第142話 限界を超えて
「ルーナ、サンダーボルト!」
「マリン、躱して!」
ルーナはマリンの弱点属性である雷属性で攻撃を続けるが、物理攻撃は矛先が届く前に防がれ、魔法攻撃は躱されと攻めあぐねているが、シャーロットには一切の焦りはない。
(大丈夫。覆海には制限時間がある。それを待てば問題ない)
そう、覆海には時間制限があるのは既に多くのプレイヤーが知るところ。
覆海が展開されている限り、マリンと戦っても勝率は低い。
だからこそ、時間切れまで粘る作戦を取るプレイヤーは多い。
「マリン、ルナプラズマ!」
「!、?」
ルナプラズマ、ここで初めて使うスキル。
マリンの周囲には何も変化が起きず、困惑するルーナ。
しかし、次の瞬間、突如として真上から謎の攻撃が直撃する。
直ぐに謎の攻撃の正体がマリンの使ったルナプラズマだと理解したが、理解できない部分が多々ある。
プラズマという名前から雷属性の攻撃である可能性が高いが、人類種の人魚であるマリンが相性の悪い雷属性のスキルを取得するとは思えない。
それにもし雷属性の攻撃ならルーナのHPが一気に1割ちょっとも削れたのはおかしい。
ルーナは雷属性耐性のスキルを持っていて、普通ならそこまで削れない。
つまり、ルナプラズマというスキルには何かしらシャーロットが知らない秘密が隠されている。
「マリン、アクアブレイク!」
「ルーナ、ドラゴンブレイク!」
今度は普通に水属性のスキルで攻撃。
両モンスターのブレイク系スキルは相殺されて、ルーナの武器破壊までは至らなかった。
ブレイク系スキルはノーガードで受けるとリヴィングウェポン以外の武器や防具がバトル中に限り、破壊される。
それを逃れる為には何かしらのスキルで相殺するしかない。
ルナプラズマという謎のスキルのせいでシャーロットは完全に後手に回されている。
「マリン、ルナバースト!」
「!ルーナ、ドラゴンシールド!」
今度は防御スキルで防ごうと試みたが、そもそも必ずしも真上から攻撃がくる訳じゃない。
先ほどと同様に真上からの攻撃を警戒し、盾を構えてもそれを嘲笑うようにルーナの背後から攻撃が当たる。
(360度全方位から攻撃が可能?それだと強力過ぎる。クールタイムはそれなりに長いだろうし、警戒し過ぎない方がいい?いえ、この考えは安直ね。何かしらの対抗策を考えないと)
「マリン、ルナバーナー!」
今度はルーナの真正面に極大の炎が突如として出現して吹き荒れる。
覆海のフィールドに炎が吹き荒れるという更なる謎現象。
これにはシャーロットも理解が及ばなかった。
そして早々に切り札を切る覚悟を決める。
「ルーナ、竜化!」
上半身は人間の女性(竜の翼が背中に生えている)、下半身は竜の姿がみるみる変わっていく。
その姿はまるで最強種と呼ばれる竜のように。
そう、竜化とはヴィーヴルが完全なる竜へと進化を遂げるスキル。
ただし、進化していられる時間はスキルLv×1分。
ルーナの場合、竜化のスキルLvは10なので10分この姿で戦える。
そして竜化したことで武器と防具は強制的に装備が解除される。
「ルーナ、ライトニングブレス!ライトニングピラー!」
「!!マリン、オーシャンスフィア!」
雷属性のブレスに加えてマリンの真下から雷の柱が出現する。
正面と真下からの同時攻撃。
これにはオーシャンスフィアも耐え切れず、貫かれる。
弱点属性の攻撃に被弾したことでマリンのHPは一気に6割も削れた。
オーシャンスフィアで威力を削いでもこのダメージ。
もしノーガードで直撃していたら倒されていた可能性すらある。
「ルーナ、ライトニングクロー!」
そこを畳み掛けるようにルーナの追撃がマリンに迫る。
「マリン、ルナシールド」
ルーナの鋭い鉤爪がマリンを捉える寸前に見えない透明な壁が出現し、ライトニングクローを阻む。
しかもかなり頑丈みたいで何度も攻撃をしたが、ひび一つ入らない。
その隙にマリンはルーナと距離を取り、安全圏まで退避している。
「ルーナ、ライトニングブレイク!」
「マリン、アクアボール、アクアブレイク!」
「ルーナ、ライトニングダイブ!」
「マリン、ルナプラズマ、ルナブレイク!」
ライトニングブレイクをアクアボール、アクアブレイクの二つのスキルを使い、威力と勢いを削ぎ、躱したが、そこをすかさず雷を纏ったルーナが突撃する。
