第126話 LMBマーケットへ行ってみたら?

『王家の墓』第2エリアの『水の墓守』を攻略した俺は第3エリアの『風の墓守』に挑戦している。

 ここは第2エリアの『水の墓守』とは違って、モンスターは風属性の攻撃をしてくる。

 それにブルーやラグニアの火属性攻撃の効きも悪くないので、幾分か戦いやすい。


 それでも案の定、奥に進んだ所でノーブル騎士と遭遇をした。

 しかもその数、3体。

 これでほぼ確定した。

 恐らく、先に進むにつれてノーブル騎士の数は増える。

 しかも使う属性がエリア毎に違うから戦い方が全然違う。

『風の墓守』で遭遇したノーブルは1体、弓持ちがいる。

 そのせいで戦いづらいことこの上ない。

 遠距離から攻撃してくる相手がいるだけでここまで戦いづらいなるとは。

 複数体出現しても今まではどっちか片方、近接と遠距離がはっきり分かれていた。


 何回も戦い、少しずつどう戦えばいいのかわかった。

 両方を同時に相手すると苦戦するなら分断して各個撃破すればいい。

 今回はブルーが弓持ちのノーブル騎士を担当して残る2体はリーフィアとラグニアにお願いした。

 少し時間は掛かったけど、何とかノーブル騎士を突破して俺は『風の墓守』のエリアボスがいるボス部屋まで辿り着けた。


 ここ『風の墓守』のエリアボスは墓守の疾風騎士か。

 パッと見だと弓を装備してるように見える。

 他に武器を装備してる感じはしないし、琴音先輩のシルヴィーユみたいに弓と魔法を使う遠距離特価タイプかな。

 こういう相手には距離を詰めて近接戦で常に優位を取りつつ戦うのが一番なんだけど、そもそも距離を詰めることが難しいだろうな。


「我が王の墓を荒らす者、排除する」


 あ、やっぱりその台詞は必須なのかな?


 すると、途端に弓を構える墓守の疾風騎士。

 ブルーたちも既に動き出している。

 リーフィアとラグニアは距離を詰めて近接戦を仕掛ける動き。

 ブルーはその2体を援護すべく、遠距離から魔法を放っている。

 リーフィアとラグニアが接近を試み、ブルーが魔法を放つのを確認した墓守の疾風騎士は弓を収めて、魔法で迎撃を始める。


 恐らく、ウインドトルネードと思われる魔法で自身の前方に大きな竜巻を発生させる。

 これにより、ブルーの放った魔法は容易く打ち消され、リーフィアとラグニアも接近を阻まれる。

 もちろんこれは魔法だからリーフィアなら斬れるけど、まだ戦いは始まったばかり。

 魔法斬りはいきなりこの序盤でしなくちゃいけないことではないから今は墓守の疾風騎士のこの後の出方を伺っている感じだ。


 竜巻が轟々と暴れているところを一筋の光が貫く。

 それは一直線にブルー目掛けて突き進んでいる。

 あまりにも速く、意表を突かれた攻撃だったこともあり、ディバインシールドを使う間もなく、直撃する。

 その威力の高さを物語るかのようにブルーが後方にプルプル、プルンと後方に弾き飛ばされる。


「ブルー!!!!」


 ……プル、プル、プル


 あ、プルってした。派手に弾き飛ばされたけど、大丈夫そうだ。


 それにしてもあの竜巻、全然収まる気配が無いな。

 もしかして攻撃じゃなくて防御が目的?

