「久しぶり、郁斗」」」
「はあ、はあ、はあ、久しぶり!悪い遅くなった!」
そこには息を切らしながら立っている郁斗の姿が。
リベリオン控え室にて
見事に勝利し、希望を繋いだギルドマスター、ロザリアを暖かい空気で出迎えていた。
歓喜のあまりハイタッチまでしている。
既にAランククラスの実力のあるロザリアですら負ける可能性が十分にある相手、それが薫だった。
勝てたのは実力というより運が味方した。
ロザリアは気づいていた。
あの勝利が如何に薄氷の上の勝利かを。
ドランバードの神技がタメを必要とすることを知っていたから神技・ビックバンノヴァをあの時迷わず使えた。
もし、知らなければ使わなかっただろう。
そしてドランバードに神技を使われ逆にノワールが倒されていた。
Cランクで神技を三つも使える天使は例外的存在で基本的にBランクのモンスターですら神技は一つしか取得しない。
切り札中の切り札。
あんなギャンブルで使っていいスキルでは無い。
そこが薫の上をいったのは間違いないが。
「次で最後。ルーカス頼んだよ」
「任せろ。ロザリアが勝って繋いだバトンだ。俺も勝つよ」
「郁斗は強いよ」
「わかってる」
「勝ってよ、ルーカス」
「お願い勝ってね」
「勝ちなさいよ、必ず」
ロザリアわウィリアム、ユリア、シャーロットがそれぞれルーカスに激を入れる。
と言ってもロザリア以外は勝つように言っただけだが。
「ここまで2勝2敗!ギルドバトルの命運は全てこれから行われる第5試合に委ねられます!鬼姫からは二階堂郁斗!そしてリベリオンからはザブマスター、ルーカス・ガルシア!最初に行われた出場メンバー紹介の際に新垣さんはルーカスさんと互角に戦える人物が鬼姫には1人いると仰っていましたが、もしや二階堂さんだったりします?」
「言うなら今しかないか。バトル終わってからだと私が取って付けたような感じになっちゃうしね。ステラの言う通りよ。郁斗くんは私が知る限り、鬼姫の4人の中で唯一ルーカスくんと渡り合えると私が判断したプレイヤーよ」
「やはりそうでしたか!私の予想が見事に的中ですが、気になるのは他の3人もかなり強いと思います。特にサブマスターの姫島さんのエースモンスター、エルナは神技を三つ取得しています。ルーカスさんのモンスターは恐らく神技は取得していないと考えられます。その点は如何でしょうか?」
「何?私を誘導しようとしてるの?まあいいけどさ。神技は確かに強いわ。それだけで戦局はひっくり返るくらいには。でも、神技が使えるから勝てる訳じゃない。実際に天使は神技を早い段階で多く取得することを考慮した上で準最強種なの。最強種とは呼ばれてない。これが意味するのは一つ。神技は無敵じゃない。ちゃんと対策を用意しておけば神技を使えないモンスターでも神技が使える天使を倒すことはできる!」
「実際に第4試合では圧倒的なステータスで神技の直撃を防ぐなんてこともありました」
「あんなの一部の例外的なモンスターしからできないわよ。そもそも神技はクールタイムがこれでもかってくらいに長い。バトル中に使えても一回、二回は無理ね。だからこそ、ここぞという時まで温存して使う場面を見極めないといけない。使うからには確実に当てる。第4試合は正にお手本のようなバトルだったわね。ちゃんと神技を直撃させてたしね。それで倒し切れなかったのはお互いに詰めが甘かったって話。あ、そこだけはお手本にしちゃダメね」
「ありがとうございます!ですが、言葉だけだと少し伝わりづらいと言いますか、何と言いますか…。こういうのは完璧なお手本があるといいのですが……」
「はあ、わかったわよ!第5試合が終わったら私がお手本を見せてあげる。ステラ相手しなさい」
「お手本は大歓迎ですが、相手は慎んで遠慮させていただきます。私では荷が重いので」
「むー、その言い訳はズルいわね。まあ、いいわ。偶然、近くに知り合いがいるし頼んどくわ」
「?新垣さんのお知り合いの方ですか?しかもこの近くにということは
「それは秘密よ。第5試合が終わった後のお楽しみってことで」
鬼姫控室にて
「てか、郁斗ちょっとタイミング良すぎ!何かいろいろと詳しいし、もしかしてこっちの様子を伺ってた?」
「は?んな訳ないだろ!めっちゃ走ってきたんだぞ。
「え?電話繋がってたの?あ、ホントだ」
「ちょ、莉菜そこはしっかりしてよ」
「さすがにこれは莉菜に問題が…」
俺とオリヴィアは言葉にして莉菜に直接伝えたが、薫先輩と琴音先輩は苦笑いを浮かべている。
何も言葉にできないって感じだ。
「その話はここで終わり!二階堂くん、すぐにバトルだけどいける?」
「はい!その覚悟ならとっくにできています」
そうこうしている内に時間になる。
郁斗がバトルステージへと向かわないといけない。
「郁斗、信じてるよ」
「任せたわよ」
「お願いしますね」
「ファイト!頑張ってね!」
「特訓の成果、しっかりと発揮しろよ」
俺、莉菜、オリヴィア、琴音先輩、薫先輩の順に郁斗に激を送る。
何も言わずに黙って首を縦に振った。
その背中を見ていると何故か安心できる。
郁斗ならきっと、そう思える。
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