第141話 迎える第3試合

 リベリオン控え室にて


「ごめん」


「気にするな。さすが鬼姫のギルドマスター、強かったよ」


「それにまだ1勝1敗!大丈夫!」


「そうそう。そんなに気にしないでよ」


 負けたことを悔やみ、謝るユリアを励まそうとルーカス、ウィリアム、シャーロット。

 そんな中、1人考え事をしている人物が。


(ラグニアが使った第8属性の攻撃。もしかして……。まさかその領域に足を踏み入れてるとは、予想外過ぎる。ここまで来るのね、鬼灯蓮)


「ロザリア、次は俺がいくけど、いいか?」


「待って、ルーカス。次はロザリアが言うように強いならたぶん二階堂が出てくる。強いなら尚更私は戦ってみたい!私にいかせて!」


 当然だが、リベリオンは郁斗が大遅刻をしていることを知らない。

 それがリベリオンの鬼姫選出予想を大きく狂わせていることも知る由もない。


「俺はいいよ。そもそも第1試合に出場するつもりでいたからさ、元々莉菜と戦うつもりでいたしな。なんの問題もない」


「うん、ルーカスがそう言うなら私もオッケー。鬼姫は薫を選出してる感じじゃないし」


「ありがとう!」




 鬼姫控え室にて


「蓮、さすがギルマスね!これで1勝1敗」


「はい!蓮のおかげでなんとかなりました!」


「まあ、これで全戦全敗なんてことにはならずに済んだな」


「ぶーぶー!薫くん、この良い感じの雰囲気に何言ってるのさ!」


 なんか思ってたよりも雰囲気明るいな。

 オリヴィアも控え室に戻って来てるし。まあ、これは琴音先輩のおかげかな。


「で、二階堂はまだか?あれから何か連絡とか来てないか?」


 郁斗からの連絡。さっきまでバトルしてたからまだ何も見てないや。

 あ、でも、郁斗からは何も連絡は来てないな。

 どうやら他のみんなの所にも連絡は来てないみたいだ。


「郁斗がいないなら次は私で決まりね!リベリオンからロザリアさんが選出されたって通知が来てないし」


 こうして消去法で鬼姫の第3試合出場者が決まる。






「鬼姫はギルドマスター自らが第2試合に出場し、見事に勝利を掴みました!第3試合の対戦カードは未だに決まっていませんが、会場はすごい熱気に包まれています!」


 エースモンスター温存で勝つとかやべぇな!

 いや、相性を考えてだろ?逆にエースモンスター出してたら負けてた可能性の方が高いだろ!

 でも、世界最強のスライムのバトルが見たかった!

 くっ!来月が待ち遠しい!

 早く、白黒モノクロ学年別個人トーナメントの日にならないかな。


「会場にお集まりの皆さん!今し方、第3試合の対戦カードが決まりました!鬼姫からはサブマスター、姫島莉菜!!!対するリベリオンからはシャーロット・グリーン!!!なんとなんと第3試合は天使対決となる予感が!!!!!」


「なりますって不用意に断言しないのは第2試合で蓮くんがエースモンスターのブルーを出さなかったから?」


「あー!それ言います?ちょっと意地が悪いですよ〜!」


「はは、ごめん、ごめんってば。それよりも個人的には莉菜さんのバトル楽しみにしてたから早く始まって欲しいものね」


「ほお、新垣さんが楽しみしていた!?ちなみにどういった理由でしょうか?」


「個人的にね、私って白黒モノクロ学園のOGでしょ?だから鬼姫には注目してるの。なーんか常夏の白黒モノクロフェスでバラバラになったとかいう話を耳にしたから4人それぞれの同行が気になって調べてもらったんだけど、」


「ん?調べてもらった、誰かに依頼したとかですか、それは?」


「ええ、それはその道のプロにね。でも、莉菜さんだけどこのダンジョンに挑戦しているのかとか一切情報が入って来なかったの。Cランクに昇格してるのは確実だけど、いつどこのDトーナメントを勝ち上がったのかも不明。だからバトルを見ればどこのダンジョンに挑戦してたとかいろいろとわかるかな〜って!」


(今、その道のプロに調べてもらったと新垣さんは言いました。その道のプロ、その言葉が指し示すのは恐らく、プロフェッサー。新垣さんが依頼したとなれば、ギルドマスター自ら動いた筈。それでも情報を掴めなかった!?そんなことありえるの?)