 それなら今の一撃も説明がつく。

 リーフィアも俺と同じ考えに至ったのか、ダークスラッシュで竜巻を斬ろうとした。

 しかし、その瞬間、上空から無数の矢の雨が降り注ぐ。

 墓守の水流騎士戦でも似たような攻撃があったが、今度は魔法ではなく、物理攻撃。

 しかもラグニアはこれを防ぐ術が無い。

 リーフィアも竜巻を斬る云々以前の問題となってしまった。

 盾を上に構えて降り注ぐ矢を防ぐので精一杯。

 ラグニアは降り注ぐ矢をまともに受けており、徐々にHPが削られている。

 このままじゃダメだ。何とかしないと。


「ブルー、フレイムフォースで相殺して!」


 矢の雨が降り注ぐ中、プルンと可愛くジャンプし、フレイムフォースを放つ。

 おかげで矢の雨は止んで、ラグニアも何とか持ち堪えることができた。

 リーフィアは矢の雨が止むのとほぼ同時にダークスラッシュで今度こそ竜巻を斬る。

 そして、ラグニアはブルーのプチヒールでHPを回復する。

 竜巻が消えると同時にリーフィアとラグニアは一気に距離を詰めようとするが、再び風に行く手を阻まれる。


 今度は風の障壁が現れる。

 しかもこれは魔法じゃなく、防御スキルだから闇属性が付与されているリーフィアの攻撃でも斬れない。

 純粋な攻撃力で突破するしか無いが、リーフィアの一撃にビクともしない耐久力。

 そう簡単には突破できない。

 もちろん、突破を試みてはいるが、風の障壁の向こう側にいる墓守の疾風騎士から怒涛の攻撃でこちらも守りに徹さざるを得ない状況。

 リーフィアは盾を前に構えて、飛んでくる攻撃を正面から受け切っている。

 ラグニアは完全にリーフィアの後ろに隠れて攻撃を免れている状況。

 残るブルーは自分に向かってくる攻撃をどうにか躱したり、相殺したりで反撃に移る余力など一切残されていない。



 やむなく、俺は撤退を決意した。

 最奥のボスモンスターやエリアボス戦ではプレイヤーがボス部屋の外に出ると強制的に終了となる。

 だからこのまま戦っても厳しいと思うなら全滅まで待たずに撤退することが容易にできる。


 突如としてボス部屋の外に転移したブルーたちは一瞬何が何だかといった感じだったが、すぐに状況を把握した。

 それでも誰も何も文句を言ってこないのは内心では理解していたからだろう。

 このまま戦っても勝てないと。

 序盤で様子見に徹したことが逆効果となり、後手に回ってしまう結果となった。


 その後はホテルに帰って反省会をしたけど、大したことは話せてない。

 ほとんど一方的だった。こちらの攻撃は一つも当たってない。ダメージを与えられなかった。

 たったあれだけの攻防からじゃ、次は速攻を仕掛けようとしか話せないよな。

 それに次、もしも今回と同じような展開になったらという話もしたけど、これといった対策は何も出てこなかった。


 そこで俺は琴音先輩に相談というか、ちょっと話を聞くことにした。

 琴音先輩のエースモンスターはシルヴィーユ、今回戦った墓守の疾風騎士と同じように弓と魔法を使って戦う。

 何か良いアドバイスがもらえないかな?と思った。


 早速、メッセージを送ったら即返信が来た。

 あまりにも早すぎてちょっとびっくりしたけど、これはありがたい。

 琴音先輩からのメッセージは至ってシンプル。


「距離を取って戦うから防戦一方になるんだよ。そういう相手には接近戦あるのみ!でも、プレイヤー相手だとそこもしっかり対策してるだろうから注意は必要だよ〜」


 俺でも思い浮かぶような事しか書かれてなかった。

 でも、考え方を変えると近接戦に持ち込めないと話にならないってことじゃないかな。

 せっかくメッセージを返してくれたのに返信するのを忘れていろいろ考えていたら再び琴音先輩からメッセージが送られてくる。


 そこには


「『王家の墓』に挑戦中ってことは今、フランスだよね?ならさ、LMBマーケットに行ってみたら?勉強になるんじゃないかな」


 LMBマーケット?何だろう、それ。

 俺は琴音先輩にお礼のメッセージを送ってLMBマーケットについて調べた。


 LMBマーケットは不定期にプレイヤーが主催する市場で、ゲーム運営が関わっているとかじゃないから商品はプレイヤーが用意して売る。

 主にショップでは売っていないようなアイテムが出回り、何でもショップで売るよりプレイヤーに売った方が実入りが良いとか。

 参加は自由で参加者は何かアイテムを売らないといけないとか、逆に買わないといけないとか、そういう縛りは無く、自由。

 LMBマーケットもショップと同じでポイントを使ってアイテムを購入するのか。


 普通なら揉め事とか起きそうだけど、揉め事を起こすと世界中にその名が轟き、ゲームがしづらくなるみたい。

 実際、過去にバカをした人がいたらしい。

 詳しくはわからなかったけど。


 琴音先輩の勧めだからと俺自身が気になったからもあって、LMBマーケットに行くことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る