第130話 決定!!

 プルルル、プルルル、プルルル、プルル、ガチャ、


「どうした?」


「すみません、急に電話して。今お時間大丈夫ですか?」


「大丈夫。何か困ったことでもあったか?」


「薫先輩に一つお願いしたいことがあって」


「お願い?俺に?何だ?」


「まだ時期は未定ですが、鬼姫とリベリオンがギルドバトルをします。それに出場して欲しいんです。そしてリベリオンのギルドマスター、ロザリアさんの相手をして欲しいです!」


「………」


 琴音先輩が薫先輩はもしかしたら断るかもって言ってたけど、この感じダメかも。

 でも、琴音先輩は薫先輩なら私よりもロザリアさん相手に勝率は高いって言ってたし。

 俺は琴音先輩のその言葉と薫先輩の強さを信じる!


「なるほどな。俺のとこに電話してきたのは琴音先輩に何か言われたからとかか。あの人、本気で俺がロザリアに勝てると思ってるからな。はぁー」


 すご!何も言ってないのに全て見抜かれてる。

 さすが薫先輩!!


「一つ俺からも聞きたい。リベリオンとのギルドバトル、鬼灯は勝てると思っているのか?鬼姫は未だにメンバーがバラバラのままだろ?」


「はい!それは問題無いです。ちゃんと連絡も取って3人ともやる気みたいなので。俺は勝てると思ってます!」


「……そうか。それなら大丈夫そうだな。わかった、ギルド鬼姫に加入しよう。それでリベリオンのギルドマスター、ロザリアは俺が相手するよ」


「!!ありがとうございます!」


 こうして決まる。

 リベリオンとのギルドバトルに出場する予定の鬼姫側のメンバー5人が。


 これを知った学園長は一安心。

 その後はリベリオンにギルドバトル了承の返事を送り、バラバラの鬼姫の代わりに学園長が話を進めた。

 もちろん、途中でギルドマスターの意思決定が介入する場合はメールをその都度送って確認を取るというかなり面倒な作業を請け負った。

 そうして正式に鬼姫とリベリオンのギルドバトルの日時や対戦形式が決まり、大々的に告知される。


 鬼姫VSリベリオン ギルドバトル決定!!

