第139話 幻想空間
効果は弱くとも蓄積された状態異常によるスリップダメージにより、セーレが倒れる。
ラグニアはお世辞にもセーレとの相性は良くなかった。
そんな中、掴んだこの勝ちには大きな価値がある。
実質、相手エースモンスターに2対1で挑める。
「光り輝け、ユニ!」
遂にユリアさんのエースモンスター、ユニの登場か。
確か幻想種のユニコーン。
ユニコーンって物語によっては翼があったり、なかったりするけど、ユニは翼があるんだな。
そこまでは知らなかったな。
一応、ロザリアさんを除くリベリオンの4人のエースモンスターだけは調べてあるけど。
ただ、エースモンスター以外はさっぱり情報が掴めなかったからセーレとのバトルは予想以上に苦戦した。
「ユニ、飛んで!」
「ラグニア、空駆!」
セーレを倒したことで妖気解放の効果が完全に消え去り、ラグニアは空駆が再び使えるようになっている。
さっきのセーレとのバトルとは打って変わって、完全なる空中戦となりそう。
ただ、元々空を主戦場としているユニに対してラグニアは地上を主戦場としている。
かなり厳しいバトルになりそうだ。
「ラグニア、カオスオーガフレイム、カオスクロー、カオスブレイク!!」
「ユニ、ユニプロテクション、ライトニングアロー、ユニブレイク!!」
ユニプロテクションにより、目には見えない透明な防護膜を自身に張り巡らせ、それと雷の矢でラグニアの攻撃を全て防ぎきる。
防ぎきったところでカウンターのユニブレイクが直撃する。
ユニの額の角がラグニアを貫き、そのまま地面へと押し付ける。
第1試合ほどで無いにしろものすごい轟音と土煙が舞う中、優雅に翼を広げたユニは飛び上がる。
「ユニ、ユニブラスト!」
再び空駆のスキルで空中を駆けようとしたところを狙い撃つかのようにブレスを放つ。
ラグニアも回避を試みたが、土煙が舞い上がる地上から抜け出たばかりで反応が遅れた上に空中では地上ほどの機動力はない。
『ラグニア DOWN』
(よし!スキルはそれなりに使わされたけど、ノーダメージでラグニアを倒せたのは大きい。問題は万全の状態のブルーとの魔法の撃ち合いになったら今のユニだと厳しいかな。最初は逃げに徹して、クールタイムが明けるのを待とう)
この時、ユリアは対ブルーの戦術や作戦などを頭の中で再確認しつつ、現状に応じて柔軟に変更していた。
事前に用意していた対ブルー戦術が全て無に帰すとも知らずに。
「出でよ、
「え?ブルーじゃない?」
そう、俺はこのバトルでそもそもブルーを選出していない。
普通ならエースモンスターを選出しないのはありえないことだけど、リーフィアもラグニアもブルー負けないくらいに強い。
俺がリベリオンの情報を入手していたようにリベリオンもこっちの情報は入手している筈。
もちろん俺のエースモンスターの対ブルー戦術をしっかりと用意いると予想した。
俺たちは
それにブルーよりリーフィアの方がユニとの相性が良いから。
だからこそ、事前にブルーとも話をして今回は選出しないことに納得してもらった。
このギルドバトルに勝つ為に!
(ちょっと予想外過ぎる!リーフィアは人類種のモンスター、一番成長が読めない。出てくるとしても1体目だと思ってたからセーレで何とか倒せると思ったけど、いろんな意味で完全に宛が外れた。うう、仕方ない。切り替えよう)
「ユニ、メガサンダー、メガウインド!」
「リーフィア、常薙の盾、常薙の剣!」
上空から降り注ぐメガサンダーとメガウインドを新スキル、常薙の盾で防ぐ。
すると、ユニにデバフや状態異常が付与された。
そして、リーフィアの間合いの遥か外にいる筈なのに常薙の剣で斬られる。
常薙の盾は魔法攻撃を防いだ時に限り、相手にデバフや状態異常を付与できる。普通に魔法を防御するのにも使える。
常薙の剣はデバフや状態異常が付与されている相手をどこからでも斬ることができる必中の攻撃。
正にナイトメアの物理攻撃版とも言えるスキル。
(大丈夫。飛べない悪魔を相手にしてると思えば問題ない。短期決戦で一気に決めたいけど、リーフィアって魔法が斬れるんだよね)
「ユニ、サンダーランス、ウインドランス、ストームアロー!!」
「リーフィア、空駆、ダークスラッシュ、裂空閃!」
「うそ、リーフィアも空駆が使えるの!?」
リーフィアは魔法を斬ることができる分、遠距離から魔法を放つだけでは有効打にならない。
それをよく理解している。
ユニは魔法を放つだけ放って、持ち前の機動力で逃げ回っている。
「ユニ、ユニプロテクション、ユニブレイク!」