しかし、マリンの元まで辿り着く前に左右から挟まれるようにルナプラズマとルナブレイクに被弾する。
するとまだ10分経っていないにも関わらず、ルーナの竜化が解除される。
シャーロットと莉菜はそれを見て驚きを隠せないでいる。
シャーロットは何が何だかわからないだろうが、実は莉菜も何が起きたのか理解できていない。
これはルナブレイクに被弾したことが全ての原因。
通常のブレイク系スキルだと竜化を解除するのは不可能だが、ルナブレイクだけ例外的にそれが可能。
今まで竜化など自身の姿形を変化させるスキルを持つモンスターと戦った経験が無かったから莉菜もこんなことが起きるとは知らなかった。
竜化は一度解除されるとそのバトルで再び使うことはできない。
つまり、このバトル中にルーナが再び竜化することはない。
この状況はシャーロットとしては予想外過ぎる。
鬼姫を、莉菜を侮っていた訳ではない。
しかし、あのスキルを使わないといけない状況に追い込まれるとは思っていなかったのも事実。
使わずにバトルに勝てればという思いが確実にシャーロットにはあった。
でも、今はそんな思い欠片もない。
使わなきゃ勝てない。
「ルーナ、オーバーフォース!」
「!?」
オーバーフォース、限界を超えてモンスターの力を引き出す(HP以外の全ステータス2倍、クールタイム半減)スキル。
それだけなら強力無比なスキルだが、大きなデメリットが存在する。
毎秒1パーセントのペースでHPが減少する。
そして一度発動したら解除は不可能。
仮にルナブレイクに被弾しても解除はされない。
今のルーナのHPは7割を少し下回るくらい。
オーバーフォースはもっても1分と少し。
ここで確実に、相討ちになってでもマリンを倒すという強い覚悟が伺える。
「ルーナ、ドラゴンランス!」
先ほどまでとは比にならない威力と速度の攻撃がマリンを襲うが、辛うじて回避に成功する。
戦局はルーナに傾いており、自由に身動きが取れない状態とは思えないほど、マリンを圧倒している。
ルーナの猛攻をマリンが防ぎ切ってルーナのHPが0になるか、それともルーナのHPが0になる前にマリンのHPを削り切り倒すか。
どちらが先かのバトルとなった。
「ルーナ、サンダーボルト、ドラゴンブラスター!」
「マリン、アクアブレイク、ルナバーナー!」
避けるのも防御スキルで防ぐのも無理と判断した莉菜は今使える最強のスキル、アクアブレイクとルナバーナーで相殺する選択をする。
本来ならルナバーナーではなく、ルナブレイクの方が良いが、まだクールタイムから明けていない。
ここはルナバーナーに賭けるしかない。
サンダーボルトはアクアブレイクと激突し、ブレイク系スキルの効果で破壊され、その直後にドラゴンブラスターとルナバーナーが激突する。
覆海によりフィールドは海に沈んでいる。
そこで今、吹き荒れる炎と光り輝く一筋の咆哮がぶつかっている。
海の中で起きているとは到底思えない光景。
この幻想的な光景にシャーロットと莉菜は思わず見蕩れてしまう。
しかし、それも束の間。
徐々にドラゴンブラスターがルナバーナーを押し返し始める。
オーバーフォースによる強化で生まれたステータスの差がここで響いている。
このままドラゴンブラスターが直撃すれば、間違いなくマリンは倒される。
「マリン、オーシャンスフィア!」
間一髪のところだが、ドラゴンブラスターがマリンを貫く寸前にオーシャンスフィアの発動が間に合う。
しかし、オーシャンスフィアだけでは到底ドラゴンブラスターを防ぐのは無理だろう。
誰もがこれで決まったと思ったが、蓋を開けて見れば、まだマリンのHPは僅かながらに残っている。
(ふー、ギリギリ間に合った!良かった、何かあった時用にルナプロテクションを温存しといて)
莉菜以外、誰も知る由もないこと。
オーシャンスフィアでマリンを覆った後直ぐにルナプロテクションを発動する二重防御には。
完全に勝ったと油断していたシャーロットとルーナは更なる追撃を仕掛ける前に時間切れを迎える。
『ルーナ DOWN』
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