第125話 墓守の水流騎士②
持っていた双剣を鞘に収めた。
墓守の火炎騎士みたいに素手で戦うって感じがしないんだよな。
どうくる?
様子を伺っていると墓守の水流騎士の周りに三つの水の球みたいなものが浮かび始める。
すると浮かび上がった水の球からレーザーのように水がリーフィア、ラグニア、ブルーとそれぞれに目掛けて発射される。
ある程度、距離を取っていた為、3体とも回避には成功するが、攻撃が止まらない。
つまり、このスキルは一度放つとクールタイムに入る訳では無いのか。
リーフィアに先陣を切ってもらうこともできるけど、他にも使える魔法があるかもしれない。
とりあえず水レーザーを躱せてる今はまだ攻めなくてもいい。
しばらく様子見に徹してわかったことがある。
あの水レーザーは何かしらの攻撃スキルで相殺するとかしないと永遠と続くかもしれない。
防御スキルだけは試せてないからわからない。
実際、試しにとブルーに相殺してもらったら一つ水レーザーが減った。
それに追加で何かしら別の攻撃が来る訳でもなかったので、ラグニアにも自分に向かってくる水レーザーを相殺してもらった。
それもあって水レーザーはリーフィアしか攻撃できていないけど、当たってないからこちらがかなり有利な状況だと思う。
ここからは反撃に移ろう!
ブルーとラグニアには水レーザーによる攻撃がもう飛んできていない。
挑発スキルでリーフィアしか狙えない状況に陥っている。
それにここまで時間を掛けたからブルーたちのスキルのクールタイムが全て明けている。
「ブルー、スカーレットアロー、ファイアボール!ラグニア、オーガフレイム!」
墓守の水流騎士への接近を試みつつ、攻撃をする。
こちはが攻撃すれば、きっと何かしらの防御スキルで防ぐか攻撃スキルで相殺するかをする筈。
どっちを選択されても問題ない。
墓守の水流騎士はどちらか一つではなく、両方を選択した。
まるで津波が押し寄せてくるかのような。
ブルーとラグニアの攻撃を飲み込んでも尚、迫り来る津波。
墓守の水流騎士の姿は津波で隠れて見えないが、恐らく、さっきまでと居場所は変わらないだろう。
これって魔法だよな。
ブルーのディバインシールドだといリーフィアとラグニアがブルーと離れた位置にいるからブルーしか守れない。
なら、リーフィアに斬ってもらうしかないか。
ちょうどこれのおかげでリーフィアに向かっていた水レーザーが消えてるし。
とか思ってたらリーフィアじゃなくてブルーが津波を相殺すべく動く。
フレイムフォースと津波が激突。
しかし、徐々に押され始める。
このままでは津波にフレイムフォースが呑まれ始めるとラグニアがオーガフレイムを重ね合わせる。
オーガフレイムによって威力が底上げされたフレイムフォースと津波は拮抗したが、最後は相殺される。
ボス部屋全体にものすごい水蒸気が発生して数メートル先すら見えないくらいに視界不良に陥った。
この時、この視界じゃ攻撃はできない。視界が明けるのを待つしかないと思うと同時に本当にそれでいいのかと考えてしまった。
本当に待つだけでいいのか?そもそもこの状況じゃ何もできない。攻撃したくても相手の正確な位置がわからないと――-いや、違う。攻撃できるかもしれない。墓守の水流騎士は。
だとするとどういう攻撃が飛んでくる?どう防ぐ?
水属性に特化している相手、今みたいに津波?いや、さすがにまだクールタイムが明けてないだろ。
完全に初見の未知のスキルと考えるのが妥当。
でも、正面からの攻撃なら何となく影が見えるんじゃ。今の津波も影がしっかりと見えてた…。
!?影が見えない?さっきまでちゃんと影が見えてたのに。
それに何か暗くないかな?俺の気のせいか?
――-わかった!