「リーフィア、風薙ぎ!!」
先ほどまでリーフィアから距離を取り、逃げ回っていたユニだが、いよいよ反撃に移る。
ユニプロテクションで防御を整えて、ブレイク系スキルのユニブレイクにより、風薙ぎは強制的に破壊されてクールタイムに入る。
リーフィアの防御はがら空きかと思えたが、まだ盾がある。
風薙ぎが破壊されることを前提にリーフィアはユニを迎え撃っていたが、ユリアとユニにとってここまでは想定の範囲内。
「ユニ、ユニブラスト!」
ほぼ0距離から放たれるブレスは回避不可能。
しかもブレスはちょっと特殊なスキルで物理、魔法と両方の判定を持つ。
ダメージ判定は防御力の低い方、そして両方の判定を持つ為、闇の盾や常薙の盾では防いでも相手にデバフや状態異常を付与できない。
正面からこれを防げるスキルはブルーのディバインシールドくらいだ。
ただ盾を構えただけでは防ぐのは不可能。
「ユニ、サンダーランス、ウインドランス!」
「リーフィア、騎士王の風刃閃、常薙の剣!」
騎士王の風刃閃でサンダーランスとウインドランスを斬ると流れるように常薙の剣でユニを斬る。
そんなの関係ないとすぐさま反撃に移る。
「今よユニ、メガサンダー、ライトニングアロー、メガウインド、ストームアロー!」
「リーフィア、天空斬り!」
騎士王の風刃閃がクールタイムに入った今、数撃てば一つは斬られずに当たると考えたが、それは甘かった。
天空斬りは閃撃が進化したスキルなので、そもそもの効果は連続で斬撃を飛ばすことができる。
そこに闇属性が付与されているので、リーフィアの魔法迎撃能力は遙かに向上しているし、クールタイムもかなり短い。
(ダメ、このまま戦っても勝敗は見えている。リーフィアとの相性が悪すぎる。ここまで傾いた流れを覆すには
「ユニ、ユニワールド!!」
ユニワールド?名前的にフィールド展開スキルか何かか?
ユニワールドというフィールドが瞬く間に展開される。
これを阻止するには同Lvかそれ以上のLvのフィールド展開スキルを使って相殺、もしくは上書きするしかないが、リーフィアにはフィールド展開スキルがない。
つまり、黙ってこのフィールドで戦うしかない。
そして、ユニワールド(Lv3)の効果はシンプル。
「ユニ」という名前で始まるスキルのクールタイムを
「ユニ、ユニブレイク、ユニブラスト!」
「リーフィア、ダークスラッシュ、裂空閃、風薙ぎ!」
威力が今までとは比にならないほど上がっている!?
ユニワールドの影響かな。でも、ここまで使わなかったってことを考えるとマリンの覆海みたいに時間制限付きのスキルなのかも。
ユニはユニブレイクとユニブラストでしかリーフィアに有効打を与えられず、リーフィアは常薙の剣でしかダメージを与えられずでお互いに決定打に欠けるバトルが続く。
それでも両モンスターのHPは着実に減っており、遂には2体ともに1割を下回る。
そして、このタイミングでユリアとユニは勝負に出る。
「ユニ、メガサンダー、サンダーランス、ライトニングアロー、メガウインド、ウインドランス、ストームアロー!」
「リーフィア、天空斬り!」
ここまではユリアの狙い通り。
蓮なら確実に天空斬りで相殺すると判断した。
最も厄介な天空斬りさえ使わせることに成功したら勝ったも同然。
「ユニ、ユニプラズマ!!」
今日初めて使うスキル。少なくとも蓮の頭には存在しないスキル。
ここにきて初見のスキル、蓮の対応が遅れてその隙にリーフィアを倒せる算段だった。
しかし、ユリアの思惑通りに進まなかった。
何一つおかしな点は無かった。
違和感すら無かった。それでも俺はユリアさんとユニを信じた。
あのタイミングでユニワールドという隠し玉を使う人だ。
まだ他にも一つや二つ出てきても驚かないし、それを想定して戦っている。
「リーフィア、騎士王の風刃閃、常薙の盾!!」
まずは騎士王の風刃閃で少しでも威力を殺ぐ。
ユリアさんとユニがここまで隠していたスキル、恐らくこれだけじゃ防げない。
だから魔法防御に長けた常薙の盾を発動し、前に構える。
これで防ぎきれないなら防ぐ術は無い。
そして結果はというと、
「リーフィア、常薙の剣!!」
辛うじて防ぎきったリーフィアが返しの太刀でユニのHPを削り切った。
『ユニ DOWN』
これにより、第2試合の勝者が決まった。
鬼灯蓮VSユリア・ファン・デン・ベルク、勝者は鬼灯蓮!!
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