「なるほど〜!もしかしたらまだ誰も見つけていない未確認ダンジョンを発見し、そこに挑戦していたかもと言うことですね!これは今から第3試合が楽しみです!」


(あ、ステラそれっぽいこと言って誤魔化した。でも、偶にはステラを困らせるのも悪くないわね)



 そして両ギルドの第3試合出場者がバトルステージへと登場する。

 莉菜とシャーロットの準備が整い、遂に第3試合が始まる!


「来て、マリン!」


「頼むわよ、ルーナ!」


 バトルが始まり、フィールドには2体のモンスターが召喚される。

 人類種、人魚のマリンと槍と盾を装備している半人半竜?のような見た目で、上半身は人間の女性で下半身は竜のような姿。それに竜翼が背中にある。

 ここまで特徴的なモンスターとなると一目で種族がわかる。

 ヴィーヴル。

 人類種のモンスターと勘違いされがちだが、実際は幻想種のモンスター。

 その強さは最強種の竜と人類種を掛け合わせたもので、低ランクの時から強く、しっかりと育てれば竜と同等かそれ以上に強くなると言われている。


「マリン、覆海!」


 開幕と同時にフィールドは海に沈む。

 しかし、ルーナは翼で空を自由に飛び回ることができる。

 無理に攻撃したりせずに水面よりも遥か上空で覆海の時間切れを待てばいい。

 マリンの覆海は空を飛べる相手に致命的に弱い。

 当然だが、莉菜もそれは把握している。


「マリン、深海への誘い!」


 把握しているからこそ、対策はしっかりと用意している。

 ルーナは突如として何かに突き落とされたかのように水面へと真っ直ぐに落ちる。


「マリン、アクアトルネード!」


「ならルーナ、ドラゴンランス!」


「アクアカッター、アクアボール!」


「ドラゴンシールド!」


 ルーナを水中へと引き摺り込むことには成功したが、水中にも関わらず、マリンの攻撃を完璧に捌いている。


「ルーナ、ドラゴンブラスター!」


 槍の矛先からレーザーのような光の矢が真っ直ぐマリンへと突き進む。

 自分が攻撃する側だと思い、完全に虚をつかれたマリンは反応が遅れて既に回避は不可能。


「マリン、オーシャンスフィア!」


 すると周囲の水がマリンを覆うように球体を作り出す。

 そこにドラゴンブラスターが激突するが、その防御を突破できない。


(ルーナが飛べなくなってる。スキルで飛んでる訳じゃないから妖気解放みたいなスキルで封じられてるとかじゃない。純粋に飛行を封じられてる。飛んで時間切れまで粘る策は無理か)


「ルーナ、ドラゴンソウル、ライトニングランス!」


「マリン、人魚の唄、アクアダイブ!」


 ルーナはドラゴンソウルで自分自身に強力なバフを付与してマリンへと一直線に突き進むが、人魚の唄で付与したバフがリセットされた上にデバフまで付与されてしまう。

 マリンの弱点属性である雷属性の攻撃でもデバフが付与された状態では威力が落ち、アクアダイブに押し負ける。


(ドラゴンソウルによるバフをデバフで上書きしても尚これだけ強力なデバフを付与できるなんて。強い!去年の夏に行われた鬼姫のギルドマスター決定戦ではそこまで強くなかった筈。あれから約半年の間に一体何があったの?)



 常夏の白黒モノクロフェスで薫に指摘された実力不足。

 2日目の早朝にチームを離脱し、1人特訓の旅に出たが、どこのダンジョンに挑戦するとか何も考えていなかった。

 これからのことを考える為に今いるモンスター、マリンとエルナについて考え、一つの結論を出した。

 エルナは進化すれば、自然と強くなっていく。今は強くなる為の途上段階。

 ならば、今優先して強化しないといけないのはマリンとなる。

 そこでマリンの強化に繋がるダンジョンを考えた時、とあるダンジョンがふと頭に浮かんだ。

 そのダンジョンは世界最難関ダンジョンの一つで未だに誰も攻略できていない、正真正銘の未攻略ダンジョン。

 莉菜はいくつかのDランクダンジョンと世界最難関ダンジョンに挑戦し続けた。

 その結果、驚くほどに強くなった。

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