「ブルー、真上にディバインシールド!リーフィアは盾を上に向けて構えて!ラグニアはリーフィアの盾に隠れて」
影が見えない、そして全体攻撃。
これから導き出される答えは一つ。
暗く感じて影が見えないのはこのボス部屋が雨雲に覆われているから。
きっと来る。強力な水属性の全体攻撃が雨のように降り注ぐ。
ブルーたちに防御の指示を出した直後だった。
俺の考えを裏付けるように激しい雨を連想させる水の槍が降り注ぐ。
ラグニアはこの視界でも持ち前の嗅覚できっとリーフィアのところまで辿り着いている。
今の俺がブルーたちを信じること。それだけ。
それにしても盾のリヴィングウェポンを進化させて正解だったな。
カイトシールドみたいに大きな盾じゃないとラグニアをカバーするのは無理だからな。
ブルーとはそれなりに距離が離れているディバインシールドで防げる範囲内まで移動するのは間に合わなかっただろうし。
何か不思議な感じだな。
水の槍の雨が激しく降っているのに俺は一切濡れない。
ARだからこそ何だろうけど、違和感が半端ないな。
あ、でも一番可笑しいは目の前で降り注いでいる槍の雨か。
視界が晴れて、激しい槍の雨も止んだ。
守りに徹するのはここまで!ここからは反撃だ!
「ブルー、プチサンダー、鳴神!リーフィア、閃撃、ダークスラッシュ!ラグニア、シャインダイブ、ライトクロー!」
リーフィアとラグニアが接近すると墓守の水流騎士は再び、双剣を抜いた。
ここは臨機応変に対応って感じかな?
それとも使える魔法スキルは全部クールタイムに入ってるとかかな?
今はあまり魔法を警戒する必要は無いと考えよう。
実際にリーフィアとラグニアを相手に双剣だけで立ち回っている。
これがもし2対1だったら墓守の水流騎士の双剣を巧みに使った防御を突破するのに苦労しただろうけど、こっちには
もはや移動することなく、同じ場所から攻撃をすることで絶えず墓守の水流騎士に存在を印象づけている。
決して自分を無視してリーフィアとラグニアと戦っていることに膨れたとかじゃない筈だ。
絶妙なペース配分で常に何かしらの魔法が放てる状況を作っている。
あと、ホントにめっちゃ僅かだけど、ブルーちょっとずつ近づいてない?
自分の目を疑うレベル、気づいても誤差の範囲と片付けるレベルで確実に距離を詰めている。
これリーフィアとラグニアは気づいてるのかな?
ブルーもきっと近接戦に混ざりたいんだろうけど、リーフィアとラグニアの集中を乱さないように、それでいてプル、プルと確実に一歩、また一歩と接近に成功している。
でも、これいつかは気づかれるよな。そこら辺、ブルーはどうするんだろうな。
気づいたら墓守の水流騎士のHPが1割を下回った。
ブルーも時間を掛けて
リーフィアとラグニアもあと少しのところまで来ているからより攻撃的になっている。
その為、墓守の水流騎士の攻撃が当たりダメージを受ける機会が増えている。
意図してなのか、それとも偶然なのか、ラグニアがちょうど墓守の水流騎士とブルーの間に立つ。
ラグニアの体が死角となり、完全にブルーの射線が通らないけど、墓守の水流騎士にもブルーが見えていない。
ブルーも今がチャンスとばかりに電光迅雷を使って、一気に距離を詰めるどころかラグニアの背中に衝突する勢いで突っ込むが、結果的にブルーはラグニアの背中ではなく、墓守の水流騎士に正面から突っ込むこととなる。
これ以上は考えられないタイミングでラグニアがジャンプし、ブルーに道を空けた。
予想外すぎる攻撃に墓守の水流騎士は防御できず、後方に吹き飛ぶ。
そしてその先で待ってました!と言わんばかりにリーフィアが騎士王の風刃閃を発動させていた。
そのままリーフィアが墓守の水流騎士のHPを削りきって、俺たちは勝った。
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