第129話 学園長からメール?

 あれからホテルに戻って俺はラグニアにコピーのスキルの書を使った。

 リーフィアとラグニアどちらに使うか悩んだけど、リーフィアは自分から遠慮した。

 自分の戦い方とは相性が悪いと判断したみたいだ。

 ラグニアはその真逆でウェルカムみたいな感じだった。


 コピーの取得を終えたら次はブルーの追求タイムだ。

 俺の腕の中でいつも通りにプルプルしてるけど、君さあモンスターの卵はどうしたの?


「ブルー、もしかしてモンスターの卵を放ったらかしにしてないよね?」


 プル、プルプルプル、プルプル、プルン


 慌てた様子で俺の腕から飛び退くとモンスターの卵を取りに行った。

 すぐにモンスターの卵を乗せたブルーが戻って来た。

 うん、やっぱり放置してたな。


 プル、プルプル


 慎重にモンスターの卵を床に置くと一緒に持って来たであろう毛布で温め始める。

 まあ、今回はまだ買ったばかりだしこれ以上とやかく言うのはやめておこう。


「リーフィアとラグニアもモンスターの卵に関しては気にかけてあげてくれるとありがたいな」


「もちろんです」


 グルグルグル


「ありがとう。それで次はブルー、漆黒のマントだけど、何でラグニアが持ってるの?」


 プルプルプル、プルプルプルプル


 グルグル、グルグルグル


「ああ、なるほど、わかりました。主は少し誤解をしているようです。ブルーのあれはラグニアに頼まれて買った物です」


「その割には買った時、装備してプルと決めポーズを取っていたような気がするけど、リーフィアがそう言うならいいや。一応聞いておくけど、モンスターの卵はブルーの買い物だよね?」


「はい。もちろんブルーのお買い物です」



 その後はブルーがしっかりとモンスターの卵の面倒を見ていた。

 いつもは俺の腕の中とかでプルプルする筈の甘えん坊が。

 これを機にブルーも成長して甘えん坊を卒業できたらな〜とか思ったけど、たぶん無理だろうな。

 何かそんな気がしてならない。




 そしてこの時の俺はすっかりと忘れていた。

 LMBマーケットで会ったハンス・シュミットという男性について調べるのを忘れていた。

 それに気づいたのは1週間くらいしてからだった。

 思い出して再び忘れない内にと調べてみるとやはりLMBプレイヤー(有名人)にはヒットしなかった。

 でも、気になったことが一つある。

 ハンス・シュミットという名前と名字はドイツではそれなりにありふれているみたいだ。

 日本なら田中や山田といった名字に太郎という名前と同じ感覚だ。

 つまり、山田太郎と名乗られたと言っても過言では無いし、そもそも名乗った時少しだけ考える素振りを見せていた気がした。

 俺はあの男に偽名を名乗られた可能性がある。

 少なくとも俺はそう判断した。

 このままこの件を放置しておくのは気持ち悪いからシグマさんに相談したら、個人的に調べてくれるとのこと。

 俺はシグマさんからの調査結果を待つこととした。



 LMBマーケットでの買い物を終えた次の日、俺はラグニアのコピーしたスキルの試運転も兼ねて『王家の墓』第3エリアの『風の墓守』で戦っている。


「ラグニア、電光迅雷!」


 そう、ラグニアにはブルーの電光迅雷をコピーしてもらった。

 電光迅雷をコピーしたのは攻撃面の大幅強化が目的。

 前回、墓守の疾風騎士を相手に攻撃を当てることすらできなかった。

 そこで考えた。電光迅雷の高速移動がラグニアもブルーみたいに使えれば、戦いの幅が広がると。

 実際、ブルーは苦もなく使ってるけど、かなり扱いづらいスキルみたいでラグニアも苦労している。

 それを見たブルーがプルプルとアドバイス?をしている。

 ブルーのお陰?もあって少しずつラグニアも電光迅雷を使えるようになってきている。

 これを完全に扱えるようにさえなれば、次は墓守の疾風騎士への再挑戦と意気込んでホテルに戻ると白黒モノクロ学園からメールが届いた。


 

 何だろうな。休学の中止とか?

