第136話 ステラ&輝夜の実況解説①
バトルステージにオリヴィアとウィリアムが入場し、スタジアムの観客は大いに湧いている。
そして両プレイヤーが1体目のモンスターを召喚する。
※実況、解説の言葉はバトルステージにいるプレイヤー、バトルフィールドにいるモンスターには聞こえません。
「オリヴィアさんは機械種のモンスター、アルマ。ウィリアムさんは一般種のモンスターでしょうか?鷹の姿をしたモンスター、ヴェルを召喚しました!新垣さんは両プレイヤーの1体目のモンスターをご覧になってどう思われますか?」
「そうね、アルマの出方に注目ね。空中戦を挑むか、射撃で遠距離戦をするか。どちらを選択するかで機械種としての育成度合がわかるわね。それとヴェルってたぶん一般種じゃなくて幻想種なんじゃない?」
「なるほ、ど…。え?ヴェルって幻想種ですか?」
「元は一般種だと思うけど、進化して幻想種になったんじゃないかな。あ、早速オリヴィアさんが空中戦を挑んだわね」
「つまり、これはアルマの機械種としての育成に自信ありですね!おお、ここでミサイル!!爆煙で視界が閉ざされ、いや、そんなの関係なしにものすごい勢いで地面に激突!!」
「あの爆煙の中でよく捉えたわね。てか、すごい音したわよ?あれちょっとやり過ぎじゃない?」
「確かにあの音は…。あ、今ちょうどバトルフィールドの設定を変更したとの情報が!これでもう大丈夫かと」
「何が何だかわからない人もいるだろうし、説明するとバトル中は大きすぎる音が響かないように設定されてるの。近所迷惑とか、昔いろいろあったからね。日本じゃないけど、裁判にまで発展したこともあったわね」
「さて、バトルに戻りますと凄まじい攻防が繰り広げられた後にこのバトルで初めてアルマの攻撃がヴェルを捉えます!」
「ウィリアムくん、かなり戦いづらそうね。機械種のモンスターと戦うのはこれが初めてかな?序盤は優勢だったけど、少しずつ後手に回ってるわね」
「それに加えてアルマの攻撃力の高さにも注目です!たった二撃でヴェルのHPが半分に!これは決着も近いか」
「いえ、それはまだね。しばらくバトルは動かないわ」
ここで輝夜が宣言したようにバトルは膠着状態に陥った。
バトルが動き始めたのはアルマがデュアルエッジモードからデュアルショットモードに切り替えてから。
「両プレイヤーの実力はかなり拮抗しています!ですが、徐々にウィリアムさんに戦局は傾きつつあります!そして、ここでオリヴィアさんが動く!!スナイパーモードへの切り替え」
「ヴェルの動きを阻害したこのタイミングで切り替えることで隙の大きさを見事にカバーしてるわね」
「今、ヴェルのスキルは鷹の目、ダウンストーム、ウインドダイブ以外はクールタイムに入ってると思われます。これは、」
「これで決着ね」
「……」
「……」
「えっとこれは、何が何だか。何から突っ込めば…」
「バトルフィールドの設定ってちゃんと変更されてるの?さっきより酷い音したわよ!私ですらあんな音聞いたこと無い」
観客席でこのバトルを見ていた人全員が輝夜のこの一言に突っ込んだことだろう。
絶対にそこじゃない!と。
「ええっと、気を取り直して何があったのか振り返りましょう!結果は両者同時にDOWNとなっています。私にはものすごい勢いでレーザーキャノンを貫きアルマに特攻するヴェルという構図に見えました。新垣さんはどうですか?」
「うん、概ね間違って無いわね。私も確証は無いけど、たぶんエネルギー解放からの0距離レーザーキャノン+エネルギー大噴出による自爆と地面への激突がドンピシャのタイミングで重なったんじゃない?」
「ああ、なるほど。言われて思い返して見れば確かにそうですね!」
そして再び、なるほどじゃねえ!という観客の突っ込みが。
これを一度見ただけで把握した輝夜もすごいが、それを言われて思い返すだけでなるほどと言えてしまうステラもまた普通の人からすると別次元の感性を持っている。
堪らずスタジアムの電光掲示板にはスロー再生された映像が映し出される。
それを見てようやく、何が起きたのか自分の目で見て理解できた観客がほとんどだった。
「ウィリアムくんは勝てる算段があったんだろうけど、結果はこれ。相手の力量を見誤ったり、読みを外すと彼みたいな戦い方はちょっとキツイわね」
「ですが、まだバトルは終わっていません!両プレイヤーともに2体目のモンスターを召喚します!オリヴィアさんは幻想種のモンスター、カーラ!ウィリアムさんは人類種の重鋼戦士のタロス!ここでエース対決となります!!!」
「悪魔の祝福からのナイトメアは通したわね。ウィリアムくんなら何かしら対策を用意してると思ったけど」
「息つく間もなく、カーラの猛攻!と思いきや、なんとここでチャージカウンター!!?」
「天使ならともかく悪魔相手にそれ使うのね。面白いわね」
「ですが、チャージカウンターのリリースを警戒するとなると迂闊に遠距離から攻撃という手は取れません!カーラの攻撃を制限する良い手だと私は思います!」
「それにチャージカウンターってちょっと特殊なのよね。受けた
(ウィリアムくんはたぶん近接戦を仕掛けてくるのを待っている。狙いはわかるけど、そう簡単にいくかしら?)
