第140話 ステラ&輝夜の実況解説②

 第1試合の興奮そのままに第2試合、鬼灯蓮とユリア・ファン・デン・ベルクが始まろうとしている。

 そして両プレイヤーが1体目のモンスターを召喚する。


「第2試合、開幕です!鬼灯さんの1体目はラグニア、ウルフ系のモンスターでしょうか?ユリアさんの1体目はセーレ。人類種の猫獣人!新垣さんはどう思われますか?」


「そうね。蓮くんの選出が気になるわね。確か少し前に行われたDトーナメントではラグニアを一度も選出していない筈よ。この大一番のバトルでの選出。何かありそうね」


「なるほど!」


「…それにしても妙ね。セーレが自分からラグニアと距離を取ったわ。猫獣人らしくない戦い方ね」


「確かに。猫獣人なら近距離戦で鬼攻めをするタイプが多いです。……!?今のは、」


「瞬間移動スキルね。なるほどね。セーレは人類種の猫獣人じゃなくて妖怪種の猫又ね」


「しかし、鬼灯さんは瞬間移動スキルを初見で見抜きました!」


「まあ見抜いたこと自体はそこまですごくないわよ。ユリアさん、顔に出てたからね」


(今、ラグニアが使ったスキルって第8属性?いつの間に取得してのかしら?それもCランクで)


「サラッとすごいこと言いますね。この距離で顔に出てたとかよく見えますね」


「そんなのどうでもいいじゃない。それよりもセーレがなかなかにすごいことしてるわよ。付与スキルのON、OFFの切り替えとか初めて見たわね」


「おお!ここでなんとラグニアが空駆を使いました!あれグリフォンとかが取得するスキルですよね!ウルフ系のモンスターが取得するとは!?」


「うーん、私も初めて知ったわ。でもこれで完全に形勢は決まったわね。回復魔法が使えて且つ空にいるラグニアを捉える術がセーレには瞬間移動スキルしか無いけど、あの類のスキルってクールタイムが長いのよね。何かしら隠し玉が無いと厳しいわね」


「しかし、瞬間移動スキルで上手く背後を取ったかのように見えましたが、セーレは踏ん張りの効かない空中で戦うのは厳しいのか!」


「それにしてもなんかいろいろ混ざったわね。妖気解放か。これは勝敗がわからなくなったわね。私が知る限り、妖気解放は一つだけ任意のスキルのクールタイムを永続で無視できる効果がある。それに相手のスキルを任意で封じることもできる。見た限りでは空駆を封じたみたいね」


「これは、新垣さんの仰る通りセーレは瞬間移動スキルのクールタイムを無視して猛攻を仕掛ける!!このままラグニアは手も足も出ずに倒されるのか?」


「!もしかしたらと思ってたけど、まさかまさかね。ラグニアって既にヒールも取得しているのね。これ結構良い勝負になるんじゃないかな」


(たぶんユリアさんは第8属性の効果に気づいていないでしょうし。まあ、そもそもCランクで第8属性を扱えるって前例無しじゃない?私が知る限りだと蓮くんが初めてね)


「ラグニアも粘り強く戦っていますが、これはもしかして妖気解放について鬼灯さんはご存じない感じでしょうか?」


「まあ上位プレイヤーからすると知ってて当然だけど、Cランクに昇格したばかりの蓮くんじゃ知らなくてもしょうがないかな。問題はバトル中に妖気解放の効果に気づけるかどうか。セーレの戦い方が上手いわね。知識0から気づくのは厳しいかな」


長い膠着状態一進一退の攻防が続く中、ここでセーレが全スキルを総動員して回復魔法を使われる前に一気に倒すつもりか!?って、第1試合に続きなんと!再びの合技!!!」


「普通、合技って複数のモンスターのスキルを一つに合わせることなんだけど、それを1体だけで完結させるってシンプルにすごいわね」


 ・

 ・

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「ユリアさんもようやく気づいたわね。既にセーレにはデバフや状態異常が付与されていることに」


「これは、一体いつの間に!?」


「ここからデバフや状態異常を気にせず、ラグニアを相手に攻めきれるかどうかが鍵になるわね」


「――――決着です!ラグニアVSセーレはラグニアが制しました!」


「これは切り替えてエースモンスターに全てを託すしか無いわね」


「さあ、続いてユリアさんの2体目、幻想種ユニコーンのユニの登場です!」


「セーレが倒れたことで妖気解放により、封じられていた空駆が再び使えるようになったわね」


「やり返した!無傷でラグニアを倒し状況はイーブン!!まだまだバトルの行方はわかりません!いよいよ鬼灯さんのエースモンスター、ブルーが登場か?」


「へえ、そう来るか。なるほどね」


「え?なんと鬼灯さんの2体目はエースモンスターのブルーではなく、人類種のリーフィアです!」


「ブルー対策をされている前提で今回のバトルは選出していた訳ね。白黒モノクロ学園っていろんなことで目立つからブルーの情報はほぼ筒抜けと判断して、意表を突いてきたわね」


「しかし、この策が吉と出るか凶と出るか、目が離せません!」


「いきなりとんでもない隠し玉を披露したわね。まさか常薙の盾と常薙の剣って。これユニはリーフィアとの相性が最悪なんじゃない?」


「確かに!常薙の剣はナイトメアとは真逆の物理攻撃ですが、効果はナイトメアをほとんど変わりません」


「それにしてもリーフィアはどうやって魔法を斬っているのでしょうか?新垣さんはその方法などわかったりしますか?」


「んー、たぶんこれかなってのはあるけど、私じゃ再現不可能だからプロフェッサーが正式に解明してくれるのを気長に待つわ。それよりも注目はリーフィアもラグニア同様に空駆を使ったってことね」


「おお、ここでユニブラストが決まる!しかし、その後の追撃は防がれる」


「すごい攻防ね。でも、ちょっとユニは相性が悪すぎる。さて、どうするのかしら?」


「ユニワールド!?ここで新スキルですか?見た感じではフィールド展開スキルでしょうか?果たしてその効果は一体?」


「スキルの威力が大幅に上がっている。スキルの威力を上昇させるフィールド?いえ、他にも何かしら効果がありそうね。まだ隠しているのか、それとも私が気づいていないだけか」


「な、なんと!ここにきてまた新スキル!!ユニプラズマ!!!しかし、それすらもリーフィアには届きませんでした。最後はカウンターで沈む。これで鬼姫VSリベリオンの第2試合、鬼灯蓮VSユリア・ファン・デン・ベルク、勝者は鬼灯蓮に決まりました!!」


「最後、どっちが勝ってもおかしくない展開だった。相手に読まれている、対策を用意されていると判断し、エースモンスターを敢えて選出しなかった蓮くんの勝ち。これで一つわかったと思うけど、試合前の情報戦の段階でギルドバトルは既に始まっているのよ」

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