 マジでそれ以外にメールが届く理由がわからない。

 件名は「〖重要〗必ず返信すること!」ってなってる。

 えっと、内容は


 休学中に急な連絡で申し訳ない。

 白黒モノクロ学園の学園長だ。


 実は白黒モノクロ学園にリベリオンから鬼姫にギルドバトルがしたいと申し出があった。

 もちろんギルドバトルの返事は保留にしてある。

 このギルドバトルを受けるかそれとも断るかは鬼灯くんに一任するが、一つだけ留意しておいてほしい。


 もし、ギルドバトルを受けるなら対戦形式は両ギルドの規模からして5対5の団体戦となる。

 しかし、鬼姫はメンバーが4人しかいない。

 受けるなら最低でもあと1人、それもできれば実力が確かなBランクのプレイヤーであることが望ましい。

 必要なら学園長として手を貸そう。



 ギルドバトル、しかも鬼姫に申し込んできたギルドがある。

 素直に嬉しいんだけど、今は状況的に喜べないな。

 郁斗たちは参加できる状況なのかな?

 それに学園長が言うようにギルドバトルを受けるならあと1人メンバーが必要になる。

 でも、何でBランク何だろう?しかも実力云々って。

 とりあえず、郁斗たちにメッセージだけ送っておこう。

 学園長への返事ってどれくらいなら待ってもらえるかな。

 とりあえず、1週間以内に郁斗たちから何の返事も来なければ、断るか。



 すると数時間後には郁斗、莉菜、オリヴィアの3人からメッセージが返ってきた。

 3人ともどうやらやる気みたいだ。


 学園長にもオッケーのメールを送りたいけど、その前にもう1人のメンバーについて考えておかないと。

 うーん、Bランクか。琴音先輩と薫先輩かな、パッと思い浮かぶのは。

 よし、この間連絡したばっかだし、もう一回琴音先輩に連絡してみよう。

 何で学園長がBランクとか実力云々って言ってるのかわからないし、それについての見解も聞きたいし。



 プルルル、プルルル、ガチャ、


「もしもし〜久しぶりだね!元気してる?LMBマーケットはどうだった?何か収穫はあったかな?」


 すごい質問攻め!!

 とりあえず一つずつ答えていくか。


 琴音先輩からの質問攻めも終わってようやく本題に入れそうだ。


「えっとですね、琴音先輩に一つ聞きたいことがあって…」


「??」


 学園長から送られてきたメールなどあらましを伝えると


「なるほどね。偶には良いこと言うね学園長も。たぶんというか、ほぼ絶対にロザリアの相手が務まるプレイヤーをメンバーに入れておきなさいって意味だと思うよ〜」


「ロザリアさんって…あ、そっか、リベリオンのギルドマスター!」


「そうそう!ギルドマスターがギルドバトルに出場しないこと自体は問題無いけど、それで負けたら外聞が悪くなるしね。でも、今の戦力差だとロザリアは出れないと思うの。もしこれで負けたら、ね?だからロザリアもちゃんと出場できるように学園長は鬼灯くんに手を回したんだと思うよ。両ギルドともに全力でぶつかれるように。勝っても負けても後々の外聞が悪くならないように」


 そっか。今のままもしもロザリアさんが出場したら格下を一方的に的なことになるか!

 うーん、でもあのロザリアさんを相手にできるプレイヤーか。

 なるほど、だから実力云々って学園長は言ってるのか。


「それにしてもロザリアの相手か〜。うん、鬼灯くん、私に1人だけロザリアにも勝てる可能性を十分に秘めたBランクのプレイヤーに心当たりあるよ!もし、ダメだったら私が代わりに出場するし、メンバー問題はこれで解決かな?」


「え?琴音先輩が出場してくれるんですか!?」


「ダメだった時の代役だよ〜。私はギルドに所属してないフリーのプレイヤーだし。ただ、ロザリアに勝てるかって言われると微妙だけどね」


「いや、そんなこと無いですよ!めちゃくちゃありがたいです!!でも、琴音先輩の心当たりってどなたですか?」


「鬼灯くんもよく知ってる、白黒モノクロ学園最強の男だよ!」


 白黒モノクロ学園最強の男、それって……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る