「……え?何それ?すごい!」
「ここでカーラが近接戦を仕掛けましたが、華麗にタロスに受け流され手痛い反撃をもらう!」
「でも、何とか立て直してナイトメアで反撃したわね。それに装甲復活による継続回復もそろそろスリップダメージが上回るわね」
「もしやこのまま遠距離から攻撃を続ければ意外と勝つという可能性も…」
「無いわね。ウィリアムくんはまだ切り札を隠している。じゃないとこんな部の悪い勝負を挑むようなプレイヤーじゃないしね」
「「!?」」
「まさかのこのタイミングで状態反転!!ナイトメアが空振りに終わる!!」
「普通なら初手の祝福ナイトメアコンボを防ぐのに使うとこだけど、被弾前提のタロスは初手で使うメリットが無いに等しい。完全に虚をつかれたわね。それにこれでカーラにデバフや状態異常が付与された。ここまでの2回のナイトメアもチャージカウンターをリリースした際にその効果を発揮するわね」
「新垣さん、この状況をカーラが打開する術はやはり、」
「ナイトメアと双璧を成す悪魔専用スキル、深淵への誘いしか無いわね」
「深淵への誘いと言えば、ぶっ壊れスキルの一つ!!相手に与えたダメージに応じて上限無く、HPを回復でき、なんと使い手次第では永遠と戦い続けることができます!!」
(でも、深淵への誘いはウィリアムくんにとっては想定の範囲内だろうし、それは厳しいかな)
「っと!ここでカーラは深淵への誘い!それをタロスは、ん?ただその場に突っ立っているだけ?これには一体どんな狙いが!!」
「まあ狙いは何となくわかるけど、さすがにオーバーキルじゃないかしら?」
「ウィリアムさん、なんとなんと!槍の刃先がタロスに触れると同時にリリースカウンター!!!!これは、」
「深淵への誘いもまとめてリリースするのが目的ね。これぞまさにコンマ数秒のズレも許されない神業ね」
「なるほ、!?な、な、なんとここで闇宵月!!!え?これどうなるの?」
「闇宵月!?これは予想外!さて、どうなることやら」
「さあ、このバトルで一番の大爆発や轟音と共に巻き起こされた土煙が晴れたバトルフィールドには、2体のモンスターの影が薄らとですが、見えます!!!!」←今日一の轟音に対するツッコミは面倒だから止めました
「うっそ!?あれでまだ2体とも倒れてないの?」
「どうやらバトルはまだ続……」
「いえ、ここで決着ね」
「………ええと、あ、新垣さん、最後の攻防を詳しく解説していただいてもいいですか?」
「深淵への誘いを受け止めてリリースすることに成功したけど、そこに更に闇宵月による攻撃が加わり、理解不能の領域に達したわね。まず、闇宵月についてだけど、このスキルは数少ない物理でもなく、魔法でもない攻撃スキル。どちらでもないから物理防御力でも、魔法防御力でも防げない。完全な防御貫通攻撃。ただ、使う為の条件が少し厳しくて、相手モンスターの半径1メートル以内にいないと使えないスキル。オリヴィアさんが闇宵月を使ったタイミングは完璧だったし、あれだけの攻撃をお互いに耐えて、最後、たった1秒が勝敗を分けたことに驚きね」
「たった1秒が勝敗を分けたですか?それは一体…」
(ステラ、あなた絶対に気づいてる側でしょ?ホントにわからない雰囲気出してる。解説席に座っている以上、ちゃんと説明するけど)
「私の計算が間違って無ければ、スリップダメージでカーラのHPが0になると同時にナイトメアのクールタイムが明けていた筈。つまり、あと1秒持ち堪えれたらナイトメアが間に合って勝敗は逆転していた」
「つまりはこの第1試合の勝敗は最後、運によって決まったと?」
「ギリギリのバトルだったのは認めるけど、1秒の差でも勝ちは勝ち、負けは負け。運も実力の内。この差が2人の実力の差よ」
現最強のプレイヤーが言っているからこそ、誰もが無条件で納得してしまう。
たった1秒、されど1秒。その差は実力の差。
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