 2025年2月1日 土曜日 正午開始

 白黒モノクロ学園 白黒モノクロスタジアムにて5対5の団体戦

 使用モンスターは2体まで

 参加資格、鬼姫もしくはリベリオンに在籍且つCランク以上のプレイヤー



 何故、直ぐににギルドバトルを行わないのかというと参加者にはCランクまで昇格してもらいたいからだ。

 ロザリアや薫といったBランクのプレイヤーが参加すると思いきや他はDランクではギルドバトルそのものが中途半端な形となる。

 ただでさえ、鬼姫とリベリオンは注目されているギルド。

 尚更、中途半端なギルドバトルは開催できない。

 そこで参加者にはCランクに昇格してもらうこととなった。

 Cランク同士のバトルならそれなりの注目を集める上に将来有望株の激突となれば必然。

 その為にはDランクダンジョンを3つ以上攻略するのと、Dトーナメントで3回以上の勝利が必要になる。


 その為に各自、Cランク昇格に向けて励んだ。


 俺の代わりに学園長がいろいろと動いてくれたみたいで、そのおかげで俺はダンジョン攻略に専念することができた。

 それにギルドバトルが正式に決まったことで郁斗たちとのメッセージのやり取りも増えた。

 でも、3人とも一貫して自分たちの成長については何も語ってくれない。

 ギルドバトルを楽しみにしておけって。

 まあそれは俺も同じだけどさ。




 俺はCランク昇格に向けて最初に『王家の墓』攻略に取り組んだ。

 第3エリアのエリアボス、墓守の疾風騎士戦はコピースキルを取得したラグニアが大活躍してくれた。

 電光迅雷の機動力を手に入れたことで戦いの幅が広がり、前回とは違って攻撃を当てられないとはならなかった。

 初手でラグニアが0距離まで接近したことで前回みたいな展開にはならずに済んだ。


 そして次の第4エリアの『土の墓守』では予想通りにノーブル騎士が4体出現した。

 さすがに4体を相手にするのは苦労したけど、挑発スキルが功を奏した。

 リーフィアに4体のノーブル騎士が群がるからそれをブルーとラグニアが剥がしながら攻撃するだけで2体ほど減らせた。

 数が減れば何の問題も無い。

 リーフィアのHPにだけ注意しておけばよかった。


 ここのエリアボスは墓守の大地騎士という土属性のモンスターで、武器は戦鎚。

 墓守の大地騎士は2戦目で突破できたけど、今までのエリアボスの中では一番戦いやすかった気がする。

 とにかく攻撃力が高く、ラグニアだと一撃で倒される可能性があった。

 一番防御力が高いリーフィアですら一撃でHPが半分近く持っていかれた。

 予想以上に攻撃力が高かったけど、動き自体は遅いので、遠距離からブルーとラグニアがコツコツダメージを与えることで撃破に成功。



 全てのエリアを攻略し、いよいよ俺は『王家の墓』のボスに挑戦する。

 俺はこのボスを倒すのにめっちゃ時間が掛かった。

 1週間近く毎日のように挑戦してようやく倒すことに成功し、初のDランクダンジョン攻略となった。


『王家の墓』のボスは2体いて、墓守の雷光騎士と墓守の氷黒騎士。

 雷属性と光属性を使う墓守の雷光騎士はとにかく回復が厄介。

 ダメージを与えても回復、回復でキリが無い。

 もう1体の墓守の氷黒騎士は氷属性と闇属性を使ってきて、全ての攻撃に闇属性が付与されている。

 こちらのモンスターはデバフや状態異常でどんどん弱体化させられて攻撃力や防御力は低下していく。

 墓守の雷光騎士の回復と相まって最悪のコンビだった。

 ていうか、ボスが回復魔法使うのってどんなゲームでもダメでしょ!!

 回復専門とかなら妥協できるけど、ガンガン攻撃にも参加するとかさあ、バランスを考えてよ!!!!


 正直なとこもう一度戦っても勝てる気しないよ。

 だって初手で挑発スキルによってリーフィアに向かってくるところをブルーとラグニアが墓守の氷黒騎士に集中攻撃して強引にリーフィアから引き剥がし、分断。

 ブルーとラグニアが墓守の氷黒騎士を相手に大立ち回りしている間にリーフィアが単独で墓守の雷光騎士を撃破するのが作戦だったし。

 まあ、俺の予想外にブルーとラグニアが奮闘してくれて作戦とは違って、先に墓守の氷黒騎士を倒しちゃったけど。

 ただ、その代償は大きく、ブルーとラグニアはデバフでステータスが軒並み半分以下まで低下し、状態異常によるスリップダメージもかなり酷かった。

 最終的にブルーとラグニアは自分の回復を切り捨てて、リーフィアに回復を集中し、自分たちのHPが0になる前に少しでも役に立とうと攻撃しまくり、ラグニア、ブルーの順番でHPが0になった。

 ラグニアとブルーの奮闘を無駄にすることなく、墓守の雷光騎士の回復魔法がクールタイムに入っている間に防御を完全に捨てたリーフィアが辛うじで倒すことができた。

 最後、リーフィアのHPは残り1割を下回っていたので、ほんとにギリギリの戦いだった。



『王家の墓』を攻略した後はイギリスの『大魔法図書館』、オーストラリアの『野獣の森』に挑戦して、年明けの1月中旬には何とかDランクダンジョンを3つ攻略できた。

 その後、1月下旬にオーストラリアで行われたDトーナメントに滑り込みセーフでエントリーができて出場して3回戦は突破できたけど、4回戦で負けてしまった。

 それでも一応はDトーナメントで3回勝利するという条件と満たせたからギリギリではあったけど、Cランク昇格を果たした。

 これで俺は2月1日に行われるリベリオンとのギルドバトルに出場する資格を獲得できた。

 危うく鬼姫のギルドマスターなのに出場できないとこだったよ。

 ほんと琴音先輩がオススメしてくれたダンジョン全てめっちゃ難易度高かったんだよな。


『大魔法図書館』では空を自由自在に飛翔する本型のモンスター、インテリジェンスブックとかインテリジェンススマートフォンとか、空から絨毯爆撃の如く魔法が降ってくるのは正に地獄だった。

 ボスモンスターの大魔法図書館館長は全属性の魔法が使えて攻撃の密度がエグくて近づけないしで、リーフィアが魔法斬りをできなかったらヤバかったよ。

 この時だけはラグニアのコピースキルは闇属性付与に切り替えて、リーフィアに魔法斬りを伝授してもらったからな。

 ブルーは最初の方は張り切って魔法の撃ち合いをやってたけど、すぐに物量に押されてリーフィアの後ろに撤退したからな。


 そして最後に挑戦した『野獣の森』はとにかく動きが読めなかった。

 野生の勘とも言える何かでこちらの攻撃を躱しつつ、攻撃を当ててくるからある意味、ここも厄介だった。

 ここのボスモンスターは金獅子で、ただの咆哮に攻撃判定があった。

 動きもとにかく早く、土属性の魔法攻撃も相まって戦いづらかった。

 それでもラグニアが対抗心を燃やして奮闘してくれたし、闇属性付与をコピーしたままだったからデバフや状態異常でどんどん弱っていき、何とか勝てた。


 挑戦したDランクダンジョンの中では一番マシだったと思う。

『王家の墓』や『大魔法図書館』のボスは理不尽の塊みたいなモンスターだったしな。

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